英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

将来に前向きな国民はだれ?  英紙が調査

2013年06月02日 17時48分25秒 | 国民性
 「前向きに将来を考える国民はだれ?」―。英紙ガーディアンが数カ月前にインターネット上に掲載した。私的な事情から紹介する機会を逸したが、このネタはまだ腐ってはいないと判断して載せた。
 ドイツ国民が世界で最も前向きに考える国 (将来の取り組み姿勢)だという。
「ドイツが最も前向きに未来に向けて物事を考えている。英国はトップの座から引きずり下ろされ、4位に転落した」。英国は2011年の調査では1位だった。
 ロンドン大学のユニバシティー・カレッジのヘレン・モート博士とバービック・ビジネス・スクールのトビアス・ブレイス准教授はグーグルサイトの質問欄を利用して調査した。
 両氏は2012年から45カ国の数百万のグーグルログを利用し、「将来に関連している情報」を探し求めた。フューチャー・オリエンテーション・インデックスを使ったという。また、2011年と2013年の読者のサーチ量の比率を計算した。この結果、将来に関する情報を探すユーザーとユーザーの出身国の一人あたりのGDPの間に興味深い関係を見つけた。 モート准教授はこう説明する。
 リサーチャーはこの2つの指標の相関関係から次のように理解した。未来に関する情報を探すユーザーの出身国の経済は成功している。
 米紙「ワシントンポスト」(2月8日)もモート博士の調査結果を載せ、パキスタンが最も未来に前向きでない国だと記した。パキスタンはテロの脅威にさらされている。国情は不安定だ。
 モート博士は紙上で「経済上の成功と未来志向が深くかかわっている。経済が鼻歌交じり(良い)のときは、投資などで楽観的な姿勢になる。ただ、少なくとも短期的には経済の成功と未来志向に相関関係がないようだ。
  日本は2011年は9位で、2012年は3位。しかし経済成長の指標であるGNPは2.2%増にすぎない。中国は31位から41位に転落。だが実際の経済成長は欧米を超えている。ブラジルの人口の5分の1は貧しい。しかしランクは米国より上の9位だった」と語った。
 経済が右肩上がりの時代には、国民は未来に明るい希望を抱き、前向きな気持ちになる。ただ、GNPがトップを走っていたとしても、経済が右肩下がりでは国民の気持ちも暗くなる。
 この調査は国民心理の一端を明らかにしているが、物質的な豊かさだけが、人々を前向きにさせ、将来を考えさせることにはならないと思う。精神的な満足感や文化的な豊かさなども人間の心を和ませ、未来へ前向きな気持ちを抱かせることになるだろう。
 人間を前向きにさせる豊かさとは何か。答えは簡単には見いだせない。何はともあれ、前向きな気持ちで生活している日本人は現在、少ないのではなかろうか。
 少子高齢化と人口減少、派遣社員の増加と若年者の就職難、経済の衰退など、日本にはかつての勢いがない。アベノミックスで経済再生を達成したところで、日本人が前向きに未来に向けて物事を考えるとはかぎらない。
 精神的な豊かさも必要だ。半世紀前に筆者が見たポルトガルの人々の生活の中にヒントがあると思う。物質的にほどほどの生活。食足りても電化製品や車など嗜好品は非常に高かった。見知らぬ外国人と寮で数日会話しただけで、自宅に招いてくれた。ホスピタリティは驚くほど良かった。また困った時には助け合う互助の精神を彼らの中に見た。
 物質的、精神的な豊かさが調和してこそ前向きな気持ちになると筆者は信じる。
 
 (写真はPublic domain)