英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

平成は戦争のない幸福な時代    令和到来まで残り数時間に思う  

2019年04月30日 20時04分45秒 | 皇室
  平成の時代が数時間で終わる。1917年に退位された119代の光格天皇以来202年ぶりに、天皇陛下が退位される。憲政史上初めて。明日から新しい時代が始まる。
  平成の時代は明治以来初めて平和な時代だったが、阪神淡路大震災や東日本大震災と福島原子力発電所事故など災害の多い時代だった。多くの人々が犠牲になり、その犠牲の上に日本社会がつくりあげられてきた。
 ことし2月24日の天皇陛下ご在位30周年式典で、天皇陛下はこう話された。「平成の30年間、日本は国民の平和を希求する強い意志に支えられ、近現代において初めて戦争を経験せぬ時代を持ちましたが、それはまた、決して平坦な時代ではなく、多くの予想せぬ困難に直面した時代でもありました。世界は気候変動の周期に入り、我が国も多くの自然災害に襲われ、また高齢化、少子化による人口構造の変化から、過去に経験のない多くの社会現象にも直面しました」
 天皇陛下がおっしゃられたように、平成は近現代で初めて戦争を経験しなかった時代だ。われわれ「団塊の世代」が最も恩恵に与っている。父親の時代は戦争の時代であり、幾百万の人々が戦場の露と消えた。
 天皇陛下は続けてこうおっしゃる。「天皇としてのこれまでの務めを、人々の助けを得て行うことができたことは幸せなことでした。これまでの私の全ての仕事は、国の組織の同意と支持のもと、初めて行い得たものであり、私がこれまで果たすべき務めを果たしてこられたのは、その統合の象徴であることに、誇りと喜びを持つことのできるこの国の人々の存在と、過去から今に至る長い年月に、日本人がつくり上げてきた、この国の持つ民度のお陰でした
  天皇陛下が天皇統治の明治憲法に代わって発布された国民主権の現憲法に書かれている象徴天皇とは具体的に何なのかを追い求め、被災地に足を運び国民を励ました。そして象徴天皇の意味を国民に示した。この意味で、偉大な天皇だったと歴史は後生の人々に伝えるだろう。
 天皇陛下は「民度」についても話されている。この国の人々の民度こそが明治時代以来、幾多の困難を乗り越えてきた原動力だったと思う。江戸時代以来、受け継がれてきた教育、道徳などの日本人の資質が民度を形づくってきた。これこそが今日の日本の繁栄の礎だ。
 今日、日本人の民度が次第に色あせてきていると感じるのは私だけだろうか。政治家から一般庶民まで、半世紀前の人々と比べて民度が低くなっているようにみえる。
 天皇陛下が指摘された日本人の民度がこれからも維持され、国難に立ち至ったとき、それが役に立つことを祈るばかりだ。
 あすから令和の時代。その言葉通り、調和と法のなかで、平和な時代が続いて欲しいと願う。子どもや孫の時代が平和であってほしい。
 天皇陛下と皇后さまが残りの人生を健やかに、そして好きなことをされてお過ごしになられることを、国民の一人として切望します。30年間の陛下の勤めに感謝し、お疲れ様と申し上げたい。  

少子高齢化への具体策が急務     世界は30年後に老人社会

2019年04月28日 13時54分35秒 | 老人社会と年金、福祉
日本人は少子高齢化の問題に向き合ってから久しい。難問に向き合っていると言い換えた方がよいだろう。。APが4~5年前、高齢化に関する国連の世界報告書を伝え、「世界はいまだ高齢化に対応できていない」と強調したが、この報告書は現在でも腐っていない。
 この国連報告書によれば、大多数の国は、増加する高齢者への対応に取り組んでいるが、世界の高齢化はその取り組みよりも速いスピードで進行している。専門家は、各国の老齢化の進行は想像以上に速く、政府の対応は鈍いと警告する。
 2050年までには、歴史上はじめて60歳以上の人口総数が15歳以下の人口総数を上回る、と国連は報告する。
 ベトナム人のトォン・テェン・タオさんは数年前、AP通信社の取材に答え、「わたしのような歳の人間はリタイアーすべきでありますが、わたしは生活のためにまだ働いています。私の妻とわたしは年金がありません。健康保険もありません。病気にならないようにいつも気を付けています。もし病気になったら、どのようにして治療費を工面するか見当もつきません」と話した。
 タオさんは首都ハノイの裏道の一角で雑貨屋を経営し、タバコ、紅茶、チューインガムなどを売っている。タオさんは65歳で妻は61歳。月に稼ぐ50ドル(約5000円)で生活している。午前6時に店を開け、午後2時に妻と交代する。 
 日本人にとってもタオさんの発言は他人事ではない。少子高齢化で、若い日本人が父親や祖父母と同じ年金や医療保険制度を政府から受けられる保証はない。若者が老齢に達した時、日本経済は衰退しているのは必至。現在1000兆円以上に達した莫大な借金が、政府の将来の甘い財政見通しから、若者の老後を圧迫し、悲惨な状態に陥る可能性は否定できない。
 国連報告書の驚く点は「最も速い速度で老齢化しているのは開発途上国である。ヨルダン、ラオス、モンゴル、ニカラグア、ベトナムのような途上国は2050年までに(60歳以上の)老人人口は若者の3倍以上に達する」
 国連報告は、国連、世界保健機構(WHO)、世界銀行やほかの主な国連機関の資料からはじき出しているという。所得、健康度、教育、雇用、そして各国の老人に対するケアー(とりくみ)度などの資料を分析した。
 国連報告はもう一つの問題を提起している。「老いて健康でいられるか」「病気や痴呆の中で老いるのか」「安定した生活の中で老後の生活を送れるのか」。報告書はわれわれに色々な、複雑な老後の問題を投げかけている。
 年金や公的医療費、住宅サービスなどを提供する日本のような国は世界中を見渡してもまだ少ない。たとえばアフガニスタンでは年金も公的医療も何もかもない。平均寿命は男性59歳、女性61歳。日本より約20歳若い。
 BRICSといわれる経済発展が著しい中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカはどうか。老齢制度はBRICSより貧しいウルグアイやパナマよりも貧弱だという。
 老人の医療制度や年金制度などのケアーが最も充実したスェーデン、ノルウェー、ドイツではその制度を維持するために、税金負担が重いし、老人の就労を政府は勧めている。これに対して不満をいう国民もいるという。
 日本政府は原発、少子高齢化、年金、保険制度、老人介護制度、消費税増税など互いに密接に絡み合った問題を解決していかなければならない。国民の痛みを強いる長期的な戦略が必要だ。国民もその痛みを理解し分かち合わなければならないと思う。
  長期的な思考能力、時を見据えた思考・観察眼が試されている。もし政府や国民が目先の損得や既得権死守ばかりに心を奪われていると、若者の老後は暗い。

犠牲者に報いるにはどうすべきか  池袋暴走事故で亡くなった母子の夫の会見を聞いて思う

2019年04月25日 10時29分45秒 | 時事問題
「現実的に感じていただければ、運転に不安があることを自覚した上での運転や飲酒運転、あおり運転、運転中の携帯電話の使用などの危険運転をしそうになった時、亡くなった2人を思い出し、思いとどまってくれるかもしれない。そうすれば、亡くならなくていい人が、亡くならずにすむかもしれない。そう思ったのです」
  東京・池袋で90歳に近い高齢男性の乗用車が暴走し、横断歩道を自転車で渡っていた松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)が死亡した事故で、真菜さんの夫が24日の記者会見で、二人の写真の公開に踏み切った理由をこう話した。
  私は会見録画を聞いているうちに、不覚にも落涙した。会社員の夫は「最愛の妻と娘を突然失い、ただただ涙することしかできず絶望しています。寿命が尽きるまで一緒にいると信じていましたが、たった一瞬で未来が奪われました」とも話した。記者会見する精神状況でないにもかかわらず、それを押して記者の前に立ったのは、高齢者の運転手への警鐘と交通事故の撲滅を伝えたかったのだろう。
  32歳の夫は「それぞれのご家庭で事情があることは重々承知しておりますが、少しでも運転に不安がある人は車を運転しないという選択肢を考えて欲しい。また、周囲の方々も本人に働きかけて欲しい。家族の中に運転に不安のある方がいるならば、いま一度家族内で考えて欲しい。それが世の中に広がれば、交通事故による犠牲者を減らせるかもしれない。そうすれば、妻と娘も少しは浮かばれるのではないかと思います」と強調し、「今回の事故をきっかけに、さまざまな議論がなされ、少しでも交通事故による犠牲者のいなくなる未来になって欲しいです」と結んだ。
  記者の質問への答えだったと思うが、加害者の旧通産省工業技術院の飯塚幸三・元院長(87)が事故直後に最初にとった行動が、息子に携帯電話で連絡したことに対して、真菜さんの夫は、なぜ最初に救急車を呼んでくれなかったのかと無念な気持ちを吐露し、「私の最愛の2人の命を奪ったという相応の罪を償って欲しいです」と話した。そして「(真菜さんは)人を恨むような性格ではありませんでした」と妻の気持ちを思い、飯塚氏への批判や怒りを抑えていた。この悲惨な状況下で、なかなかできる行動ではない。真菜さんの夫は立派な人格者だと思った。
 一方、飯塚氏からは何らの謝罪声明がない。胸の骨を折り、入院中なのを考慮すれば、会見はできないと思うが、せめて謝罪声明は出せるだろう。真菜さんの夫に個人的に送っていれば、彼は記者会見で紹介するだろう。まだ謝罪を公にしていないのだろう。公表するのが筋ではないのだろうか。
  インターネットでは、飯塚氏へのバッシングがすごい。人々の飯塚氏への反感の気持ちは十分に理解できるが、激情に任せてはいけない。ただ、未確認情報だが、飯塚氏が自宅電話番号を変更し、フェースブックのアカウントを削除、グーグルのストリートビューの自宅にモザイクにし、経済産業省サイトに掲載していた写真が削除されているという。
 保身が強い官僚がおこなう手口だとは思うが、自らの身を守るのに汲々としている姿はいただけない。巷の人々から非常識な電話がかかってくるだろうが、その時は警察に連絡すればよいではないか。電話に出なければよいではないか。被害者の夫と比べて、あまりにも腹が据わっていない。この状況を冷静で客観的に見ることができない飯塚氏と家族の行動も世間の怒りに油を注いでいるようだ。
 今回の悲惨きわまる交通事故から、われわれは高齢者の免許保有について、真剣に議論すべきだ。政府、警察、関係省庁が高齢者の明確な免許返納時期について、法改正をも視野に入れ、議論すべきだ。そして何よりも、私を含む65歳以上のドライバーが、冷静になって免許の自主返納時期を見極めることだ。この見極めは人間の本性にもかかわる問題で難しい側面があるが、返納時期を考えることだ。返納時期を見誤らないことだ。
 この一連の議論や行動こそが、松永真菜さんと莉子ちゃんの供養になり、絶望の淵にある夫への慰めになるだろう。亡くなられたお二人の冥福を祈ります。合掌。

  (写真)亡くなった松永真菜さんと莉子ちゃん。莉子ちゃんが好きだった公園で、今月6日に遊びに訪れた際に撮影されたという(遺族提供)

  

英宰相チャーチルから学ぼう   彼の言葉を引用し、生き方について考える

2019年04月22日 09時31分46秒 | 書籍紹介と書評
   
  2017年12月4日付ブログで、拙書「人間チャーチルからのメッセージ  不安な豊かさの時代に生きる私たちへ」を紹介した。その日から約1年半がたった。チャーチルの生き方や人生観、政治観が何らかの形で、皆様のこれからの人生の道しるべとなることを心から願いたい。もう一度、この本を書いた趣旨を私のブログに書き、チャーチル自身の話を記す。
 拙書の表題からの印象はたぶん、教訓めいた堅いイメージがあると思う。確かに教訓めいたイメージはいなめないが、それをチャーチルの裏話、エピソードを通して考えてほしかった。人物の裏話やエピソードはその人の性格やものの見方が現れやすい。私はウィンストン・チャーチルの警護を長年勤めたウォルター・トンプソン警部の著書から裏話を引用し、チャーチル自身の著書からエピソードを引用した。またチャーチルを研究する英国人の専門家にも取材した。トンプソン警部の本は第2次世界大戦から6年後に出版され、日本語に翻訳されていない。かなり昔に絶版になり、私は偶然、英国の古本屋で7年前に手に入れた。
 ノーベル文学賞を受賞したチャーチルは新聞記者として活躍した時代があり、雑誌や新聞に寄稿しただけでなく、沢山の本を執筆した。このため、政治家活動の裏話を書いている。このことも私の執筆の助けになった。
 私は学者ではないが、チャーチルの人間味あふれる姿を書きたかった。チャーチルはわれわれと同じごく普通の人間だ。多分に躁鬱(そううつ)的な傾向が強いため、喜怒哀楽が激しい。しかし、われわれのような普通の人にはまねができない、リスクを恐れない勇気や信念を持っていた。また自分を批判する人々や政敵にも寛大な心を持っていたことも特筆すべきことだ。
 新書を紹介する「出版ニュース」(2018年1月下旬号)に拙書が紹介され、「エピソードのなかでも名優チャプリンとの交流など、人間チャーチルの意外な素顔も見えて興味深い」と書評をくださったのはうれしかった。また信濃新聞(2018年3月4日)が書籍紹介で取り上げてくださり、「各章の冒頭を飾るチャーチルの言葉は力強く、含蓄に富み、今読んでも新鮮だ」と記してくださったことにも感謝している。というのは、名言集や格言はその言葉だけを取り上げ、その言葉が「いつ」「どこで」「どのような背景で」「どんな理由で」発言されたかを書いていない場合が多いからだ。
 著作権の問題があり、その内容のほんの一部を下記にコピーする。このブログを読み、もっと知りたいと思う読者の皆様は「https://www.atpress.ne.jp/news/146342」をご覧ください。

   《チャーチルはせっかちで、瞬間湯沸かし器だった。大嫌いなことには、素直に自分の気持ちを相手にぶつけた。決して遠慮しなかった。
これは第2次世界大戦中のこと、首相官邸近くの通りを歩いていたとき、向こうから15歳ぐらいの少年が両手をポケットに入れ、口笛を吹きながらやって来た。通りいっぱいに響き渡る大きな音で、何かうれしいことでもあったのか、機嫌のよい表情を浮かべている。チャーチルはかん高い音がする口笛が大嫌いだった。側を通りすぎる少年に「口笛を吹くのをやめなさい」と大きな声で怒鳴った。
   警護のトンプソン警部は驚いたような表情を見せたが、少年はまるで意に介さず「どうして、おじいさん」とけげんな顔で尋ねた。「口笛が大嫌いだ。本当に不愉快な音だからやめなさい」と声高に言い返す。少年は足を止めずにさらに数歩歩いた直後、振り向きざま「そんなに嫌なら、どうして耳をふさがないのさ」と言い、力いっぱい口笛を吹きながら歩いていった。意表をつかれたチャーチルの顔は怒りに青ざめていた。
   トンプソン警部と外務省の敷地に入ると、先ほどまで怒り心頭だったチャーチルが笑みを浮かべはじめ、少年の言葉を口にした。「そんなに嫌なら、どうして耳をふさがないのさ」。その言葉を繰り返すうちにクスクスと笑い始めた。警部も首相の顔を見ながら笑みを返した。
 このエピソードはチャーチルの気質をみごとに映し出している。トンプソン警部は「カッとなるが、悪意はない。冷静になるとユーモアのセンスがあるため、すぐにユーモアできりかえしてくる」と語っている。》

  《チャーチルにとっての勇気とは何か。彼はスペインのアルフォンソ13世を「政治上の困難に直面して命の危険にさらされたとき、勇気を奮い立たせて行動し、肉体的、精神的な両面において勇気を立証したのである」と称え「上は国王から下は大衆まで、すべての人間は自分が試される重大な時局に立ち至ったとき、どう行動するかで評価が決まる。そんな時、勇気を振り絞るのだ。勇気こそ人間の資質の中で最初に挙げられる素晴らしい価値だ。なぜ? それは、いままで言われてきたことだが、ほかのすべての資質を担保するからだ」と明確に語っている。
  また「創造主」は邪(よこしま)で残忍な目的を抱いている人々に対して「地獄の苦痛」を与えるが、誰もが理解できる崇高な目的に向かってリスクを恐れぬ勇気をもち、一心不乱に邁進している人間には「慈悲深い」と述べ、「創造主は人間がどうすることもできないことをあえて試すことはありません。だからリスクを恐れずに生きなさい! 何が起こっても逃げないで立ち向かいなさい! そうすればすべてがうまくいくのです」と訴えている。》

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免許の自主返納時期を誤らないように   東京・池袋の高齢者運転交通事故に思う

2019年04月20日 10時53分09秒 | 時事問題
  またしても高齢者運転手による重大事故が19日、池袋の都道で起こり、母子2人が死亡、運転手と妻を含む8人が負傷した。赤信号を無視して暴走したとみられる。
 87歳になる運転手の無職飯塚幸三さんは「アクセルが戻らなくなった」と話しているが、エアバッグが正常に作動するなど、乗用車に機器の不具合が確認されていない。警察は、運転操作ミスの可能性を視野に捜査している。
 2016年10月28日、神奈川県横浜市で87歳の高齢者が運転していた軽トラックが小学生の列に突っ込み、小学校1年生の男児1人が死亡した事故や、高速道路を逆走するなど、高齢者の運転による重大な交通事故が増加している。
 警察庁によると、2018年に死亡事故を起こした75歳以上のドライバーは前年比42人増の460人で2年ぶりに増え、全体に占める割合は14.8%と過去最高だった。2016年の横浜市の高齢者のように、認知機能が低下して事故を起こす例が多いという。この高齢運転手は「なぜ現場を走っていたかわからない」と供述した。池袋の高齢運転手同様、意味不明な供述だと思う。
 警察庁の調査によれば、事故の直近に認知機能検査を受けた414人の状況を調べると、ほぼ半数の204人が「認知症の恐れ」か「認知機能の低下の恐れ」との判定を受けていた。
 75歳以上の高齢者の認知機能の低下によると見られる交通死亡事故の原因は、ハンドル操作の誤りやブレーキとアクセルの踏み間違いなど「操作の誤り」が3割も占めているという。
 75歳以上の運転免許保有者は年々増加し、18年時点で563万人。きょうのトピックとは違うが、関連している思われる20日付の朝日新聞1面トップ記事によると、一人暮らしをする65歳以上の高齢者が2040年に896万人となり15年より43・4%増えるという。
 一人暮らであろうが、家族と一緒であろうが、高齢者が今後、急激に増えていくことは確実であり、かれらは移動手段として車を使う。従って高齢運転手による交通事故が加速度的に増えていくことは自明である。
 昨日起きた池袋での事故で死亡した母子は松永真菜さんと3歳の莉子ちゃん。理不尽な死だ。無念だっただろうと思う。また松永さんの夫の悲痛な気持ちに、慰めの言葉がない。
   松永さんの夫は代理人弁護士を通じて談話を発表(23日付朝日新聞)し、「最愛の妻と娘を同時に失ってから今日まで、なぜこのようなことになったのか訳が分からず、みあんだ妻と娘の死と向き合うことができません」「当たり前のように一緒に生きていけると思っていた大切な2人を失い、失意の底にいます」と心境を明かしている。
 一方、加害者の飯塚さんは旧通産省の元工業技術院長で、農機大手クボタの副社長も務めていた、と朝日は報じている。事故1年前に知人に「運転をやめる」と言っていたという。彼にとっては晩節を汚し、取り返しのつかない事故を起こした。早く運転をやめておけばよかったと悔いていよう。
 私も古希を迎え、75歳まで5年足らず。次回の免許更新時には、運転適性試験を受けなければならない。認知症にかかっているかは自分ではわからない。今後10年で、事故回避システムを装備した車が現れるだろうが、それを過信せず、いつ免許を自主返納するかだ。高齢者の交通事故防止のうちで最も効果があるのは、免許の自主返納だという。高齢者による一連の運転事故を他山の石とせず、自分のこととして、自主返納する時期を誤らないようにしたい。
 
 (写真:ゴミ収集車と乗用車が衝突し、多数の死傷者を出した池袋の交通事故)