英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

間もなく70回目の終戦を迎える     なぜ無謀な戦争を始めたのかを思いめぐらす機会     

2015年07月26日 17時41分10秒 | 時事問題と歴史
 毎日うだる暑さだ。これを猛暑と言うのだろう。間もなく8月15日がめぐってくる。1945年8月15日もうだる暑さだったという。ただ、この終戦(敗戦)の日を実感する人々が年々少なくなっている。太平洋戦争(大東亜戦争)を戦った大多数の人々は鬼籍に入った。米国や連合軍と戦った戦争を知らない日本の若者が増えているという。そうだろう。彼らにしてみれば世界史や日本史の1ページにすぎない。歴史好きな人々以外、この重大な出来事を知ることもないだろう。
 これに対して中国共産党が対日勝利70周年の大キャンペーンを展開している。中国の若者が日本の若者よりもこの戦争を知っているだろう。ただ、中国共産党が日中戦争や第2次世界大戦、太平洋戦争を政治宣伝に利用するかぎり、中国の若者が客観的な戦争を理解することはない。不幸だ。
 新聞もテレビも年中行事として戦争番組を特集している。ただ、番組構成が相変わらず、「日本が悪かった」「二度と戦争をしてはいけない」「反省しなければならない」がメーンテーマでいささか味気ない。もちろん日本が侵略戦争して道義的に「悪かった」わけであるが、なぜ日本が「無謀な戦争」に踏み切らなければならなかったのかということを教えてくれる番組が少ないことだ。そのような番組から太平洋戦争をめぐる「日本の過誤」を見つけ出せるし、その中から未来に生かせる教訓も出てくるだろう。
 この時期になると太平洋戦争に絡む書籍も数多く出版される。また復刻版も出てくる。NHK取材班が編集した「なぜ日本人は戦争へ向かったのか、外交・陸軍編」を読んだ。歴史学者の井上寿一氏やロンドン大学准教授のアンソニー・ベスト氏らの小論文と取材班の見方も掲載されている。
 ひと時代前のように「日本が全面的に悪い」という総ざんげ書籍ではない。そして、そんな形式の本は少なくなった。客観的な史実に重点を置いた書籍が多くなってきたことは歓迎すべきだ。ただ、「日本が正義」「太平洋戦争はアジア解放戦争だった」という類の本も多くなってきた。これは歓迎すべきことではない。
 客観的に史実を記していても、その史実を深く分析している本がまだ少ないことに不満がある。そんな中で、戦前の一人の非戦政治家、斎藤隆夫の生涯を描いた中公文庫の「回顧七十年」は読みごたえがあった。彼を通して太平洋戦争の引き金を引いた軍部の心理や精神、ものの見方や状況への観察眼が理解できるからだ。とどのつまり、無謀な太平洋戦争に突入した軍部の決断は日本人の心理やものの見方などを映し出していると言っても過言ではない。
 太平洋戦争をめぐる決まり文句の書籍ばかりが毎年出るので、筆者も今年の2月に「歴史の視力」を大阪の小さな出版社「ホルツ出版」から刊行した。日本の指導者の言行から日本人の内面心理や国民性を分析した拙書だ。
 出版社の話によれば、専門家や歴史好きからは好評だが、一般読者の反応はいま一つだという。書評サイトで、「文章が読みずらい」という読者もいた。筆者が最も気にするところだが、同僚や友人に聞いたが「読みやすかった」「問題はない」ということでホッとしている。多分、友人のひとりによれば、歴史知識のない人々には読みずらいのかもしれない、ということだった。少し値段は高い。ただ、電子書籍はまあまあの値段だ。
 いずれにしても、間もなく終戦。先の大戦で戦死した英霊や、戦禍により亡くなった民間人の魂の冥福を祈る。指導者が過誤を犯したといえ、戦禍に倒れた人々は自らの家族や祖国の将来を思い、戦禍に倒れたのだから。

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