英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

安易に金儲けし恥を知らない首相 カジノ法案強行採決に思う

2018年06月16日 10時35分53秒 | 日本の政治
 カジノ法案は国民の支持をえることなく強行採決された。世論に背を向け、自公政権の政権維持のためにのみ政治を動かす安倍晋三政権の本質が再びさらけ出された。国会や党内での議論を軽んじる安倍首相の本質が再び浮き彫りになった。
 カジノを含む総合型リゾート(IR)実施法案についての主要各紙の世論調査では、71%の回答者が今の国会で成立させる必要はないと言っている。自民党支持者でさえ57%がそう回答している。
 この法案では、カジノの客が一定金額以上を事業者の口座に預ければ、信用情報に応じて預けた金額以上を借りることが可能になるという。ただ、一定金額がいくらなのかが不明なため、悪徳貸付業者が、ギャンブル依存症者を食い物にすることは明々白々だ。
 日本は少子高齢化時代に突入し、退職者が年々増えている。IRの誘致自治体が「客の7~8割は日本人」と試算していることから、高齢者の金融資産を目当てにしているのではないのか、と強く思う。また若年層は老後の年金がおぼつかないとおもっていることから、一攫千金を夢見てギャンブルに走ることが予想される。将来、カジノ依存症者が出てくることは明らかだ。借金で家計が火の車になるだろう。
 一方、政府は、カジノで壊れた家族を犠牲にして国庫を潤そうとする。この収入で財政規律を回復するのか?1000兆円を超える国の借金を無視して基礎的財政収支(PB)を25年度に先送りしたことや、社会保障改革も先送りしたことなどから、どうもそうではないらしい。それではカジノで稼いだ金を国は何に使うのか?私には皆目わからない。
 安倍という政治家は欺瞞だらけだ。安倍首相が「道徳の回復」を声高に叫ぶのなら、なぜ道徳と逆行するギャンブルカジノにこれほどまでに執心しているのか。私にはわからない。首相はロマンチックな右翼のお坊ちゃんなのだろうか。彼が信念を持った政治家ではない、勇気を出してリスクを取る政治家ではない、口だけは立派なことを発言するが、戦略も機略もないということだけは明確に言えるだろう。
 歴代首相中、最低で最長の任期をもつ首相だと言えないだろうか。この国の人々はここに至っても何も言わない。自民党を支持する。野党がだらしないのは分かるが、これから先のわが国をどうするのか。各自が議論をする時期に来ているように思う。この責任の半分はわれわれ国民にある。

米朝首脳会談はトランプ大統領の敗北       東アジアでの中国支配の始まり?

2018年06月13日 21時10分19秒 | 東アジアと日本
 12日にシンガポールで行われた日朝首脳会談はトランプ米大統領の敗北に終わった。トランプが「米国の勝利」だと言っても、それはむなしく響く。日韓も実質的に何も得るものはなかった。これに対して北朝鮮の金正恩委員長は何も失うことなく、彼の最も大きな望み「体制保証」を手に入れた。そして、北朝鮮の後ろ盾である中国の最高指導者、習近平氏も大きな得点を稼いだ。
 英国の有力紙「ガーディアン」のジョナサン・フリーランド論説委員は「金正恩の世襲独裁者は(祖父の代から)何世代にわたって求めてきた体制の国際的な合法性を勝ち得てシンガポールと去った」と述べ、トランプ米大統領が「北朝鮮の世襲王朝のために歴史的な偉業を成し遂げた」と皮肉っている。
 英国放送BBCは「国内政治(11月の議会の中間選挙)にばかりに目を向け、自らのイメージを上げようとするドナルド・トランプの偏ったセールスマンシップにより、(金正恩への)信頼が現実を上回った」と論評する。また米国の有力紙「ニューヨーク・タイムズ」も「前代未聞の首脳会談 何らの保証なし」と批判する。
 トランプ大統領は金正恩委員長に「北朝鮮の体制保証」を事実上認める一方、「検証可能で不可逆的な北朝鮮の非核化」の言質を得ていない。それどころか、北朝鮮の官営メディアによれば、北朝鮮や中国が提唱してきた「段階的な非核化」をトランプ米大統領は認めたという。
 さらに驚いたことには、トランプ大統領が、米朝が交渉を続けている間、在韓米軍の軍事演習を差し控えると公言。在韓米軍の韓国からの撤退の可能性を示唆した。
もしそれが事実なら、東北アジアの軍事バランスと政治バランスは根底から変化し、日本の安全保障体制に大きな影響を及ぼす。
 国際政治をかじった人々には、たとえ専門家でなくても、韓国から米軍が引き上げれば、東アジアの国際秩序がどうなるかぐらいは十分に理解できる。このような発言は古今東西、現実を無視した理想主義者がよく言うのだが、トランプが理想主義者かというと、決してそうではない。かれは単にソロバンをはじいているビジネスマンだ。
 日本はどうなるのか。安倍晋三内閣の番頭である菅義偉官房長官は13日午前の記者会見で、「非核化が進み、IAEA(国際原子力機関)が検証活動を再開する際は初期コストを支援する用意がある」と述べた。この発言は、トランプ米大統領が北朝鮮の非核化の費用を日韓両政府に負担させる考えを表明したことに対する答だ。
 どこまで現政府は「幕府の犬」なのか。日本は米国の同盟国であっても、属国ではない。日本政府は拉致問題が完全に解決して初めて、非核化の費用や植民地統治に対する賠償金を支払う確固たる政策を堅持しなければならない。特に北朝鮮のような狡猾な独裁国家には強い姿勢を示さなければ、向こうから妥協することはない。彼らは利害で動く。
われわれの唯一といってよい取り引き材料(バーゲニングチップ)は、北朝鮮が欲しがっている賠償金だ。北朝鮮がわれわれの要求をすべてのみ実行する前に、日本が非核化の資金の一部を拠出すれば、傘にかかって責めてこよう。善意(弱さ)から拉致問題は解決しない。北朝鮮以外の国の中には通用するかもしれないが、北には力しかないと信じる。
 
 

 

日本の政治家は「近視眼的」だ   英国名誉教授の発言は当を得ている

2018年06月10日 11時28分52秒 | 時事問題
 「日本が抱える最大の問題、人口減は今後、都市部でも起こり、亡国の引き金にすらなりかねない。人手不足がますます深刻化する。この冷厳な事実は「すーと前から分かっていた」
 10日付朝日新聞によると、英国・サセックス大学のロナルド・スケルドン名誉教授は「日本の無策は特殊で、回復不可能。政策決定者たちの近視眼的な対応が不思議だ」と述べ、歴代の日本政府と政治家を暗に批判した。
スケルドン名誉教授は同大学で開かれたセミナーで、こう話し、日本人参加者が言葉を失った。スケルドン名誉教授は日本の2050年の人口ピラミッドを予測し、若者に比べて高齢者が非常に多いと発言、国が滅びる「棺おけ型」と表現した。
 スケルドン名誉教授は日本の人口減少問題について「政策決定者たちの近視眼的な対応が不思議だ」と話す。何も人口問題にかぎったことではない。英国に約7年滞在して感じることは、英国人は非常に長期的な展望を洞察し、それに沿って長期戦略を立てるのに長けた民族だということだ(EU離脱問題を見ているとそうとは思えなくなったが、少なくとも30年前まではそうだった)。これに対して日本人はその場その場を上手く取り繕う才能は長けているが、長期的な展望を洞察するのは疎い。
 特に、近年、この傾向が顕著だ。政治家の質が劣化し、日本民族が世界に誇っていた誠実さも年々低くなって民度が下がっていると言わざるを得ない。
 特に顕著な傾向は政治指導者に現れている。大言壮語するが実行しない。いい例が安倍晋三首相だ。2015年安倍首相は「少子高齢化に歯止めをかけ、50年後も1億人を維持する」と言い切った。そして2025年までに出生率を1.8にまで引き上げると述べた。しかし、慶応大学の津谷典子教授(人口学)は「今後10年で1.8はあり得ない」と冷ややかだ(朝日新聞から引用)。そうだろう。安倍首相は言うだけ言って、具体的な政策を立案し、実行した試しがない。
 この20~30年、大多数の政治家は選挙で当選したい一心から大言壮語の政策を話すが、選挙に当選した翌日から黙り込む。この最たる人間が安倍首相だ。拉致問題にしても、一応実行しているようには有権者に見せてはいるが、必死に実行していると思えない。そうかといって「カジノ法案」のような一時的な効果はでるが、持続的な効果がでるかどうかは未知数のもの、近視眼的な政策には躍起になって国会を通そうとする。
 挙げ句の果てに、与党自民党の若手議員の中には、1000兆円を超える国の借金は返さなくてもよいと事実上公言する。正気の沙汰ではない。もはや完済できないことは明らかだが、それに真摯に取り組む姿勢を見せ、必死の努力をしなければならないのに、それが微塵もない。
 人口問題の取り組みについて発言したスケルドン名誉教授の発言は日本人、特に政治家の資質をものの見事に当てている。わたしにはそう感じた。今も昔も、太平洋戦争前夜の日本の軍部指導者の対米戦略やものの見方についても理解できることだが、日本人は長期戦略とそれを実行する忍耐力に長けていない。近年、この傾向が強まっている。このまま行けば、日本が滅びるのは必至。長期的な戦略に長けた若い指導者が日本に現れることを切に祈るばかりだ。

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ウソをつかぬ国民になることが大切  鈴木貫太郎海軍大将のことばを読んで

2018年06月07日 22時09分04秒 | 時事問題
 6月7日付朝日新聞の「ザ・コラム」に駒野剛編集員が旧日本海軍の鈴木貫太郎大将について書かれていた。鈴木大将は明治時代の武士の気骨を持った軍人で、小さなことにこだわらず、おおらかな人物だったという。この軍人はチャーチルと同じように、何度も命を落としそうになるが蘇り、天寿を全うした。その中で誰からも知られている不幸な出来事は、1936年に旧陸軍の若手将校が起こした2・26事件と首相として1945年8月の終戦工作だ。それ以外にも、3歳のとき暴走してきた馬に蹴られかけたり、魚釣りをしていて川に落ちたり、海軍に入ってからは夜の航海中に海に落ちたりしたが、奇跡的に助かった。
 駒野編集委員は鈴木大将が息を引き取る直前の状況についてこう記す。亡くなる直前、2度「永遠の平和」と繰り返し、「鈴木は日本再建の鍵を『日本国民が嘘(うそ)をつかぬ国民になることである』と言い残しもしている。軍や政治家のウソが、侵略の果ての亡国の引き金になったと考えたのだ」
 確かに、政治家や官僚は太平洋戦争中、ミッドウェー海戦での完敗を、まるで引き分けか勝ったかのように報じた。また各戦線での敗北を「転進」と報道した。政治家と軍人のお先棒を担いだのはメディアの連中だ。駒野さんはこのことを述べていないので、一筆書く。
 駒野氏はこう記し、最後の文章を以下のように綴る。「いま、日本はその願いを忘れ、逆コースを歩んでいる。政治家、官僚、自衛隊にはウソがはびこり、当事者は恥という言葉と無縁にいる。老宰相(鈴木)に健全な国家づくりを託された私たちの世代は、彼の願いとあまりにかけ離れた地平に立っている」
 この最後の文章は身につまされる。わが国の首相から省庁の高官まで、はては大学の教育者までもがウソをつく。そして幼子を虐待する親が日々増えている。はたまた日本の運命を他国に任せて平然としている指導者がいる。亡国の序曲だといえないだろうか。幕末の志士、坂本龍馬が「日本を洗濯しなければならない」というようなことを語っているが、今日はまさにそのような時局なのだろう。

「恥」の文化が日本人の心になくなりつつあるのだろうか。  森友学園問題の不起訴処分に思う

2018年06月05日 20時25分42秒 | 日本の政治
 森友学園をめぐる一連の問題で、大阪地検特捜部が財務省幹部ら38人を不起訴処分にし、安倍政権と与党自民党はこれで幕引きにしようとしている。この不起訴処分の結果を踏まえ、作家で元外務相主任分析官の佐藤勝氏は「今、政策能力が低くてやる気のある政治家と、能力が高くて倫理観のない官僚とが結びついてしまっています。・・・国家の劣化ぶりは著しい」と話す。
 佐藤氏は「やる気のある政治家」と言われているが、国民と国家のために粉骨砕身する「やる気のある」政治家は与野党ともにほとんどいない。大臣の椅子を目指し、首相にこびる「やる気のある政治家」はごろごろいる。また国民の共有の財産である公文書を首相のために「忖度」して改ざんし、平気でいる官僚がごろごろいる。そして誰も部下の不祥事に対する責任を取らない。それは大臣だけでなく民間のお偉方も同じだ。彼らは歴史と後世の人々に反逆している。
  日本人の素晴らしさは誠実さと正直さだ。それが史実の正確さを支えている。もちろん、歴史上の歴代政権や支配者は、彼らが生きた時代以前の事柄を改ざんしたときもあった。特に政敵の場合がそうだ。徳川幕府は豊臣政権の石田三成を悪く描いた。それでも総じて史実は残した。これに対し、現政権は改ざんするどころか、記録を破り捨て闇に葬り去っている。
 政治家や官僚の劣化を象徴する出来事があった。財務省前次官の、外務省のロシア課長の、前新潟県知事らのセクハラだ。半世紀前には想像できない低次元の不祥事が相次いで起こっている。その上、自民党の「日本の未来を考える勉強会」の若手議員34人が5月始め、次の提言をした。消費増税の当面の凍結、当初予算の3~4%の拡充、政府が設ける基礎的財政収支の黒字か目標撤廃・・・。
 この提言は財政再建そのものを否定する。その上、会の呼びかけ人代表の安藤裕衆院議員は「政府は税と国債という二つの収入をその時々で使い分ければいい。それでも財政破綻は起きない」と断言する。
 この事例一つをとっても健全財政を否定する次世代の政治家連中が急速に増えている。長く経済政策を分析してきたみずほ証券の上野泰也氏は「自民党若手の間でここまで財政規律が緩んでいるのは衝撃的」と驚きを隠さない。
 借りたお金は返さないといけない、というルールを、世界中の人々は当然だと今まで考えてきた。この常識中の常識が日本では常識ではなくなりつつあるのだろうか。最近、高校時代の友人が森友・加計学園問題について私見を述べ、「嘘がまかり通る恐ろしい時代になったなあ」と慨嘆した。
 一つ一つの事柄が一本の線でつがっている。それは「恥」という心情が消え去りつつあることだ。85~90歳代以降の人々が持っていた「恥」がなくなってきたことだ。「恥ずかしいことをしてはいけません」との言葉が消え失せている。
 自民党の政治家は野党を批判し、彼らが森友・加計学園問題ばかりを国会で取り上げていると話す。また朝鮮半島問題や働き方改革についての議論がなおざりになっていると主張する。
 一見、正論のように聞こえるが、それは違う。指導者や政党が誠実でないことが一番の問題なのだ。良心を持っていてこそ、国民は従う。国難が到来したときに、国民ひとり一人が政府と首相の下に集まり、一致団結する。第2次世界大戦中の、宰相ウィンストン・チャーチルと英国民はまさにそうだった。チャーチルは良心の盾を持つ以外に選択肢はないと断言している。
 佐藤氏はこの日本の現状について「教育から変えるしかない。・・・この深い病理を変える特効薬はない。地道な取り組みが必要だ」と語る。私もそう考える。小中高で自ら考え行動する人間を育てる必要がある。右派の安倍首相が、愛国心を育む道徳なる時間を小学生に与えようとしているが、それは違う。愛国心は上から教えても、若者には何の役にも立ちはしない。思考する力をつけることだ。先人の生涯から、彼らの長所・短所や成功・失敗、逆境・勇気を学ぶことが大切だ。
 共産党の独裁国家、中華人民共和国は2045年に世界の一等国なる目標を立てている。もし成功するなら、主従の国際秩序が構築される恐ろしい世界が出現するかもしれない。私はその危惧をここ10年以上前から抱いている。現在、この危機を乗り切るのに必要な日本人の気質や国民性の長所が失われつつあり、民度も低下しつつある。その責任の大半は安倍政権と自民党にある。
 森友・加計問題で「嘘をついている」と疑われていること事態が「恥」だと安倍首相は自覚しているのだろうか。一方、野党の政治家は与党と政府を批判するばかりで、自らが犠牲になってでも国民の先頭に立つ気概がない。日本はひたすら滅びの道を進んでいるのだろうか。そうでないことを、日本を愛する一人の民主主義者は願う。