消費増税が始まって10日がたった。表面上はトラブルもなく、順調な滑り出しだ。しかし軽減税率やキャッシュレスのポイント還元など複雑な仕組みになっているため、潜在的なトラブルを抱え込んでいる。その奥には人間の本性を垣間見る。
増税にあわせ導入した軽減税率では、飲食店の税率を8%に据え置く一方、店内で飲んだり食べたりする場合は10%だ。今月8日付朝日新聞が財務省幹部の話を引用。その幹部は「目立ったトラブルは起きていない」と語る。しかし朝日新聞は、消費増税の仕組みはほころんでいると記す。
スーパーやコンビニは「店内で飲食する」と客から申告しないかぎり、税率を8%にしているという。同紙の取材に用じた兵庫県内でファミリーマートを営む店主は自己申告があったのはわずか1~2割だと話し、「声をかければ、トラブルになりかねない」と戸惑う。また申告しないイートインを批判する声がネットにアップされている。
これが人間の本性だ。出世欲、名誉心、金銭欲、性欲などの欲得を持つ人間のありのままの姿をさらけ出している。この「不正行為」を批判する人々も欲得はあり、既得権を死守することに余念がないだろう。彼らがこれから、税率8%でイートインすることもあるだろう。たとえしたとしても驚くに当たらない。筆者も世間並みの欲得を持っている。
人間の本性を無視した最大の実験は共産主義革命だった。民間宗教にしても、当初、純粋に人類を救済しよう思い立ち、布教を始めた教主はいただろう。しかし、浄財金や寄付金が入ってくれば、いつの間にか民間宗教が金のなる木に変ってしまうことがある。現にそんな民間宗教を、読者は目の当たりにしているのではないのか。
20世紀最高の政治家といわれ、英国民から現在も最も人気が高い英宰相ウィンストン・チャーチルは共産主義制度についても酷評し、「そうしてはいけないと学ぶこと以外に何らの価値もない」と切り捨てている。
カール・マルクスが大英図書館で寝食を忘れて書いた「資本論」を、旧ソビエト連邦の創始者ウラジミール・レーニンが実践した。皆さんもご存じだと思う。
レーニンは「皆が平等で搾取されない自由な社会」を夢見たが、後継者のヨシフ・スターリンがものの見事にレーニンの夢を葬り去った。レオン・トロッキーら数多くの同志を殺したスターリンの権力欲が社会主義独裁体制を実現させた。
チャーチルはこう話す。共産主義者は「すべての人々が平等な社会で生きる」という〝素晴らしい理想郷〟の構築を目指す。この理想社会の実現を求めて共産主義者が信じた施策を始めると、「不完全な人間」は激しくこの動きに抵抗し、社会は瞬く間に弾圧と暴力に彩られたものに変貌する。
旧ソ連や中華人民共和国は蜂社会を手本としている体制だ。女王蜂と働き蜂を拘束している法則は、気まぐれな習性をもつ人間社会には当てはまらない。英宰相は「指導することはたやすいが、強制することは難しい。しかし、それは人類社会の安全弁であり誇りである」とも話す。
よこしまな心と移り気な感情と崇高な理想を合わせ持った人間は、非の打ち所がない完璧な組織や、例外を許さない整然とした社会に抵抗する。そんな社会に息苦しさを感じて逃げ出す。働き蜂が何らの疑問も抱かずに女王蜂に奉仕する蜂社会に、人間はなじめないと思う。最後に行き着く先は独裁体制だ。
今日の中華人民共和国も同じだ。その国を支配する、習近平を頂点とする共産党の党員は自らの特権を手放したくない欲にがんじがらめに縛られている。中国革命により、毛沢東が手に入れた政治権力や個人権力、富の独占を特権を、ほしいままにしている。あげくのはてに、国家主義的な「偉大な中華の再興」とまでのたまう。
中国共産党の独占欲に抵抗する香港市民、とりわけ若者は、自由と民主主義を求めて戦っている。また台湾市民は中国共産党の「一国二制度」が共産党幹部の欲得を守る制度だと気づいている。そこにはレーニンが夢見た理想のひと欠片もない。
習を頂点とする共産党を批判しない。それが人間なのだ。だから、欠点だらけの民主主義制度が最善なのだ。
崇高な理想は人間の欲得にいつも潰される。消費増税にしても、複雑にすればするほど人間の欲得が入り込む隙間を大きくする。たとえ100歩譲って、安倍政権が深刻な不況の到来を避けようとつくったとしても、不備はいなめない。日本の借金財政や年金・介護などを考えて国民を説得し、単純に10%に消費税を増税すべきだった。それが一番公平だと思う。
増税にあわせ導入した軽減税率では、飲食店の税率を8%に据え置く一方、店内で飲んだり食べたりする場合は10%だ。今月8日付朝日新聞が財務省幹部の話を引用。その幹部は「目立ったトラブルは起きていない」と語る。しかし朝日新聞は、消費増税の仕組みはほころんでいると記す。
スーパーやコンビニは「店内で飲食する」と客から申告しないかぎり、税率を8%にしているという。同紙の取材に用じた兵庫県内でファミリーマートを営む店主は自己申告があったのはわずか1~2割だと話し、「声をかければ、トラブルになりかねない」と戸惑う。また申告しないイートインを批判する声がネットにアップされている。
これが人間の本性だ。出世欲、名誉心、金銭欲、性欲などの欲得を持つ人間のありのままの姿をさらけ出している。この「不正行為」を批判する人々も欲得はあり、既得権を死守することに余念がないだろう。彼らがこれから、税率8%でイートインすることもあるだろう。たとえしたとしても驚くに当たらない。筆者も世間並みの欲得を持っている。
人間の本性を無視した最大の実験は共産主義革命だった。民間宗教にしても、当初、純粋に人類を救済しよう思い立ち、布教を始めた教主はいただろう。しかし、浄財金や寄付金が入ってくれば、いつの間にか民間宗教が金のなる木に変ってしまうことがある。現にそんな民間宗教を、読者は目の当たりにしているのではないのか。
20世紀最高の政治家といわれ、英国民から現在も最も人気が高い英宰相ウィンストン・チャーチルは共産主義制度についても酷評し、「そうしてはいけないと学ぶこと以外に何らの価値もない」と切り捨てている。
カール・マルクスが大英図書館で寝食を忘れて書いた「資本論」を、旧ソビエト連邦の創始者ウラジミール・レーニンが実践した。皆さんもご存じだと思う。
レーニンは「皆が平等で搾取されない自由な社会」を夢見たが、後継者のヨシフ・スターリンがものの見事にレーニンの夢を葬り去った。レオン・トロッキーら数多くの同志を殺したスターリンの権力欲が社会主義独裁体制を実現させた。
チャーチルはこう話す。共産主義者は「すべての人々が平等な社会で生きる」という〝素晴らしい理想郷〟の構築を目指す。この理想社会の実現を求めて共産主義者が信じた施策を始めると、「不完全な人間」は激しくこの動きに抵抗し、社会は瞬く間に弾圧と暴力に彩られたものに変貌する。
旧ソ連や中華人民共和国は蜂社会を手本としている体制だ。女王蜂と働き蜂を拘束している法則は、気まぐれな習性をもつ人間社会には当てはまらない。英宰相は「指導することはたやすいが、強制することは難しい。しかし、それは人類社会の安全弁であり誇りである」とも話す。
よこしまな心と移り気な感情と崇高な理想を合わせ持った人間は、非の打ち所がない完璧な組織や、例外を許さない整然とした社会に抵抗する。そんな社会に息苦しさを感じて逃げ出す。働き蜂が何らの疑問も抱かずに女王蜂に奉仕する蜂社会に、人間はなじめないと思う。最後に行き着く先は独裁体制だ。
今日の中華人民共和国も同じだ。その国を支配する、習近平を頂点とする共産党の党員は自らの特権を手放したくない欲にがんじがらめに縛られている。中国革命により、毛沢東が手に入れた政治権力や個人権力、富の独占を特権を、ほしいままにしている。あげくのはてに、国家主義的な「偉大な中華の再興」とまでのたまう。
中国共産党の独占欲に抵抗する香港市民、とりわけ若者は、自由と民主主義を求めて戦っている。また台湾市民は中国共産党の「一国二制度」が共産党幹部の欲得を守る制度だと気づいている。そこにはレーニンが夢見た理想のひと欠片もない。
習を頂点とする共産党を批判しない。それが人間なのだ。だから、欠点だらけの民主主義制度が最善なのだ。
崇高な理想は人間の欲得にいつも潰される。消費増税にしても、複雑にすればするほど人間の欲得が入り込む隙間を大きくする。たとえ100歩譲って、安倍政権が深刻な不況の到来を避けようとつくったとしても、不備はいなめない。日本の借金財政や年金・介護などを考えて国民を説得し、単純に10%に消費税を増税すべきだった。それが一番公平だと思う。