英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

気象庁と噴火予知連は、情報が誤りであっても登山者に確実に知らせるべきだった     御嶽山噴火の惨事

2014年09月29日 22時27分26秒 | 時事問題
 27日に噴火した御嶽山は最悪の結末を迎えた。12人が死亡し、心肺停止は24人。事実上、少なくとも36人が亡くなった。何の罪もない登山者の死。ご遺族の気持ちを思うといたたまれない。ご冥福を祈ります。
 御嶽山の噴火後、噴火予知連絡会の藤井敏嗣・東大名誉教授は「今回の噴火の規模では予知することは難しかった」と述べた。確かに自然の変化を予測するのは難しい。ただ、そうであっても、ほんの少しでも変化が探知されれば、気象庁や予知連は地方自治体にその情報を流し、自治体は登山者に知らせることはできたはずだ。事実、「解説情報」として自治体や御嶽山の山小屋にまでは伝わっていたという。
 各紙の報道を総合すれば、御嶽山では、今月10日に火山性の地震が52回、11日に85回観測された。10日以前の状態と極めて異質の地震振動だったという。この火山性の地震はいずれもA型。火山は、噴火の前兆として、地震が増えることが多い。A型は地下でマグマが上昇する時、岩盤が壊れて起きる地震だという。
 地震の総数は12日以降に減少したが、14日に2回の「B型」と呼ばれる低周波の地震が発生し、26日までに計13回を記録した。B型は、浅い地下で水や火山ガスなどが動いて起きる地震。地下の水蒸気やガスが増えて圧力が上昇したことの目安となる地震で、火山特有の波形を持ち、水蒸気爆発の前に増える傾向がある。
 ただ気象庁は、A型の地震については震源の深さに大きな変化がなく、B型の回数も少なかったため、噴火警戒レベルの引き上げを見送っていた。
 10,11日の地震はいずれも低周波。「噴火の予測は難しい」と述べた藤井会長は記者会見で「これ(低周波地震)が出始めたら、(噴火と)関係しているかもしれないと思って注目する一つの指標になり得る」とも話している。
 27日の噴火から、毎日伝えられるニュース報道を聞いていると、地震予知連や気象庁は「白黒」的な判断を恐れた節がある。10日以降の火山活動の変化を根拠にして「噴火の可能性がある」と予測して、「もし噴火しなかったら責任を問われかねない」。そう考えたようだ。
 日本人の国民性を考えれば、気象庁や噴火予知連の幹部の気持ちを理解できる。間違っていれば、「人騒がせな気象庁」とメディアに叩かれる可能性はある。専門家の最終結論に依存しやすく、気象庁から送られてくる「情報」を自分で考え判断する傾向が少ない多くの日本人。独立心があまりないため、「お前の判断は外れたではないか」と非難しないまでも、「いい加減にしてよ。紅葉を見に行きそびれた」と文句を言われ、気象庁に「文句」の電話が殺到する可能性は十分にある。
 気象庁や噴火予知連の予報官は、それでも、情報を一般の登山者にも分かるようにすべきだった。もちろん、そのような伝達整備をしていなかった自治体、今回の場合は、岐阜県と長野県も反省しなければならない。
 われわれも、「外れた。当たった」ということではなく、「一つの重要な情報」として受け入れ、われわれがその情報に基づいて判断しなければならない。そして判断したからには、その判断に責任を持ち、誰に対しても批判しないことだ。
 もし、10日以降の情報が確実に観光客や登山者に流れていれば、死者数は減っていたと思う。自ら判断して御嶽山登山を控えた登山者もいたはずだからだ。最後の判断は予知連や気象庁ではなく、各個人である。
 今回の反省として、気象庁、噴火予知連、地方自治体はどんな小さな情報でも確実に登山者に伝える伝達手段を構築してほしい。そして、その情報を手に入れた登山者は独立心を持ち、責任をもって判断し行動する。このことが尊い命を落とされた方々への供養になるし、過去と現在の反省を未来に生かす道ではないだろうか。

南アジアの女性の約半数は18歳未満で結婚       貧困と社会因習が原因

2014年09月18日 13時53分00秒 | 生活
 きょうは穏やかな日を過ごしている。第2巻の原稿を終え、出版社に提出。再び校閲原稿が返ってくるまで少しばかりの時間が持てる。きょうは社に出勤する必要もない。かみさんはバレー教室。暇にまかせて、米国のアソシエート・プレス(AP)の興味引く短信をブログ読者に届けたい。
 日本では、晩婚化が進んでいる。昔のように、”お節介”な仲人も少なくなった。調査したわけではないので、自信をもって言えないが・・・。結婚仲介業者が幅を利かせているのだから、若い人々の幸せを願って男女の仲を取り持つ婦人も少なくなっているのは確かだ。
 今日、日本では、30歳代の独身女性や男性が多くなっている。もちろんを派遣社員が30年前と比べれば大幅に増え、経済的にゆとりのない男性が増加したことも晩婚化に拍車をかけているのだろう。政府は若い夫婦が共働きをする環境を一刻も早く整備してほしいものだ。幼児の保育施設をもっと増やし、保育施設で働く人々の給与ももっと上げる算段を考えるべきだが、現実はどうなのだろうか。政府の懐も寒いようだし・・・。
 さて、海の向こうの南アジアでは、46%の女性が18歳未満で結婚している。APがユニセフ(UNICEF)の報告書を引用し、こう伝えている。
 9月11日に発表されたユニセフの報告書は、インドなどの南アジアでは、政府が結婚最低年齢を18歳と法律で決めているが、若年女性の結婚は多く、それが女性の不平等性を顕著にしているという。18歳未満で結ばれている女性46%のうち、15歳未満で結婚している女性は18%にも上る。
 南アジア諸国 -インド、バングラデッシュ、ネパール - のうち、バングラデッシュが最高で、女性の実に3分の2が18歳未満で結婚しているという。
 原因は貧困と社会規範。社会規範は男尊女卑であり、子どもを早く結婚させることが社会の慣習。そうしなければ世間から社会制裁や道徳的なバッシングを受ける。日本にも昔、女性が30歳になっても結婚していなければ、後ろ指を指された。しかし、当時の日本の社会規範や慣習から見ても、その程度ははなはだしく厳しいことがうかがえる。
 ユニセフの報告書は、少女に教育を施し、早期結婚の一因になっている経済的な理由(貧困)をできるだけなくしていくために、国際機関や自国政府が家庭への経済支援を強化すべきだと説いている。経済支援はなにも金をばらまくことではなく、雇用の促進を述べているのだろう。
 またネパールの一例を挙げ、少女への支援ネットワーク構築を呼び掛けている。ネパールの辺境地帯では、少女の年齢にしか達していない妻とこどもを支援する団体が、そのような妻にこのような結婚の非人道性を教え、彼らがそのことに気づき始めた、と報告書は記している。
 ユニセフは赤ちゃんの出生登録の整備をも呼びかけて、この制度の確立により、子どもの誕生日や年齢が正確にわかり、若年結婚の阻止につながるとの希望を表明している。1989年に採択された子ども権利条約から25年。南アジア諸国の政府の努力により、子どもの出生上昇率が1990年の60%以上から38%前後にまで抑えられてきたという。それでも200万人以上の子どもが15歳にならずに亡くなり、そのうちの38%は栄養失調だった。
 女優の黒柳徹子さんはユニセフの一員として世界の子どもたちの幸せのために頑張っておられる。世界は広い。多くの国の人々は日本人よりも貧しく、それぞれの社会因習に縛られ、不合理な生活に甘んじている。日本が大多数の国より経済的に豊かであり、社会的因習がかつてほど厳しくないからといって、それでよいとは思わない。経済格差の増大阻止、安定雇用の促進など、われわれ固有の問題を一つひとつ解決してこそ、われわれが世界の人々、とりわけ開発途上国の人々に貢献できる素地をさらに強固にすることができるのではないだろうか。
 

スコットランドは独立するのか? 今日は投票日

2014年09月18日 11時33分30秒 | 時事問題
 日本から遠く離れたオセアニア大陸の西端、英国では、国民がスコットランドの国民投票の結果を固唾をのんで見守っている。結果は日本時間で明日判明する。日本のメディアもこの問題を最近取り上げている。スコットランド独立への賛成票が反対票を優れば、歴史的な出来事になるのは確かだ。
 1721年4月に就任した初代首相ロバート・ウォルポールから75代目の首相に当たる英国首相キャメロンは今や、判決を待っている気持ちだろう。もしスコットランドが独立すれば、長い英国の議会政治の上で、最悪の首相、英国の国益に重大なダメージを与えた首相として歴史に刻まれるだろう。13世紀のジョン王やヘンリー三世ら、失政で名高い国王に匹敵する無能な支配者として歴史に残るかもしれない。  
 英国紙「ザ・タイムズ」から送られてくる「レッド・ボックス」によると、「各紙の世論調査は独立反対派がわずかに優勢な中で、キャメロン首相は国民の批判を待っている」という。三機関の調査はいずれも52対48%でわずかに「独立反対派」が優勢だという。投票日前日の17日のキャンペーンが投票結果を左右する重大な日になる、とザ・タイムズは述べている。
 キャメロン首相はザ・タイムズのマグナス・リンクレーター記者の質問にこう告白している。「敗北の悪夢を見て、目が覚め、汗をびっしょりとかいていた」。もしスコットランドが独立すれば、キャメロン首相は辞任する、と保守党議員は述べている。
 週末か日曜日に投票結果を踏まえて、またペンをとりたい。
 

朝日新聞の誤報と中韓政府の不当な対日バッシングが日本の右派を勢いづかせている

2014年09月13日 20時21分17秒 | 民主主義とポピュリズム
 朝日新聞社の木村伊量(ただかず)社長が、東京電力福島第1原発事故と慰安婦記事をめぐる誤報を謝罪するために、11日記者会見した。
 朝日新聞が5月20日付朝刊で、福島第1原発事故を調べた政府の事故調査・検証委員会(政府事故調)による吉田昌郎(まさお)元所長(故人)の聴取結果書(吉田調書)を巡り、「所員の9割が吉田氏の待機命令に違反し、福島第2原発に撤退した」と報じたことに対する謝罪だった。
 木村社長は謝罪し、「その場から逃げ出したような間違った印象を与える記事と判断した」として記事を取り消した。自身の進退にも触れ「私の責任は逃れられない。編集部門の抜本改革など道筋がついた段階で速やかに進退を判断する」と述べた。   
 過去の従軍慰安婦報道についても「慰安婦狩り」をしたとする吉田清治氏(故人)の証言を取り消すなどした検証記事(8月5、6日朝刊)で謝罪がなかったことなどに批判が出ていることについても、木村社長は「誤った記事で訂正は遅きに失したことを謝罪したい」と、この問題で初めて謝罪した。一方で、自身の進退を問う理由は「言うまでもなく吉田調書報道の重みだ」と述べ、慰安婦報道の問題より大きいとの認識も示した。また広い意味で、「慰安婦問題」は存在し、日本軍の何らかの形での関与を否定しなかった。
 朝日の陳謝に対して、右派系新聞や雑誌は「鬼の首をとった」かのように、われわれが正しかったと勝利の雄叫びを上げている。また、長年、「慰安婦問題」を政治的に利用してきた韓国のメディアは狼狽え、朝日擁護を示唆する記事を載せている。そして「最後のリベラルの牙城」が落ち、日本の右傾化が加速しているというような見方をしている。
 13日付の朝日新聞によれば、吉田調書に関する記事を取り消したことを受け、同社が抗議書を送っていた産経新聞社、ジャーナリストの門田隆将氏、週刊ポスト(小学館)、写真週刊誌「FLASH」(光文社)にもおわびの意思を伝えたという。
 朝日新聞は致命的な誤りをした。そして、右派系新聞や右派の作家やジャーナリストをいっそう勢いづけた。日本社会の感情的右傾化と社会の硬直化を加速させている。二重の意味で大失策だった。特に従軍慰安婦問題で8月29日に掲載予定だったジャーナリストの池上彰さんのコラム掲載を見合わせたことは、民主主義国家の新聞として「あるまじき行為」だった。
 朝日の誤報問題についての構造的な問題を評論家が論じている。「構造的問題」は何か。それは「原発事故では現場ですら収拾がつかなかったに違いない」(吉田調書)、「日本軍は悪いことをしたに違いない」(吉田清治慰安婦証言)、という、記者が有する特有の”願望”の存在にほかならない。ある評論家はそう述べている。日本人特有の「推断」「希望的観測」にほかならない。
 朝日新聞は1970年代の故広岡知男社長から40年以上にわたってこの構造的な問題を抱えていた。特に1970~80年代は、新聞社としてはひどかった。ただ筆者の目から見れば、徐々にではるが良くなっていると思う。20世紀に生きた故山本七平や故福田恒存らの保守派(右派ではない)が朝日を批判したていた。現在、ご存命なら、両氏は右派を徹底的に批判したに違いない。右派の論客の西尾幹二氏はかつては保守派だったが、中韓の不当な日本バッシングと北朝鮮の拉致問題がきっかけで、右派へと転向したように思える。結局彼も感情に負けたのだ。筆者が何度も申し上げるように、保守派は冷徹な現実主義者である。ディタッチメント主義者である。
 しかし、21世紀に入ると、時計の針が大きく右にぶれて、今や右派系新聞が日本の癌になりつつある。左右両者に共通していることは、感情が先行して客観的な報道ができない。だから相手を批判する。今回は批判される立場だが、朝日新聞もそうだった。まだ現在形かもしれない。
 旧海軍の井上成美海軍大将は、日本人は感情が先行するから、いつも「合理的な判断」ができないのだ、と語っている。井上さんは、戦争を遂行した旧海軍の指導者や昭和30年代に中国共産党の毛沢東や北朝鮮の金日成を礼賛した左派の言論人を念頭において話していたのは明らか。わたしも同感だ。
 朝日新聞を批判するメディアの中で、毎日新聞の記事は読みごたえがあった。わたしはしばしば毎日新聞の現実離れした理想論やきれいごとに嫌気がさすときもあったが、9月12日の記事はすばらしかった。
 毎日は朝日が不十分な取材を放置したことを批判し、池上問題は論外と述べている。ジャーナリストの虚心坦懐で第三者として冷静に観察する、また公平性を重んじる精神が欠けていたと非難して猛省を促している。ただ、右派系の新聞や雑誌(右傾化した国民に買ってもらうために思想に関係なく書いている雑誌を含む)の「バッシングが過激化」していることも憂慮している。「それは異様ともいえるほどの激しさだった」。毎日は続けてこう述べた。
 「産経や読売は特集ページなどで厳しい朝日批判を展開した。読売は6日朝日社説で吉田証言に関し『20年以上にわたって放置してきた朝日の責任は極めて重い』と論じた。産経は8日朝刊で『自己正当化と責任転嫁 随所に』との見出しを掲げた。週刊誌のバッシングは激しかった。朝日を批判する記事の見出しには『虚報の構造』『1億国民が報道被害者』『売国』などの記事が躍った。朝日が、週刊誌の広告を紙面に載せるのを拒否する事態になった」
 そして毎日新聞は立教大学の服部孝章教授を登場させ、毎日の考えを代弁させた。「違和感を感じる。報道機関が報道機関をバッシングするだけでは、読者の信頼を失うだけで、新聞界全体にとっても大きな損失となってしまう」
 「慰安婦問題であれば軍の管理下でどのようなことがあったのかなど、新聞はきめ細かく取材して事実は何かを報道することに力を注ぐべきだ。論争のある問題について触れてはいけない状況を生み出すことは、権力者にとって都合の良い状況を招いてしまう」とも服部教授は述べている。
 一番大切なことは予見をはさまないことだ。軍の関与の定義はいろいろある。参謀本部が命令することは明らかな関与。現在までそんな史料はない。だが、下部の軍組織が上部の命令なく、数人の軍人が上官の命令なく、業者と結託して慰安婦を強制的に連れてきたのか。はたまた、業者が強制的に連れてきた慰安婦を、連隊レベルの司令官が黙認したことが軍の関与に当たるのか。公平な取材・調査と冷静な議論をしなければならないのに、メディア同士での”けんか”だ。困ったものだ。
 韓国政府やメディアも、感情に任せ、事実を探求せず、思い込みに彩られ、はたまた外交に利用していた結末が、結局は日本の右派新聞や右派の人々を勢いづかせている。朝日新聞の長年にわたる官僚的で傲慢な姿勢が、結局は日本の民主主義を閉塞状況に陥らせようとしている。朝日よ、しっかりしてくれ! 朝日がさらに失墜すれば、日本の左右のバランスが崩れ、一気に右傾化が加速。日本人は自業自得とはいえ、再び不幸に陥る。今回の出来事で日本を不幸にするのは左派ではなく右派だと気付いた。なぜ?近代日本史において、右派が左派より権力を握りやすい土壌が日本に存在するからだ。
 1920年後半、満州事変前夜、メディアと国民が次第に軍に味方して最後には軍をあおり、関東軍と参謀本部の中堅将校を勢いづかせたのだ。今日、朝日新聞の謙虚でない姿勢と驕りが右派を勢いづかせ、筆者が心配する方向に日本が行こうとしている。中国政府や国民、韓国政府や国民も、日本の侵略や植民地を許した一因である感情と主観的な思い込みが今日の日本の右派に力を貸していることを理解すべきだ。日々のヘイトスピーチもその一つにすぎない。良識ある日韓中の国民は今一度歴史をひも解くべきだ。

 (写真)朝日新聞の木村社長