英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

恥を恥と思わなくなった日本人  関電金品授受問題など次々起こる不祥事に思う

2019年10月06日 20時27分04秒 | 日本の安全保障
    「日本はもう限界だと思った。このままでは国が壊れてしまう」「自民党は、おそらく権威主義になってしまいました。反対意見を排除して、敵とみなした者を厳しく攻撃する」「政治にまともな議論がなくなったのも深刻です。消費増税や財政再建についても、先の見通しが立たないまま、言っていることがころころ変わる」
  10月4日付朝日新聞のオピニオン&フォーラム「保守政治家が選んだ道」で、元自民党の衆院議員で無所属の中村喜四郎氏が野党を支援する理由をこう述べた。
   元建設大臣の中村氏は自民党で将来の首相候補と目されながら、1994年に汚職事件で逮捕され、2003年に実刑が確定、失職したが、地元有権者の後押しを受けて、05年に国会へ復帰した。
   27歳で衆院議員に初当選し、40歳で初入閣した中村氏はわれわれ「団塊の世代」の仲間だ。飛ぶ鳥を落とす勢いだった若い時代をよく知っている。彼の人生に汚点があったとはいえ、彼の話すことは真面だ。この20年間、表に出るのを控えてきたという。
   国が滅ぶときは、外国に戦い敗れて降伏するときではない。ましてや属国になって苦渋をなめさせられるときでもない。国が滅ぶときは、政治家と国民の精神が腐敗し、恥を知らず、嘘と忖度がまかり通るときである。政治家の森友、加計学園問題、北海道の牧場で名馬のたてがみが切られ、それをフリーマーケット「メルカリ」に出品した事件、関西電力の役員らが福井県高浜町の元助役(故人)から多額の金品を受け取っていた問題、神戸市須磨区の市立東須磨小学校の20代男性教員が、昨年以降、同僚の先輩教員4人からいじめ行為を受けていた問題、80歳代後半の元高級官僚が池袋で母子を交通事故死させた事故など、数えたらきりがない。この数年の事件・事故を振り返れば、平均的な日本人の矜持や恥がなくなってきているように思う。
  日本人の間に、恥を嫌う武士の伝統精神がなくなってきたのは明らかだ。60年前、夫が戦死し、夜遅くまでミシンを踏んで家計を支えていた私の友人のお母さんがわれわれに「どんなに生活が苦しくても恥ずかしいことをしてはなりません」と諭した時代は遠くに過ぎ去った。
  国の借金が1000兆円を超えても、北朝鮮がミサイルをいくら撃とうが、政治家は具体的な行動は何も起こさない。口だけはピィチクパーチクと鳥のさえずりのように発言するが、それは国民から人気を得ようとする空虚な言葉だけだ。
  10月2日、北朝鮮がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)を発射したようだが、SLBMは北朝鮮にとって、核兵器の運搬手段として当面の最終開発目標と考えられている。北朝鮮は、SLBMを手に入れれば、すでに保有しているとみられる核兵器でアメリカの攻撃を抑止し、朝鮮半島統一のため、中国の暗黙の承認が得られれば、いつでも韓国を攻撃できる。日本に対してはどうかと言えば、狡猾な脅しをかけてくるのは必至だ。
 日本人による現実無視の危機意識のなさやモラルの低下、トランプ米大統領の個人利益優先は日本を存亡の危機に陥れようとしている。トランプは一国優先主義者ではない。自ら二期目の大統領を目指し、そのために米国と同盟国の国益を犠牲にしているようだ。私見として述べれば、米国の大統領としてこれほど愚かで無能力な人物は米国史を見渡してもいない。
 われわれ日本人は、この不幸を嘆く前に、自らの矜持を取り戻し、危機意識を抱いて、これから到来するであろう困難を克服する覚悟を持たなければならない。さもなければ、先人が営々として築き上げてきた日本の政治制度や文化、慣習など、すべてを失うばかりか、財政破綻や外からの侵略に立ち向かう勇気や矜持さえなくなっているだろう。