英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

希望の党の小池代表はポピュリスト政治家か? 党の設立に思う

2017年09月28日 17時36分36秒 | 日本の政治
チャーチルは言う。「指導することは容易いが、強制することは難しい」。この発言は、20世紀の偉大な英宰相が社会主義国家を糾弾する際に述べた言葉だ。しかし、現在の日本では、「指導することは容易い」と発言できる政治家が何人いるだろうか。指導することができない政治家があまりにも多い。
 大多数の政治家は大衆の風に翻弄され、自分の意見も哲学もなく、ただ議員の地位にしがみつくだけだ。
 昨日、新党「希望の党」を立ち上げた小池百合子・東京都知事にも言える。自民党との対立軸として、新党を創設したことは、国民にとり歓迎すべきことだとは思うが、何を目指す党なのかが明確ではない。ただ、彼女が「天才的な選挙請負人」ということだけは確かだ。メディアを最大限に上手く利用し、野党第一党「民進党」の混乱につけ込み、同党の人材と選挙資金を「希望の党」に注ぎ込むことをもくろんでいるとしか思えない。
  彼女は「改革保守」と主張するが、何を訴えたいのか理解できない。18世紀の偉大な英政治家で政治思想家のエドマンド・バークが唱えた「保守」の定義とも違う。「保守」の定義は現実への洞察と、それに沿った行動。先祖から受け継いできた自由と私有財産などを守ることである。中庸であり、現実に寄り添う改革である。
  小池氏は都知事として「アウフヘーベン」「ホイッスルブロワー(「内部告発者」(公益通報者)」「スプリングボード(ある行動を起こすきっかけとなるもの)(契機)」「パラダイムシフト (発想の転換)(固定観念を捨てる)」と難解な言葉を記者や有権者に語りかける。また、新党設立の会見では、「我が国を含め世界で深刻化する社会の分断を包括する、寛容な改革保守政治を目指す」と抽象的な発言をする。
 小池氏はキャッチフレーズが多すぎる。ポピュリスト政治家がよく使う言葉だ。大衆を煙に巻いているようにさえ見える。チャーチルは、政治家は易しい言葉を使い、有権者に自らの政策を訴えなければならない、と述べる。
小池氏は抽象論や難解な言葉でわれわれを煙に巻くが、それでも具体的な政策をいくつか打ち出している。そのうちで「原発ゼロ」の主張は、現実的に見て必ずしも賛成ではないが、明確に自説を説いた点では評価できる。しかし、消費税の引き上げには否定的なのはまったく評価できない。
 小池氏は「『実感が伴わない景気回復』を解決しなければ水を差す恐れがある」と引き上げには否定的だ。これから未来永劫、経済的に成熟し、少子老齢化の進む日本が「実感の伴う景気回復」はない。
  小池氏だけでなく、安倍首相や自民党も消費税を8%から10%に引き上げても、国の借金に返済する金の一部を子育て支援に回すという。これもまた大衆迎合政策だと筆者には思う。
  筆者は「子育て支援」に公金をつぎ込むことに反対しないし歓迎するが、日本にそんな余裕があるのか、と政治家に尋ねたい。「次世代に借金のツケを回す」というが、この言葉はまだいい方だ。次世代に借金を回す前に、日本が破綻する可能性が増している。
  たとえ経済停滞を招いても大幅な消費増税を実施し、そのかなりの部分を借金の返済に回し、残りは社会福祉につぎ込む。すくなくとも基礎的財政収支が均衡を達成しなければ、借金返済の見通しが立たない。
 このままの大衆迎合政策を続ければ、目に見える形で財政破綻がささやかれ始めるだろう。その声を聞くとき、国家と国民の財政破綻は不可避となるにちがいない。その後に来るのはハイパー・インフレではないのか。私のような素人でさえ理解できるシナリオだ。
 「次世代にツケを回す」と言っているうちに、政治家がリーダーシップを発揮し、国民を指導しなければならないと思う。大衆と有権者に迎合するだけではこの重大な問題は解決できない。
 来たるべき選挙で、国民に不人気な政策を真っ向から唱え、有権者を説得する指導力を持った政治家が一人でも立候補することを祈るばかりだ。そして有権者にもそれ相応の覚悟と勇気が必要だ。慧眼を持って長期的なビジョンを抱く政治家を国会に送り出すべきだ。ゆめゆめ雰囲気に流されて人気政党や党利党略政党に一票を投票すべきではない。ただ、ほとんどの党が党利党略政党なため、有権者は数学の難問を解くよりも難しい現実に直面していることも認める。詰まるところ、政治家その人から判断する以外にないのかもしれない。



20人目の子どもが生まれる  英国一の子だくさん家族

2017年09月24日 22時33分53秒 | 生活
 英国大衆紙「サン」や「ミラー」によると、英国一の子だくさん家族に20番目の赤ちゃんが生まれた。母子ともに元気だという。
  ノエル・ラドフォードさん(46)とスーさん(42)との間に生まれた赤ちゃんは11番目の男子で、名前はアーチーちゃん。妻のスーさんは「アーチーちゃんが最後。これ以上子どもを持つ計画はありません」と断言する。また「これからは子どもたちと楽しく暮らすわ」と笑顔で英国の記者に語った。
 パイ製造会社を営むノエルさんは、妻が9番目の子どもを身ごもったとき、避妊手術をしたが、子どもがもっとほしくなり、元に戻したという。
夫妻は19人目の子どもを授かり、これで終わりにしようと思ったが、友人や年長の子どもから「切りが良い20人目の子どもを持てば」と熱望され、「無視することができなかった」と話している。
9月18日に生まれたアーチーちゃんを除く、19人の子どものうち1人が2014年に亡くなった。18人の名前は、クリス(28)、ソフィー(23)、クロエ(22)、ジャック(20)、ダニエル(18)、ルークとミリー(16)、ケイティー(14)、ジェームズ(13)、エリー(12)、エイミー(11)、ジョシュ(10)、マックス(8)、ティリー(7)、オスカー(5)、キャスパー(4)、ハリー(2)、フィービー(1)。
長女のソフィーさんには現在3人の子供がおり、ノエルさん夫妻のフェースブックには今までに27万人のアクセスがあったという。
 筆者はこのニュースを英邦字紙「ニュース・ダイジェスト」で読み、英大衆紙「サン」「ミラー」を参考にして書いた。
 筆者の感想は想像をはるかに超えており、感想はない。掲載写真はアーチーちゃんが生まれる前に写したという。子ども19人(一人死亡)中17人が写っている。(サンからの転写)

なぜ日本人は現実主義者になれないのか  東アジア情勢に思う

2017年09月13日 09時37分15秒 | 東アジアと日本
 北朝鮮をめぐる米中露の駆け引きは熾烈を極めている。その渦中にあって日本の指導者だけが現実を見ていない。
 20世紀を代表する英国の宰相ウィンストン・チャーチルが1920年代半ば頃だったとおもうが、「諸君は現実を見なければならない。現実が諸君を見つめているのだから」という有名な言葉を議会で語った。
 現在の東アジア情勢はまさにそうだ。現実を見つめなければならない。そうするためには、相手を知らなければならない。相手国のリーダーのものの見方を理解しなければならない。政治は国内政治にしろ国際政治にしろ、所詮は相手が存在する。
 チャーチルが名宰相であった一つの理由は、交渉相手を徹底的に調べ上げ、相手国の情報を徹底的に探し求めた。合法、非合法を問わず、情報を重視し、当時の相手国ナチス・ドイツと、その指導者アドルフ・ヒトラーを見つめ続け、世界にドイツの脅威を警鐘した。
 今日、我が国の首相は現実主義者なのか。インターネットサイトを読めば、安倍晋三首相は、ジャーナリストの田原総一郎氏のアドバイスにより北朝鮮電撃訪問を画策したが断念したという。現在、中国訪問に執念を燃やしている。
 「その(訪朝)代わり、近々の電撃訪中を画策している。そのための布石を日中国交正常化45周年の行事にからめ、二階俊博幹事長にも動いてもらってます。本人は『媚中外交に取られようが、保守の俺だからこそできる。総理はリアリストに徹するべきだ』と周囲に吠えているようです」(政府関係者)
 何がリアリストなのか。リアリストは時やタイミングを重視し、国益にかなうと確信したときに動くのだ。
 安倍首相がプーチンと19回会おうが、20回会おうが、相手を理解しなければ国益どころか国家の不利益になる。ロシア人は力を信奉する現実主義者だ。
 安倍首相は情緒的で、相手と親しくなればお互いを信頼し合うことができ、すべてが上手くいくと考えている節がある。この考えは、典型的な日本人右派の考えであり、この中に、多分に情緒という国際政治には適合しない要素がある。
 首相は9月7日、ロシア・ウラジオストクで、プーチン大統領との3時間20分に及んだ首脳会談を行ったが、「実質的な意味はなかった」(外務省幹部)と散々な結果に終わった。
 安倍首相は暴発を繰り返す北朝鮮に対して制裁圧力を強めるよう働きかけたが、プーチン氏は「外交的解決しかない」と繰り返すのみで相手にしなかった。悲願の北方領土返還交渉でも海産物の養殖など共同経済活動について5項目を優先実施することで合意したのみ。これもロシアの利益になっただけで、日本には実質的に何の利益も与えなかった。プーチンに事実上してやられた。
 法的立場についてはロシア側の主権を譲らないプーチン氏になすすべはなかった。ロシア政治に関し国内第一人者の北海道大学名誉教授、木村汎氏は「事実上の門前払いの予想どおりの結果。安倍首相はプーチン氏が誰ひとり信頼しない、自分以外は全て敵という人生観を持ち、その時々の状況に便宜的対応をする二枚舌を使う並外れた天才であることをいまだにわかっていない。現状では領土を一島たりとも返す意思はない」と語る。
 筆者もそう確信する。プーチンだけでなく、ロシア人が既得権を返還することは永遠にない。日本がロシアの属国になれば、もしかしたら返還してくれるかもしれないが・・・。それでも「もしか」という疑問符がつく。
 筆者は自身の体験や勉強から、法の支配の伝統があり、約束や良心を重んじる国民だけが、日本人と同じように、相互信頼という前提にたって自ら保有していた既得権を返してくれる可能性がある。米国の日本への沖縄返還がそうだ。それでも、米軍基地を沖縄に置き、米国の国益を守っている。
 英国もそう。かつて英国は世界から「パーフィディアス・アルビオン(不誠実な英国」と呼ばれた。
 英帝国は国益のために「不誠実」に動いた。第1次世界大戦中、オスマントルコ帝国との戦争を有利に進めるため、ユダヤ人とパレスチナ人に、矛盾する約束をし、これが今日の中東紛争の起源になったのは有名な話だ。
 法治国家の伝統があり、約束を守る風潮がある国でさえ、国益となれば良心などかなぐり捨てるのだ。
 このような国は、たとえ嫌いな国や人間がいても、時がその国を必要とするのなら、持論をひっさげてその国を訪問し、その国の指導者と会談。「貴国の利益になるのだ」と粘り強く説得する。それが自国の利益になることを百も承知で、そう言うのだ。
 われわれ日本人は、交渉相手の信義を信じる傾向がある。こちらが誠意を示せば、相手も誠意を示すと信じている節がある。まず、われわれは、19世紀のドイツ宰相オットー・フォン・ビスマルクが述べた「相手の目から情勢を観察する」に徹しなければならない。そして、相手の国益を上手く利用して自国の国益を追求する。
 相手がいかに憎い敵でも、時が敵を必要と言えば、そうするのが大陸の国民だ。それは洋の東西を問わない。1939年8月24日、仇敵のナチス・ドイツと、社会主義国で独裁者スターリンに率いられた旧ソ連は手を結び、ポーランドを分割した。その時までソ連を仮想敵国としてドイツと日独伊防共協定を結んだ日本政府は「奇々怪々」と発し、混乱した。
 今日、安倍首相が思い込みの観念論や現実主義観ではなく、現実的な長期的戦略に基づいて、トランプ大統領から独立した見解を開陳すれば、中国やロシアの指導者も耳を傾けてくれるのではないかと思う。日本政府が現実主義に基づいた政策を立案することが何よりも大切だ。

(写真)勝海舟;幕末の名臣。彼ほど時の流れの変化を読みんだ現実主義者はいない。徳川幕府の臣下でありながら、時代の流れを考察して幕府の時代は終わったと確信した。だからこそ、政権を朝廷に返上し、徳川家の存続だけを考えた。江戸城を明け渡し、徳川の家を存続させるだけでなく、内戦を防いで欧州列強の日本植民地化の野望を断ち切った。もちろん国際情勢が日本に追い風だったという幸運もあったが、勝海舟なくして日本の独立はなかった。私は、幕末一の功労者は、西郷隆盛でも大久保利通でも坂本龍馬でもなく、勝海舟だと確信する。