バラク・オバマ米大統領が27日、現職米大統領として初めて被爆地・広島を訪問した。到着後すぐに原爆資料館を訪れ、その後、平和記念公園で原爆慰霊碑に献花。「核兵器なき世界」への決意を表明した。広島、長崎で亡くなった人々を含め、第2次大戦の全犠牲者を追悼し、戦争の惨禍を繰り返さないための誓いを新たにした。
大統領の演説は素晴らしかった。深い知識に裏打ちされ、歴史を振り返る演説だった。最も感銘を受けた演説の一部を、少し長いが、抜粋して掲載する。
広島を際立たせているのは、戦争という事実ではない。過去の遺物は、暴力による争いが最初の人類とともに出現していたことをわれわれに教えてくれる。初期の人類は、火打ち石から刃物を作り、木からやりを作る方法を学び、これらの道具を、狩りだけでなく同じ人類に対しても使った。
いずれの大陸も文明の歴史は戦争で満ちており、食糧不足や黄金への渇望に駆り立てられ、民族主義者の熱意や宗教上の熱情にせき立てられた。帝国は台頭し、そして衰退した。民族は支配下に置かれ、解放されたりしてきた。・・・広島と長崎で残酷な終焉(しゅうえん)を迎えた世界大戦は、最も豊かで強い国家間で勃発した。彼らの文明は偉大な都市と素晴らしい芸術を育んでいた。思想家は正義と調和、真実という理念を発達させていた。しかし、戦争は、初期の部族間で争いを引き起こしてきたのと同様に支配あるいは征服の基本的本能により生じてきた。抑制を伴わない新たな能力が、昔からのパターンを増幅させた。
ほんの数年の間で約6千万人が死んだ。男性、女性、子供たちはわれわれと変わるところがない人たちだった。撃たれたり、殴られたり、連行されたり、爆弾を落とされたり、投獄されたり、飢えさせられたり、毒ガスを使われたりして死んだ。
世界各地には、勇気や勇敢な行動を伝える記念碑や、言葉にできないような悪行を映す墓や空っぽの収容所など、この戦争を記録する場所が多くある。
しかし、この空に上がった、きのこ雲のイメージが、われわれに人類の根本的な矛盾を想起させた。われわれを人類たらしめる能力、思想、想像、言語、道具づくりや、自然とは違う能力、自然をわれわれの意志に従わせる能力、これらのものが無類の破壊能力をわれわれにもたらした。・・・
われわれは戦争そのものに対する考え方を変えなければならない。外交を通じて紛争を予防し、始まってしまった紛争を終わらせる努力するために。増大していくわれわれの相互依存関係を、暴力的な競争でなく、平和的な協力の理由として理解するために。破壊する能力によってではなく、築くものによってわれわれの国家を定義するために。そして何よりも、われわれは一つの人類として、お互いの関係を再び認識しなければならない。このことこそが、われわれ人類を独自なものにするのだ。
広島と長崎の将来は、核戦争の夜明けとしてでなく、道徳的な目覚めの契機の場として知られるようになるだろう。そうした未来をわれわれは選び取る。
オバマ大統領が人類は戦争の歴史だったと話し、広島・長崎の原爆投下が核戦争を人類の自殺行為としたと強調した。この言葉におおきな感銘を受けた。ウィンストン・チャーチルも人類史上初めて経験した「第1次世界大戦」のおける総力戦について「諸君は自殺するのか」と著書「わが思想 わが冒険」(1932年出版)で問いかけている。戦後、米ソの核兵器による恐怖の冷戦のさなか、最晩年のチャーチルは戦争が国家紛争の解決手段の時代は過ぎ去ったと認識し、米ソの和解を訴えた。
常識人なら、もはや紛争解決の手段は外交しかないと認識する。されど愚かな人類はいまだに世界各地で戦争をしている。国家のエゴと国益の衝突は世界いたるところで発生している。
抑止力として核兵器を保有しなければ、国際テロや、中露の核保有国と太刀打ちできない、との見解がホワイトハウスや米国内にある。しかし「抑止力」の正当化は人間の愚かさ、強欲の裏返しだ。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の15年版年鑑によると、核拡散防止条約(NPT)が核保有国と認める米露英仏中の5カ国にインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた核弾頭数は計1万5850発。米国(7260発)、ロシア(7500発)の2カ国で9割以上を占める。中国は前年に比べ10発増の260発となる。
隣国の韓国や中国は自国の目でしかオバマ米大統領の広島訪問を理解しない。韓国メディアは、オバマ氏が韓国人被爆者の慰霊碑を訪れなかったことに不満を述べた。一方、中国の王毅外相は「被害者には同情すべきだが、加害者(日本人)は永遠に自らの責任から逃れられない」と語った。また中国国営中央テレビは、オバマ氏の広島訪問を通じて日本が「戦争で自ら行ったことを薄れさせ、被害者のイメージを強化しようとしている」との批判的な解説を交えて伝えた。
韓国、中国両政府には、自国にも破滅的な被害を及ぼす核兵器の恐ろしさを認識していない。
石器時代の昔から現在まで、人類の想像を超える科学の発展があった。それに比べて人間の頭の中身は変わらない。人類は偉大な科学の進歩を、自らの欲と既得権保持のために使ってきた。
ある国家が誠意を示しても、誠意を示された国家は、利益をできるだけ得ようと、それを悪用してきた。長い長い歴史の中で法制度という慣習が定着しない国々の人々にその傾向が強い。他国を犠牲にして南シナ海の権利を武力の威嚇により主張している中国はその好例だ。
オバマ米大統領は厳しい世界の現実を認識し、その認識を踏まえて核廃絶に向けて世界がその一歩を踏み出すように訴えた。最も多くの核弾道数を保有している米国の大統領が核廃絶へのイニシアチブをとったことを評価したい。
現実と理想はいつもかけ離れているが、何世代もの人々がこれからバトンを引き継いでこの理想の松明をかかげ、その目標に到達してほしいと願う。欲にまみれた人間が核廃絶こそ共存と繁栄の道だということへの理解が遅れれば、人類の滅亡が近くなることを意味する。
大統領の演説は素晴らしかった。深い知識に裏打ちされ、歴史を振り返る演説だった。最も感銘を受けた演説の一部を、少し長いが、抜粋して掲載する。
広島を際立たせているのは、戦争という事実ではない。過去の遺物は、暴力による争いが最初の人類とともに出現していたことをわれわれに教えてくれる。初期の人類は、火打ち石から刃物を作り、木からやりを作る方法を学び、これらの道具を、狩りだけでなく同じ人類に対しても使った。
いずれの大陸も文明の歴史は戦争で満ちており、食糧不足や黄金への渇望に駆り立てられ、民族主義者の熱意や宗教上の熱情にせき立てられた。帝国は台頭し、そして衰退した。民族は支配下に置かれ、解放されたりしてきた。・・・広島と長崎で残酷な終焉(しゅうえん)を迎えた世界大戦は、最も豊かで強い国家間で勃発した。彼らの文明は偉大な都市と素晴らしい芸術を育んでいた。思想家は正義と調和、真実という理念を発達させていた。しかし、戦争は、初期の部族間で争いを引き起こしてきたのと同様に支配あるいは征服の基本的本能により生じてきた。抑制を伴わない新たな能力が、昔からのパターンを増幅させた。
ほんの数年の間で約6千万人が死んだ。男性、女性、子供たちはわれわれと変わるところがない人たちだった。撃たれたり、殴られたり、連行されたり、爆弾を落とされたり、投獄されたり、飢えさせられたり、毒ガスを使われたりして死んだ。
世界各地には、勇気や勇敢な行動を伝える記念碑や、言葉にできないような悪行を映す墓や空っぽの収容所など、この戦争を記録する場所が多くある。
しかし、この空に上がった、きのこ雲のイメージが、われわれに人類の根本的な矛盾を想起させた。われわれを人類たらしめる能力、思想、想像、言語、道具づくりや、自然とは違う能力、自然をわれわれの意志に従わせる能力、これらのものが無類の破壊能力をわれわれにもたらした。・・・
われわれは戦争そのものに対する考え方を変えなければならない。外交を通じて紛争を予防し、始まってしまった紛争を終わらせる努力するために。増大していくわれわれの相互依存関係を、暴力的な競争でなく、平和的な協力の理由として理解するために。破壊する能力によってではなく、築くものによってわれわれの国家を定義するために。そして何よりも、われわれは一つの人類として、お互いの関係を再び認識しなければならない。このことこそが、われわれ人類を独自なものにするのだ。
広島と長崎の将来は、核戦争の夜明けとしてでなく、道徳的な目覚めの契機の場として知られるようになるだろう。そうした未来をわれわれは選び取る。
オバマ大統領が人類は戦争の歴史だったと話し、広島・長崎の原爆投下が核戦争を人類の自殺行為としたと強調した。この言葉におおきな感銘を受けた。ウィンストン・チャーチルも人類史上初めて経験した「第1次世界大戦」のおける総力戦について「諸君は自殺するのか」と著書「わが思想 わが冒険」(1932年出版)で問いかけている。戦後、米ソの核兵器による恐怖の冷戦のさなか、最晩年のチャーチルは戦争が国家紛争の解決手段の時代は過ぎ去ったと認識し、米ソの和解を訴えた。
常識人なら、もはや紛争解決の手段は外交しかないと認識する。されど愚かな人類はいまだに世界各地で戦争をしている。国家のエゴと国益の衝突は世界いたるところで発生している。
抑止力として核兵器を保有しなければ、国際テロや、中露の核保有国と太刀打ちできない、との見解がホワイトハウスや米国内にある。しかし「抑止力」の正当化は人間の愚かさ、強欲の裏返しだ。
スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の15年版年鑑によると、核拡散防止条約(NPT)が核保有国と認める米露英仏中の5カ国にインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮を加えた核弾頭数は計1万5850発。米国(7260発)、ロシア(7500発)の2カ国で9割以上を占める。中国は前年に比べ10発増の260発となる。
隣国の韓国や中国は自国の目でしかオバマ米大統領の広島訪問を理解しない。韓国メディアは、オバマ氏が韓国人被爆者の慰霊碑を訪れなかったことに不満を述べた。一方、中国の王毅外相は「被害者には同情すべきだが、加害者(日本人)は永遠に自らの責任から逃れられない」と語った。また中国国営中央テレビは、オバマ氏の広島訪問を通じて日本が「戦争で自ら行ったことを薄れさせ、被害者のイメージを強化しようとしている」との批判的な解説を交えて伝えた。
韓国、中国両政府には、自国にも破滅的な被害を及ぼす核兵器の恐ろしさを認識していない。
石器時代の昔から現在まで、人類の想像を超える科学の発展があった。それに比べて人間の頭の中身は変わらない。人類は偉大な科学の進歩を、自らの欲と既得権保持のために使ってきた。
ある国家が誠意を示しても、誠意を示された国家は、利益をできるだけ得ようと、それを悪用してきた。長い長い歴史の中で法制度という慣習が定着しない国々の人々にその傾向が強い。他国を犠牲にして南シナ海の権利を武力の威嚇により主張している中国はその好例だ。
オバマ米大統領は厳しい世界の現実を認識し、その認識を踏まえて核廃絶に向けて世界がその一歩を踏み出すように訴えた。最も多くの核弾道数を保有している米国の大統領が核廃絶へのイニシアチブをとったことを評価したい。
現実と理想はいつもかけ離れているが、何世代もの人々がこれからバトンを引き継いでこの理想の松明をかかげ、その目標に到達してほしいと願う。欲にまみれた人間が核廃絶こそ共存と繁栄の道だということへの理解が遅れれば、人類の滅亡が近くなることを意味する。