英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

将来の不安を隠せず    韓(朝鮮)半島と日本をめぐって

2017年03月11日 10時08分59秒 | 東アジアと日本
 私的な忙しさにかまけているとブログを書くことがおろそかになる。一カ月たった。歳月は人を待たない。最後にブログを書いたのが2月13日。その間に時は変化し、世界と日本の状勢も変わる。当然といえば当然だ。
 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の創始者、金日成主席の直系の孫の金正男が先月13日、マレーシアのクアラルンプール国際空港で猛毒「VX」により殺害され、昨日は韓国の憲法裁判所が朴槿恵大統領を罷免した。大衆の弾劾訴追を受けた結果だった。
 前者は、独裁専制国家の北朝鮮が深く事件に関与しているという。後者は、目の前のことしか考えない大衆の愚かさをさらけ出した。それは民主主義の弱点だ。
 マレーシア警察のカリド警察長官は昨日、遺体が正男氏だと発表した。しかし遺体の確認方法は明らかにしなかった。正男氏の親族の安全と、親族の安全にかかわった国々への配慮だろう。そこまでしなければならない異常さには驚きを禁じ得ない。
 北朝鮮の独裁者、金正恩・労働党委員長は異母兄の殺害を部下に命じたと言われている。彼の母親は在日朝鮮人。北朝鮮社会が血統を重視するところから見て、後継者としての正当性が弱い。
  江戸時代にたとえれば、正恩は金正日が側室に生ませた子どもであり、金正男氏は正室の妻に生ませた子どもだ。正恩は正当性を気にかけ、盤石な権力を築こうとして異母兄を殺したのだろうか。
 独裁者は孤独で猜疑心が強い。権力を保持するためにはそうせざるを得ない。まさに1392年から1910年まで韓半島を支配した李氏朝鮮の姿そのままである。韓流ドラマの時代ものに描かれる姿である。
 韓国の朴槿恵政権は、約4年間で幕を閉じることになった。韓国で大統領が国会の弾劾訴求で罷免されるのは初めて。大統領が刎頸(ふんけい)の友、チェ・スンシル被告の利益供与にどこまで便宜を与えたのか。それは定かでないが、大統領に責任がないとは言えない。とはいえ、そのことだけに目を向けていると、時の流れが思いもよらない方向へ向かうのは必定だ。
 朴大統領が経済の構造改革を進め、社会の分断や格差などの問題に挑んできたが、ほとんど成果を上げられなかった。そして彼女自身が招いた弾劾問題が韓国社会の亀裂を拡大させている。
 第2次世界大戦で自由と民主主義を死守した英国の宰相ウィンストン・チャーチルは大衆の愚行とポピュリスムについて1931年6月19日にオックスフォード大学の学生にこう述べた。「大衆は遠い将来の利益よりも目の前の損得に固執する傾向が強く、それがポピュリズムを引き起こす」。チャーチルの言葉は時代を越えてわれわれの心に響く。
 日本人にとって金正男氏殺害や朴大統領罷免がそれぞれの国だけの問題なら、「対岸の火事」で済ませられる。だが、そうではないところに大きな問題がある。
 台頭する独裁国家、中国が対韓、対朝鮮問題に大きな影響を及ぼしている。中国はもはや理論的な共産主義国家ではない。資本主義市場経済を基盤とした独裁国家である。国家と党が国民の未来を決定し、国策に基づいて国民を動員。自由と民主主義を否定した独裁国家である。
 韓国の大統領選挙で、最大野党「共に民主党」の文在寅前代表が支持率で独走している。彼が大統領になれば、中国や北朝鮮への宥和政策を進め、日本に対して強硬な態度に出てくるだろう。どこの国のリベラルや左派も現実を直視しないで、理想を追い求める。文候補も例外ではない。
 韓国の次期政権は、ソウルの日本大使館前や釜山の日本領事館前に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の撤去をめぐる日韓合意の見直しを求めてくるにちがいない。さらに韓国民の日韓併合をめぐる過去の歴史への感情的なまでのこだわりが東アジアの事態をさらに悪化させるだろう。
 一方、台頭する独裁国家、中国が対韓、対朝鮮に大きな影響力を及ぼしてくるだろう。中国を支配する共産党はアジアをも支配しようともくろんでいる。韓国国民の感情と中国共産党の野望は将来の日本の安全を揺るがす事態になりかねないと思う。
北朝鮮の”ならず者国家、”中国やロシアの”強権野望国家”、”広い視野から時局を観察できない民主主義国家”の韓国に囲まれた日本国民はある意味では不幸である。ただ、日本国民が国政を任せた政治家の多くは自分の意見を持たず、リスクを取らず、ただ有権者に迎合して政治家の椅子に固執している。
 現在の東アジアの状勢の中で、日本が独立を守るには、大胆な発想と勇気が必要である。米国にも遠慮せず、自分の意見を述べる日本でありたい。もっと具体的に言えば、日本の政治家が与野党を問わず、大胆で、それでいて合理的な政策を打ち出してほしい。決して大衆のすべての意見が正しいとは思ってほしくない。有権者に迎合してほしくない。有権者の見解に耳を傾ける一方、有権者に持論を述べ説得し、リーダーシップを発揮してほしい。
 一方、日本国民は目の前の小さな損得に左右されずに、遠い将来を見つめて貴重な一票をリーダーシップを発揮する政治家に投じてほしいものだ。大衆の目の前の損得に左右されない政治家を選んでほしい。