英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

樹木希林さんは死して人間の生き方を教える       今朝の朝日新聞を読んで思う

2018年11月29日 08時58分22秒 | 時事問題
 ことしの9月26日付の私のブログに故樹木希林さんについて記した。一人の人間が亡くなってから人生観や生き方が分かり、それに感動することがある。希林さんはそのような女性だったかもしれない。29日付朝日新聞朝刊39面に「死ぬこと 誰かの心の中で生きること」のタイトルで希林さんについての記事が載っている。彼女は30年以上の友人との語らいの中で、彼女が到達した心境について書いている。
 江戸時代後期の高僧、良寬や、仏教の開祖、釈迦の言葉を通して自らの生き方を求め続けた希林さん。「うらを見せおもてを見せてちるもみぢ」「散る桜 残る桜も 散る桜」。また友人の何必館(かひつかん)・京都現代美術館長の梶川芳友さんが仏教の教え「独り生まれ、独り死し、独り去り、独り来る」を話すと、希林さんはこう返答したという。「絆も信じ過ぎるとお互い苦しくなる。弧の意識が人を育てる」
 中国の名宰相、諸葛孔明が戦陣で亡くなる直前、部下に自分が亡くなった後の撤退方法を伝授。部下が孔明の指示に従って軍を撤退させたおり、敵の名将、司馬懿仲達は追うどころか指をくわえて傍観していた。孔明の罠を恐れて自軍に攻撃を命令しなかった。後生の人びとは「死せる孔明、生ける仲達を走らす」と評し、孔明の偉大さを称える。生前に脇役が多かった希林さんは亡くなってから、主役のようにスポットが当てられている。彼女の厳しい生き方や人生観への賞賛の証なのだろう。まるでわれわれが亡くなった希林さんに走らされているようだ。
 夫の内田裕也さんに触れた言葉もあった。梶川さんに電話で「共演者と合わなくて。あー疲れた」と愚痴をこぼした。梶川さんは釈迦の弟子の一人、提婆達多(だいば たった)の話しをした。彼は釈迦にたてつき、困らせ、皆が彼を遠ざけた。だが釈迦は「役立つ人だけがいいのではない。困らせる人は己を磨く上で必要だ」と説いた。すると、希林さんは「くっくっ」と笑いながらこう言った。「そういえば提婆達多は、私にとっての裕也ね」
 内田さんは妻の手のひらで遊ばれていたのかもしれない。麻薬に手を染めたり、世間を騒がせることが多かった夫を達観して眺めていた希林さん。私には想像できないくらい心の広い人物だったと思う。
 私は20代前半まで心の中で芸能人を馬鹿にしていたところがあった。好きなことをして、わがままな生き方をしても世間から許される「芸人」と。しかし20代後半に英国に住んだ。シェークスピアを生み、名優を多数輩出した国。その国の大学で、芸術を教えている先生に出会った。彼女は「英国の女優や男優で、名優と呼ばれる人は、一般の人びとに生き方や人生観を教えているのです。人生の模範を示しているのです。そんな人が名優でしょう。俳優を馬鹿にしてはなりません」と私を諭した。私の見方は、それ以降変わった。
 名女優や名男優は声を出して自らの生き方を教えてはいない。ただ台本から先人の教えを受け、黙って自らの人生を作り上げ、それを実践して黙ってこの世を去っていく。希林さんもそんな名女優だったと思う。人は死してから本当の価値を他人に知らせしめるのかもしれない。

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差し迫る世界の危機を救える指導者が現れるのか    UNEPの地球温暖化報告書発表で

2018年11月28日 10時21分08秒 | 地球環境・人口問題
 外国人労働者受け入れ拡大に向けた「入管法案」の衆院通過の記事がきょうの各紙朝刊の一面トップを飾った。その影に隠れて国連環境計画(UNEP)の年次報告書が目立たなかった。しかし、その報告内容は憂慮を超えて危機感と表現できる内容だ。
 UNEPは27日、地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定(Paris Agreement)」で定められた目標達成に向けた進捗に関する年次報告書で、現状の温室効果ガス排出量と目標達成に必要な水準との差は広がり続けていると警告し、人類の生存が将来、危機に陥る可能性を示唆した。
 これまでの気温上昇幅はわずか1度だが、世界各地では大規模な森林火災や熱波、ハリケーンが増加の一途をたどっている。このままのペースで行けば気温上昇幅は今世紀末までにおよそ4度に達するとの予測もあり、科学者らは文明の基盤を揺るがす事態になると警鐘を鳴らしている。
 今年で9回目の公表となる「排出ギャップ報告書(Emissions Gap Report)」によると、パリ協定で掲げた温室効果ガスの世界全体の削減目標を、2度未満で現状の3倍、1.5未満で5倍に高める必要があると指摘。現在の目標のままでは今世紀末までに現在より平均3.2土前後上昇すると予測する。
 大規模な森林火災といえば、過去最悪の米カリフォルニアの山火事だ。2週間あまりでようやく25日に鎮火した。山火事の頻発は地球温暖化の証拠のひとつ。
日本でも、ことし7月下旬から8月上旬にかけて熱波が襲った。40年前には気温が35度以上になることはめったになかったが、今や気温が35度から40度に上昇するのは珍しくなくなった。この半世紀の地球温暖化は加速し、その深刻さが増している。
 だが、世界のリーダーは自国の利益と経済発展ばかりに目が向き、地球が破滅に向かっているのを知らんぷりしている。この問題は「だれもが危機感を抱いたときには手遅れになる」。そして温暖化で地球が滅びる前に、各国が生き残りのための戦争を始め、自滅する。私は人類の愚かさ故に、こんなシナリオを描き、危機感を強めている。古希を最近迎えた私にとり、孫やひ孫の不幸が目に映る。
 わたしは世界のリーダーが「馬鹿」なのか、それとも「自殺願望者」なのか分からない。特に米国のトランプ大統領にいたっては「地球温暖化など、この世に存在しない」と何度も主張する。本当にそう思っているのなら、愚かの極みの指導者だ。議論せずに政敵をツイッターでののしるだけ。指導者に値しない。
 20世紀の偉大な政治家ウィンストン・チャーチルは1925年5月の英議会で、「諸君は現実を見なければならない。現実が諸君を見つめているのだから」と述べた。政治家はもちろん理想を掲げることが大切だが、それを実現するためには冷厳な現実を友としなければならない、と大宰相は言う。そして「イエスマン」を信頼しなかった。通算20年間チャーチルの警護を務めたトンプソン警部は「チャーチルはイエスマンに割く時間はほとんどなかった」と述べる。
 トランプ大統領はチャーチルと真逆の人物のようだ。イエスマンだけを側近に置いている。自分に反対する人物を批判する。自国の産業を擁護するため、地球温暖化を軽視し、地球環境保護者の見解を批判する。地球温暖化などで世界はこれから危機に見舞われる可能性が強いとき、世界最強国のリーダーであるトランプ大統領の存在は日本人だけでなく世界中の人びとにとって不幸だと思う。一日も早く世界を率い、環境問題の解決に奮闘する指導者の出現を切望する。

(写真)米カリフォルニア州の森林火災

南西太平洋に食指を伸ばす中国 日本の中国侵略を謝罪せよ、と言う前に我々の大失敗を学べ

2018年11月27日 20時50分55秒 | 中国と世界
中国は今や「金の力」でアジア・アフリカ諸国を植民地化しようとし、その矛先は南太平洋に向かっている。かつて武力で西南太平洋を占領して石油を確保したが、あえなく当地への覇権を握ることに失敗した日本から教訓を引き出していないようだ。そして経済支援を強化して日本が果たし得なかった野望を実現しようと必死だ。
  こうした中国の野望に、オーストラリア(豪州)は危機感を強めている。かつて日本の南太平洋への武力進出に、英帝国の親分、英国に見切りをつけ、米国からの支援を仰いだときの状況に似てきたと感じ、日本より中国のほうが「利口で巧みな戦略」だと思っているだろう。
中国と豪州は豊富な海洋資源を持つ太平洋島しょう国への影響力をめぐって競い合っている。たとえばパプアニューギニア(PNG)。天然ガスなどの資源が豊富だ。中国はPNGに影響力を拡大している。モリソン豪首相は11月8日のシドニー演説で「太平洋は我々の地域や隣人というだけではなく、我々の家なのだ」と協調。太平洋諸国に最大30億豪ドル(21億8000万米ドル)の投融資を提供すると発表。同地域で影響力を拡大する中国をけん制する。
また豪首相はパラオやマーシャル諸島などに職員を派遣し、合同の演習や訓練を通じて防衛、安全保障でも関係を強化すると表明した。
  これに対し、中国は2011年以降、低利融資や援助に13億米ドルを投じた。太平洋地域で豪州に次ぐ資金供与国となった。
  中国の習近平主席は11月16日、アジア太平洋経済会議(APEC)が行われるPNGで、国交のある太平洋諸国8カ国の首脳と会談し、経済協力を通じて地域の関与を強める方針を打ち出した。「国際情勢がどのように変化しようと我々は良きパートナーであり、共同の発展を求めている」
  この一連の経済援助を分析する一部の西側諸国は中国が多額の債務を押しつけ、事実上の経済植民地にする恐れがあるとの懸念を強めている。
中国の甘言は高い利息を伴った経済支援による借金漬けとなる公算が大きい。コロンビアなどの中南米諸国は中国のこの甘言の意味に気づき始めている。マレーシアでは、最近首相に就任したマハティール氏は中国に依存する経済関係を見直し始めている。南太平洋諸国も対外債務がかさむ中国リスクを理解し始めている。
  三周遅れの中国が21世紀に最後の帝国主義として現れたようだ。西南太平洋諸国への伝統的な経済支援国ニュージーランドや豪州が再び米国の支援を得て、中国の脅威に立ち向かう。かつての豪州の敵だった日本の安倍首相は日本首相として初めてオーストラリア北部ダーウィンを訪れた。
安倍首相とモリソン豪首相が16日、旧日本軍によるダーウィン空爆の犠牲者を含む戦没者を慰霊する碑を訪れ献花した。地元紙「NTニュース」は「(北部準)州のライジング・サン」の見出しと一緒に、その掲載した。ダーウィン空爆に関する歴史家の寄稿も掲載、「われわれは決して忘れないが、許すことができる」との一文を添えた。
  南西太平洋をめぐって日米豪対中国の構図ができあがりつつある。太平洋戦争前夜、日本に対して米国、英国、中国、オランダが経済制裁の包囲網を敷いたときと同じなのか。少なくとも中国はそう考えるようになるのか。もし中国がそう考えるのなら、そう考える前に、日本の大失敗を学ぶことが先決だ。
中国は現在も太平洋戦争や日中戦争を持ち出し、日本に反省と謝罪を求める。謝罪を求める前に、日本の大失敗を学ぶべきだ。それは歴史に学ぶことでもある。豪州や米国などとともに日本軍と戦った英宰相ウィンストン・チャーチルは「過去をさかのぼって学べば学ぶほどいっそう将来を見通せるようになる」と語る。この至言を中国の習近平主席に贈る。
 
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JR新宿駅での日本人の心が民族主義に打ち勝つ  第1次大戦終結100年をめぐる仏大統領の演説を読んで

2018年11月18日 11時38分24秒 | 民主主義とポピュリズム
 「あの日、新宿駅にいた方たち、救急隊、病院の方々。見知らぬ私たちの命を守るためのお心遣いとお骨折りに心から感謝いたします」
 この手紙を朝日新聞社に送ったカナダ人はことし10月18日、JR新宿駅構内でてんかんの発作で倒れ、その場に居合わせた通行人の機転の利く働きで一命を取り留めた。
 カーター・ソープさんは通りがかりの医師と思われる日本人の女性から救急措置を受け、若いカップルが通訳を買って出た。その後、妻のリズさんに付き添われたカーターさんは救急車で近くの病院に搬送され、4時間にもおよぶ治療を受けた。その間、病院職員は何度も、何度もリズさんに夫の病状を説明。夜半にホテルに戻り、2日後にカナダに帰国した。夫妻は3週間におよぶ日本での観光旅行を楽しんでいた。
 この朝日新聞の記事を読み、伝統的な日本人の美点を感じた。代々受け継がれてきた互助の精神だ。言葉を換えれば協力の精神。これからも受け継いでいってほしい日本人の心である。
 世界から日本にやって来る外国人は、この心と美しい四季折々の風景と巧みの美を備えた日本建築に好印象を抱いて祖国へ帰っていくことだろう。
 この互助の精神、協力の精神が今や世界から消え去ろうとしており、ナショナリズムという魔物が徘徊している。トランプ米大統領や欧州諸国の極右政党の指導者、ブラジルの極右大統領らはその典型だ。ロシアのプーチン大統領の同じだ。
 アジアに目を移せば、フィリピンの大統領もそうだろう。また中国は共産党が一党支配を敷く独裁国家であり、東南アジアのカンボジアやアフリカ諸国の多くも民主主義社会から遠い。
 中国共産党政府の開発途上国援助は援助国の財政状況などにお構いなく自らの世界戦略だけに目を据えている。このため被援助国は中国の援助により借金づけに陥り、事実上、中国の衛星国となりつつある。それが中国の世界戦略であり、互助と協力精神からはほど遠い。
 フランスのマクロン大統領は第1次世界大戦終結から100年を迎えた11月11日、80カ国以上の首脳や国際機関代表をパリに招いて開いた式典で、「第1次世界大戦は100年前のことであると同時に、昨日のことでもある」と語り、ポピュリズムや自国第一主義が日々勢力を増している現在に憂慮を表明した。
 第1世界大戦前、欧州列強は帝国主義政策をアジア・アフリカで推し進め、植民地化に狂奔し、被植民地者を搾取した。この植民地争奪と排他的経済政策、そして国内での貧富の拡大がナショナリズムと自国第一主義を生み、セルビアの民族主義者がオーストリアの皇太子を暗殺、それが引き金となって将兵900万人以上と民間人700万人以上が死亡する大戦争に発展した。非戦闘員が有史以来初めて大量に亡くなった悲惨な大戦を踏まえ、戦後、国際協調の証として国際連盟が成立。しかし人類は懲りない性分なのかどうか分からないが、またしても国際協調が主義や理念、排他的な民族主義に打ち負かされ、第2次世界大戦に突入、数千万人の命が奪われた。
  マクロン大統領は世界の人びとに訴える。「第1次世界大戦後、我々の先達は国際協調による平和を目指したが、復讐心や経済危機がその後のナショナリズムと全体主義を生んでしまった」「自国の利益が第一で、他国は構わないというナショナリズムに陥るのは背信行為だ。今一度、平和を最優先にすると誓おう」「国際社会から身を引き、暴力や一極支配などに魅了されてこの希望を踏みにじるのは、間違いだ。そのようなことになれば、それは我々の責任だと、次世代は当然指摘するだろう」
 マクロン大統領は健全な民主主義制度と国際協調政策が損なわれていく世界の状況に危機感を抱いている。それは当然だ。
 カナダ人旅行者を助けたJR新宿駅構内の日本人の協力の精神と相手を思いやる気持ちを、日本社会と世界の人びとが持てば、マクロン大統領が憂慮するナショナリズムが衰退し、再び世界が国際協調の精神に立ち返ることになるだろう。私はそう願う。


(写真)第1次世界大戦終結100年の式典で演説するマクロン仏大統領

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韓国人と日本人の国民性の違いはどこにあるのか     英紙のBTS批判について思う

2018年11月13日 09時50分22秒 | 国民性
 世界的に人気を集めている男性音楽グループ「BTS(防弾少年団)」が原爆投下Tシャツやナチスの帽子を堂々と着用し、日本の被爆者団体や反ナチ監視団体などから批判の声が上がっている。また英国のリベラル系全国紙で主要紙の「ガーディアン」が11月12日付の記事で「BTSは日本とユダヤ人被害者に謝るべきだ」と述べた。これに対し韓国人や、他国のBTSファンから同紙に批判が殺到し、韓国政府も閣議でBTSに文化勲章を授与することを決めた。
 ユダヤ人大量虐殺の記録保存や反ユダヤ主義を監視するサイモン・ヴィーゼンタールセンターの米・ロサンゼルス支部の副部長アブラハム・クーパー氏は声明を発表し、それを「ガーディアン」が引用。クーパー氏は「過去を茶化し軽視している」と批判し「原爆犠牲者や被爆者をあざ笑うかのようなティーシャツを日本で着たのは、BTSが過去を軽蔑する直近の出来事である」と話した。
 またクーパー氏は2015年初めにBTSが発売した写真集に言及し、「BTSは、ユダヤ人の大量虐殺を実行したナチスの秘密警察SSを模した帽子をかぶった」と指摘、ベルリンのホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)記念館でのコンサートでもナチスのハーケンクロイツ(鉤十字)に似た旗を振ったと語った。そして「国連でのスピーチに招待されたこのグループは日本の人びととユダヤ人犠牲者に謝罪しなければならない」と結んでいる。
 これに対して韓国人はネットで「ガーディアン」を批判する。「ガーディアンはフェイク(虚偽)の情報に基づいて発表したのは確かであり、仕事をちゃんとしていない」「ガーディアンは知っているのか。われわれは1910年から45年まで日本の植民地となり塗炭の苦しみを味わった」「ガーディアンはこの数カ月嘘でたらめを並び立てている」
 また韓国政府は火中の栗を拾うことを知っているのか、それとも世界の動きなど眼中になく自らの路をまっしぐらに進んでいるのかどうかは定かではないが、BTSグループに文化勲章を授与することを発表。李洛淵首相は閣議で「外国の多くの若者が韓国語の歌詞で(BTSの曲を)歌うなど韓流を広めただけでなく、ハングルを広めることにも寄与してくれた」と評価した。
 韓国人のガーディアン紙やクーパー氏に対する批判に怒り心頭になった日本人はツイッターで「韓国文在寅政権は、まるで何かに憑かれたように、絶妙のタイミングでものすごい決定をする。韓国政府、異例の決定は解ったから、何かお祓いでもした方がいいのでは?」「わかった。それが韓国政府の見解やな。韓国政府がBTSに勲章を授与することを決めたというニュースを見てショックを受けました。間違えたメッセージを世界中に送ることだと思います。韓国政府はナチスの被害者の方達がどう感じるかを考えるべきです」「韓国は……5歳児か。いやちょっと…引いた。原爆シャツ+ナチコスで日本にハネられた意趣返しがコレか…。日本人はがっちり『ナチコス+原爆シャツ=文化勲章=韓国』と言う公式を全世界に喧伝しよう」

● 「恨」と「小中華」思想に支配されてきた韓国・朝鮮民族
 この日韓の若者らの180度違った発言から見えてくるのは何だろうか。
 洋の東西を問わず人間は感情的で情緒的だ。しかし欧米人に比べ、日本人や韓国人(アジア・アフリカの人びとも)は、程度の差こそあれ、この傾向が欧米人より強い。平均的な日韓両国民は論理、分析、合理思考力が弱い。これらの上に立って物事を判断しない傾向がある。そして日韓両国民は「美」を感知する感覚的な国民だ。「情緒的」だともいえる。西洋人の基盤になっている西洋科学思想から生まれる合理主義者ではない。ただ韓国人の考えの基には日本人にはまったくない「恨」がある。
 私は「恨」の概念を十分に理解してはいないが、韓国人の心には「自らが望むかくあるべき」という概念があるという。これは「法律」を超越する概念だ。「かくあるべき」だということが達成できないと、「嫉妬や羨望、恨み、悲しみ、怒りなど様々な感情」を内包し、諦めと同時に終わりの無い感情になるという。「羨望や恨み」はコンプレックスであり、それをバネにして困難を克服する力にもなる。
 「漢江の奇跡」と言われる韓国の経済発展の大きな原因の一つは、日本のかつての植民地への贖罪意識による経済・財政支援だった。冷静な目で見れば、それは客観的な事実なのだが、「韓国の経済発展は日本の経済支援のおかげ」というと、韓国人は「恨」からわき出てきた「努力」「奮闘」を否定されたと考えるのだ。自らの努力を否定されたと思い込むのだ。
  また、韓国人の日本人に対する潜在的な優越意識も日韓関係を複雑にしているようだ。彼らは自らを「中華圏」に属するという伝統的な優越意識がある。日本は中華冊封圏(属国)の外にある。日本人は中国の歴代皇帝の帝朝に朝貢し、支配されたことは一度としてない。13世紀後半、元(中国を支配したモンゴル帝朝)のフビライ皇帝が2度、日本を侵略しようと博多(福岡)に来襲したとき、鎌倉武士は勇敢に戦い、台風の援護もあって撃退した。
 これに対して、朝鮮半島(韓国と北朝鮮)はどうか。13~14世紀の高麗のように、勇敢に中国(元)と戦った王朝があったが、1392年に成立した李氏朝鮮は1910年に日本に併合されるまで、中国の明、清の朝貢国(属国)となり、中国に認められることで独立を保った。
  中国の明、清王朝はベトナム、チベット、ビルマ(現在のミャンマー)、シャム(現在のタイ)などをも朝貢国にしたが、ビルマのように10年に一度、中国へ朝貢使節を送ればよい国もあれば、李氏朝鮮のように1年に1度(ひどいときは1年に4回のときもあった)朝貢使節を送る王朝もあった。中国の歴代の皇帝は属国との力関係で朝貢の回数を決めたという。
  李氏朝鮮(1392~1910)はそれを恥じるどころか、自らを中華圏に属する文明人だと自負し、日本人は中華圏の外にいる「蛮族」だとさげすんだ。そして中国で、漢民族の「明帝国」が1644年、李自成の乱により滅ぼされ、異民族(満州族)の清帝国が成立すると、李氏朝鮮は自らを「正当な中華(漢族の明帝国)の後継者」だと考えるに至った。この理念は、潜在意識の中にあろうがなかろうが、脈々として今日まで韓国・北朝鮮人に受け継がれているという。「小中華」思想が韓国・北朝鮮人の中に現在も脈打っていると分析する朝鮮半島の専門家は多い。
 読者は21世紀にもなって「何が中華圏だ」というかもしれないが、それは長い伝統に根ざしている。自己の優越性や正当性の証明手段として「他者の劣等性を指摘すること」を何よりも重要とする価値観を韓国・朝鮮人は持っている。だから「恨」と「小中華思想」が背景にあると、「いかにして相手の劣等性を指摘して引き摺り下ろすか」が不満の解消行動となる。
 他民族や他国の人々が韓国の問題点を指摘すると、問題を指摘した側の問題を指摘し返して、その事だけにしか目が向かなくなる。「相手も同じだ、どっちもどっちだ」と強引に、非合理に相対化して問題点を打ち消そうとする行動をとる傾向が強い。これも広い意味では「恨」の根ざした不満解消行動の一種なんだろう。
  自身の劣等性が指摘されたと考えるので、そこに恨を感じて「自分が上に登れないなら相手を自分と同じ位置かそれよりも下に引き摺り下ろそう」という発想になる。
  元徴用工問題や日本政府による対韓輸出規制強化からわき出ている文政権や韓国メディアの「恨」や「小中華思想」の典型的な例は「放射能カード」だ。福島など8県産の水産物の輸入禁止措置を続けている文政権が、福島第1原発の事故の汚染水処理を日本政府に持ち出し、「汚染水処理の結果が両国民の健康と安全、さらに海でつながる国全体に与える影響を非常に重く認識している」「国際社会にも計画や対策をより透明で具体的に説明するように」と「命令口調」で伝えている。また韓国メディアも執拗に国内に「汚染水問題」を報道している。
 韓国政府やメディアは「他者の劣等性」や「弱み」を指摘して自らの不満を解消し、中華圏外の”蛮族”日本への優越感に浸り、「被害を受けている」と文句を言っているかのようだ。これは明らかに「恨」に由来する。
 一方、日本人は不満解消行動の一種である「恨」を抱く韓国人に対して「言いがかり」を受けたと怒るだろう。「放射能カード」と対韓輸出規制強化とは別次元の問題で、関係ないではないか、と多くの日本人は怒り心頭になるだろう。
 日本人と韓国人は感覚的で情緒的な感情は同じだが、日本人には「恨」はない。たぶん、700年もの間、日本社会を支配した武士階級の精神が根付いていると思われる。中国を範にした貴族を倒した武士は、13世紀前半の「御成敗式目(貞永式目)」から江戸時代にかけて「法秩序」を敷いた。それが支配者本位の「法」ではあったが、武士階級は「喧嘩両成敗」などの「法」に基づいた社会を築き上げていった。また、堂々と戦う、卑怯な戦い方をしない、フェアー精神などは、武士によって育まれていったと思われる。それが、日本人の情緒や感情一辺倒を押さえ、明治以降の西洋合理主義精神の流入とともに、それが日本人に受け入れられていったのではないだろうか。たとえ消化できなくても、受け入れられていった。
   だからこそ、日本人は、朱子学から来る「自らを絶対善」と信じて疑わない韓国人よりもまだ冷静で観察的な眼識はあると筆者は感じる。BTSを擁護している韓国人はクーパー氏の提起と「ガーディアン」のBTSへの批判を、「恨」を土台にしながら日本の植民地や慰安婦、旧徴用工問題と結びつけ、感情に任せていることが十分にわかる。この二つの問題の本質は違う。
 植民地問題と被爆者問題を関連させれば、日本の植民地政策は「悪」だから、広島・長崎の被爆者は当然の報いを受けたと言うことになる。原爆の非人間性を無視したことになる。歴史の現在と過去の違いをも無視することになる。韓国の若者や人びとが、「恨」感情に縛られ、歴史が織りなす複雑な彩りを理解しようとしないのなら、自己中心的な「5歳児」のものの見方だと感じる。

  ●西洋の合理精神と武士道・騎士道
 「ガーディアン」やクーパー氏はBTSグループの姿勢を批判しているが、日本の対韓国・朝鮮植民地への考え方を吐露していない。あくまでこの問題に限っての発言である。日本の植民地問題を切り離した冷静沈着で観察眼に富んだ客観的な発言である。
 また英国紙は英国人の冷徹な事実優先主義と欧州人の「合理主義的」なものの見方を貫いている。しかし「恨」の感情や観念のみに支配されている人びとにとっては不条理で主観的だと考えるのだろう。この問題は歴史に育まれた日韓の国民性を如実に表している。自分の窓と敵対する相手の窓の両方から事実に基づいて観察してこそ、過去に対するより公平で客観的な判断ができる。韓国人の多くはそれができないのだろうか。
  韓国人は自己主張が激しい。それは悪いことではない。ただ、政敵や敵対する民族へのいたわりも必要だ。それがあってはじめて政敵を公平に扱い「敵ながらあっぱれ」という言葉が出てくる。
日本の戦国時代、徳川家康は真田幸村にさんざんにやられ命を落としそうになりながら、彼の武勇を褒め称えた。また英国史を紐解くと、ナチ党とナチス・ドイツを人一倍憎んだウィンストン・チャーチルはナチスドイツの知将アルビン・ロンメル元帥が国際法を遵守し、知略の限りを尽くして北アフリカの英軍に善戦したことを英国議会で絶賛した。この賞賛はそれぞれ「武士道」や「騎士道」からくるものだろう。
 これに対して、韓国人は水の中で溺れそうになっている政敵や憎むべき相手をさらに棒で叩く、と中韓の知識人は歴史を紐解いて解説する。あまりにも敵への「恨」が強く、自己中心的な感情になるのだろう。

  ● 韓国社会を縛ってきた朱子学は近代国家の概念を否定
  もう一つ韓国人(北朝鮮人を含む)のものの見方や思想に特徴的なことを述べたい。それは、600年以上にわたって朝鮮半島国家(韓国と北朝鮮)をがんじがらめに縛ってきた儒教だ。「こうあるべきだ」と最初から決めてかかり、事実を見ず、論理的な思考方法に乏しい平均的な朝鮮半島の大衆には儒教は打って付けの学問なのかもしれない。
  孔子が唱えた儒教の流れから11世紀頃に中国で生まれた朱子学に目を向けたい。中国の朱子学は李氏朝鮮の時代に、支配者階級の両班によって朝鮮社会に不動の地位を得た。朱子学が支配者を正当化したからだ。
  それは、西洋が1648年のウェストファリア条約以来、育んできた「国家(State)」の概念を否定している。紀元前、中国の孔子が唱えた儒教は形骸化し、権力者を擁護する朱子学へと変貌し、繰り返すが、それは権力者を正当化し、絶対化する。
   朱子学の精神は、王朝や国王が変わればすべてが変わり、前の王朝や国王ないしは側近の政治を否定する。少なくとも、1492年に李成桂により開かれた「李氏朝鮮」から受け継がれている。1910年に日本に併合されるまでの約400年間続いた。その間、日本では室町、戦国、安土桃山、徳川、明治と5時代が交代した。この李氏朝鮮400年の時代をひとくくりで要約すれば、腐敗と国王側近や親族の権力独占、凄惨な権力闘争に伴う容赦ない殺戮だった。国王が代わりたびごとに、前国王の側近や国王の親族は毒殺される凄惨な歴史だ。日本史には徳川幕府でも室町、鎌倉幕府でもこんな凄惨な事件は数えるほどしかない。
 儒教という「窓」から朝鮮半島の歴史を観察すれば、1945年に日本から独立してから現在に至っても、政権が変われば、新しい政権は前政権をすべて否定する。初代大統領の李承晩から前大統領の朴槿恵氏まで、ほぼすべての大統領が亡命、暗殺、自殺、そして何らかの罪で法廷に引きずり出され、徹底的にたたかれる。もちろん歴代大統領自身やその親族が権勢を利用して不正蓄財をしたことは事実なのだが・・・。つまり罪にあった罰を受けず、過酷な状況に置かれるのだ。朝鮮半島の北半分を支配する北朝鮮の最高権力者は、李氏朝鮮と同様、世襲の独裁者(国王に同じ)が君臨してきた。
   朝鮮半島では、日本の植民地時代を除いて、王朝の国王や1945年以降の共和国の大統領が絶対的最高権力を保有し、その上に君臨する国家(近代国家と言い換えることもできる)が実質的にない。最高権力者の上に国家や法律があれば、政権が変わろうとも、国家は継続する。具体的にいえば、政権によって結ばれた国家間の条約は、政権が変わろうが、国家が引き継いでいく。
  しかし、韓国の元慰安婦のために日韓両政府が設立した基金にしても、これにかかわった朴槿恵前政権から文在寅現政権になると、いとも簡単に破棄する。1965年当時の政府(朴正煕政権)が結んだ日韓請求権協定で、元韓国人徴用工の賠償は韓国政府が責任を持った。日韓両政府は日本がこれを国家賠償の中に含むことに合意した。しかし、文現政府はいとも簡単にちゃぶ台をひっくり返した。これらの例は、韓国には「近代国家の概念」が存在しないことを図らずも証明した。
なぜ、新しく誕生した政権は前政権を全否定するのか?それは儒教に由来する天命思想と易姓革命だ。天が支配者が腐敗して支配者能力を失うと断じれば、新しい支配者を据える。天が支配者が人民の支持を失えば、人民に支持された新しい支配者を遣わす。徳を備えた新しい支配者は、天の差配により、腐敗した前の支配者を倒し、すべてを否定する。そこには法が入り込む余地はない。儒教に支配された朝鮮半島の人々は今日まで、意識するしないにかかわらず、儒教の絶対善に基づく自己正当化と他者絶対悪という伝統的なものの見方を持っていると思われる。
  中国人から日本人になった評論家の石平氏は「韓国と関わるな」とツイッターで主張している。石平氏の発言の多くは賛成しかねるところが多いが、この発言については即座には否定できない。心情的には関わらないことが一番の良策だろうが、通信革命が進行している現代では、韓国との鎖国は非現実的。そうは言っても価値観が全く違うやっかいな隣人だということを認めざるを得ない。
 日韓国民の真の和解は永遠にないのだろうか。日韓の歴史や文化があまりにも違う。国民性は全くといってよいほど違う。ものの考え方も違う。韓国人が政敵に対して寛容の精神(チャーチルがよく生前話したこと)を育まなければ、日本人が韓国人の態度や姿勢に寄り添うだけでは日韓が抱えている困難な問題を解決できない、このままでは永遠の溝が鉄路のようにどこまでも平行して続く。

  ●日本人は過去を忘れやすく、全体の一部を全体と思い込みやすい
 私は「恨」の観念を抱く韓国人のものの見方や国民性を批判したが、日本人にも問題がある。韓国人(や中国人)の多くは歴史を自分の都合の良いように歪曲するようだが、日本人は過去を忘れる傾向がある。言い換えれば、水に流す。「武士の情け」という情緒的な寛容さである。歴史を学ばない点では日本人、韓国人(そして中国人)は同じだ。歴史を学ばなければ、現在と将来において、何かを決断するとき、その一助は体験だけと言うことになる。
 「日本国紀」に関わった右派の知識人の百田尚樹氏にしてもジャーナリストの有本香氏にしても日本の歴史を自ら好きなように解釈し、素朴な日本人大衆を嫌韓に向けて煽っている。振り子のように大きくぶれる日本人の国民性もある。
  1980年代、元朝日新聞の本多勝一氏ら左派の言論に心酔した日本人は今や右へと大きく舵を切っている。そこには30年前と同様、冷徹な観察眼や判断がない。
 百田氏や有本氏は1950年代半ばから60年代前半に生まれ、戦争を知らない世代だ。親も戦場へ行った世代ではないだろう。日本の歴史をことさら美化し、現在の体験から生じる感情を吹き出している。
 体験でしか過去を学ばなければ、世代ごとに過去は分断される。ひとつの世代の人びとが死に絶えれば、後の世代の人びとは死に絶えた世代から何も学ばないことになる。「賢者は歴史に学び、愚者は体験に学ぶ」と19世紀のドイツ帝国の「鉄血宰相」オットー・フォン・ビスマルクは語っているではないか。
 日本帝国陸軍は、有史以来最も悲惨を極め、初めて市民(銃後)を巻き込んだ第1次世界大戦に参戦しなかった。欧州を舞台とした初の総力戦を日本陸軍は体験しなかった。またその歴史を研究した軍人指導者はごくわずかだったという。
 太平洋戦争を指導した東条英機陸軍大将ら陸軍軍人指導者の99%は悲惨な日露戦争を知らない。日本陸軍将兵の屍で埋め尽くされた日露戦争の激戦地「203高地」の戦いに参加していない。太平洋戦争の陸軍指導者の大多数は日露戦争直後に陸軍士官学校に入学した。「歴史に学ばないこと」も悲惨な太平洋戦争を始めた一因かもしれない。

 ● 日韓の支配者と両国民は対立概念で分析し判断を
 21世紀に入り、太平洋戦争を体験しない世代が日本の全人口の大半を占める。あまりにも「恨み」が強い韓国人の「理不尽とも思える」厳しい対日姿勢、中世から近世の封建的な専制君主政治と核・ミサイルを保有する北朝鮮、共産党の一党独裁体制を敷く中国の台頭や強権政府を持つロシアがわれわれの前に立ちはだかる。
 われわれは感情的にならず、客観的な姿勢で過去を学び、「自分の窓」と「相手の窓」から物事に対峙しなければならない。BTS問題のプリズムを通して見た韓国人(や中国人やロシア人)にもそうあってほしいと願う。
  日本人も韓国人も前方だけを見て自分だけが正しいと考え、過去を「白黒」でしか判断しない「ものの見方」になってはならない。感情や情緒を優先して主観的な歴史をつくり上げてはならない。歴史を「正しい」「反省」「間違い」などと、最初から二面構造に基づいて分析するのではなく、できるだけ客観的な事実(史料)に基づき「対立概念」で、論理的な、分析的な思考力を駆使して真実を見いだす努力をしてほしい。人間がつくりあげる過去は複雑そのものであるのだから。英国で半世紀前に「保守とは何か」「データを駆使して論理的、分析的な思考」を学んだ私はそう思う。

(注意)2019年7月24日と8月25日に加筆しました。

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