英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

国民と国家あって政府なし  コロナ禍の中で

2020年12月10日 13時39分21秒 | 書籍紹介と書評
  国家と国民があって政府なし。コロナ禍の中で、わたしはそう思う。有事なのに・・・。ただ戦争ではないだけだ。しかしコロナも戦争同様、人々の命がかかっている。ウィルス急拡大といくつかの都市の医療崩壊の危機という状況下でも政府は動かない。
  菅政権は、安倍前首相からの政策「GO TO」事業を引き継ぎ、その一本道を進む以外に何もしない。と言っては言い過ぎかもしれないが、目の前の起った困難に対してお茶をに濁す程度の政策しか打たない。
  では誰が、コロナウィルスと最前線で戦っているのか。言わずと知れた、医師や看護婦さんら医療関係者だ。そして地方政府、つまり各県の県知事や地方行政官だ。また先見の明と良識あふれる大多数の中高年者と半数ぐらいの若者だろう。
  かつて国際政治学と歴史学を学んだわたしは、壊れた映像を見ているようで不思議な思いを抱く。太平洋戦争戦争前夜のノモンハン事件や太平洋戦争中に繰り広げられた陸軍参謀本部と前線で戦っている将兵の戦況に対する悲劇的なまでの認識の違いだ、ズレだ。
  そして参謀本部は、最初に立案した作戦を決して変えようとしなかった。時が変化しているのに、上陸してくるアメリカ軍を浜辺で迎え撃ち、万歳突撃を繰り返した。悲惨な最期が繰り返された。
  現在の菅政権や与野党の政治家は歴史に学ばず、旧日本陸軍参謀本部の愚行を繰り返している。そこには、アメリカ軍とコロナウィルスの違いがあるだけだ。旧陸軍の参謀本部の作戦参謀や高官、現在の菅義偉首相と政府高官はに共通しているのは何か。
  それは自分の作戦や政策は間違っていないという信念と、自分がつくった作戦や政策はおいそれとは変えられないという見栄だ。変えれば自らの存在理由を否定することになる、という自己防衛心だろう。たとえ彼らが意識していようがいまいが、それは冷厳事実だ。
  その上、最大の欠点は昔の指導者も今の指導者も想像力と洞察力に欠けていることだ。これに対して、昔の前線の将兵は、勇敢に、涙ぐましいまでの健闘精神で戦った。昔の将兵は現在の医療従事者に相当する。
  ノモンハン事件で、旧満州国と旧ソ連の広大な国境シベリア地帯で日本軍と戦った名将、ジューコフ将軍は独裁者スターリンに報告した際、こう言ったという。「前線の日本軍将兵はあっぱれでした。実に有能でした。素晴らしかった。しかし、彼らを指揮する日本軍の司令官や参謀は無能でした。無能の一語に尽きます」
  また第2次世界大戦の緒戦、ナチス・ドイツ軍の電撃作戦の前になすすべなく敗れ去り、首都パリを陥落させたフランス軍について、歴史家であり、この戦いに加わったマルク・マルク・ブロックは著書「奇妙な敗北」のなかで、フランス軍が敗北した理由を述べる。「政府や軍首脳の凝り固まった考えにより、最前線の戦況を理解できなかった。それだけではない。前線将兵との意思の疎通を欠いたことだ」
  「真の指導者であることは、何よりもまず、歯を食いしばることができることだろう。皆に自信を与えることだ。真の指導者にそれができなければ、何人にもできない。・・・最後に、命令する相手のためにも自分のためににも、無意味な恥よりは実りある犠牲を引き受けることだ」
   マルク・ブロックはこう述べ、当時のフランス指導者を批判した。コロナ感染症の本当の意味を理解できない若者に訴え、納得させるには、まずブロックが言ったことを菅首相をはじめ日本の指導者が実行することだ。今日の日本の指導者はどうだろうか、との問いかけに対する答えはおのずから出てこよう。
   コロナ対応の不手際を目の当たりにすると、これからの中国共産党に対する政府の対応はどうだろうか、と心配するのは私だけだろうか。日本政府のコロナ対応を観察している中国共産党幹部はにんまりしてるのではなかろうか。
   中国は必ず力で、いつの日か尖閣諸島を奪いに来るだろう。中国共産党の台湾奪取のあとにやってくる尖閣攻撃。日本政府のコロナウィルス対応を見ていると、自ずから尖閣の末路が見えてくる。