アメリカ海軍の第1空母打撃群が明日中に朝鮮半島近海に到着し、朝鮮半島はかつてない緊張に包まれている。嵐の前の静かさなのだろうか。
シリアのアサド政権が化学兵器を反政府地域に打ち込み、子どもや赤ちゃんまで殺害したのを受け、米国が59発の巡航ミサイルをシリア空軍基地に撃ち込んだことが、朝鮮半島状勢を悪化さ北朝鮮を疑心暗鬼にさせている。
朝鮮半島が緊迫しているのにもかかわらず、日本国民はその緊張を肌で感じていない。70年以上も戦争を経験していない日本国民がそう感じるのも無理はない。第1次世界大戦から約20年間の平和を享受した英国人もそうだった。
1939年9月1日に第2次世界大戦が始まった後でさえ、英国民は戦争を自分らの問題とは考えなかった。戦争が始まって9カ月後、ナチス・ドイツ軍がフランスを蹂躙し、英仏連合軍がダンケルクから英本土に退却、チャーチル首相が6月4日に議会で「英国は決して降伏しない。ひとりになっても戦い続ける」と述べて初めて、戦争は英国民とって最大の関心事になったのだ。筆者は日本人が「朝鮮半島問題を最大の関心事」にならずに済むことを祈るばかりだ。
時は日々変化している。朝鮮半島問題の直接のプレーヤーは日本でも、北朝鮮の脅威を最も身近に受けている韓国でもない。直接のプレーヤーは米国と中国であり、もちろん北朝鮮である。
米国のトランプ大統領は商売人だとつくづく思う。昨日、ロシアと仲が良いように見せれば、今日は100年の仇敵のように振る舞う。中国に対しても、為替操作国だと非難していたが、北朝鮮に効果的な圧力を加えれば「為替操作国とは思わない」という。長期的戦略に基づいて振る舞ってはいない。
一方、北朝鮮の若い指導者、金正恩は太平洋戦争当時の日本の軍部指導者と同じだ。日本の軍部指導者が太平洋戦争前夜、日々強まる米国の経済制裁から米国が攻めてくると信じ込み、ハワイ・真珠湾を奇襲して13倍(軍部は日米国力差を1対20とみていたが、戦後、正確には1対13だとわかった)も国力が違う米国に敗北した。東条英機首相は当時、米国民の孤立主義やルーズベルト大統領の「ヒトラー・ドイツ政権打倒を最優先」する政策を理解でになかった。
金正恩・国防委員長も「ミサイルと核開発が米国との交渉を開く唯一の道だ」と信じ込んでいる。国力のすべてが軍事力だと思い込んでいる。
米国と北朝鮮の指導者に比べて、中国の最高指導者、習近平は現実主義者だ。ある意味、中国人の伝統である「権謀術数」に長けた人物であり、冷静に中国の国力を計算し、一歩一歩慎重に漸進している。「戦わずして勝利するは最上の策」は古代中国の兵法家、孫武の兵法書「孫子」の一説だ。
米国に協調することをいとわない。だからといってすり寄らない。12日の国連での「化学兵器使用を巡るシリアのアサド政権の調査」決議に棄権した。シリア問題に関する7~8回の決議に対してロシアに同調していたが、今回は棄権した。今まで協調していたロシアを一瞬で見捨て、米国に味方した。それは中国が米国の真剣度を理解し、米国に楯を突いても勝ち目はないと踏んだからだ。まさに戦略的な接近である。
長期戦略を胸に秘めた中国が現在、米国をなだめ、トランプ大統領に「協力」のシグナルを送っている。朝鮮半島をめぐるトランプ大統領の「独断」を押しとどめようとしているようだ。習近平や中国指導部にとって、朝鮮半島の安定は最も重視する国益だろう。北朝鮮が崩壊して韓国が朝鮮半島を統一し、韓国駐留米軍が中朝国境の鴨緑江まで来ることを恐れている。
中国は米国が長期的で潜在的な敵だと思っている。「偉大な中華民族の復興」にとって、米国が大きな障害だと知っている。しかし、米国の国力の足下にも及ばないことを理解する。軍事力では以前よりはその格差は縮まったが、半導体などの最先端技術では、ひじょうな遅れをとっている。国力が軍事力だけでなく、外交力、経済力、技術力、国民の民度・士気、地勢的な位置などすべての要素から構成されていることを理解している。
中国は朝鮮半島の安定化と米国との協力を目指す外交政策を当面追求するだろう。このような米中の思惑の中で、将来の朝鮮半島をどうするのか?
トランプ政権誕生を控えた昨年12月17日、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当国務次官補が、ひっそりと来日した。同氏はオバマ前大統領の幹部の中で、唯ひとりトランプ政権で引き続き仕事をしてきた。
ラッセル氏は日本政府首脳に「朴槿恵大統領の長年の友人で、権力を乱用したとして逮捕された崔順実は、北朝鮮出身者の娘だ。彼女は密かに北朝鮮と通じていた。このままでは、韓国が国家的な危機に陥るところだった……」と述べ、「金正恩は暴発するだろう。北朝鮮が暴発する前に、こちらから行動する。そして朝鮮半島を信託統治下に置く」と語ったという。要するに、米中ロの共同管理下に置き、三国が容認する北朝鮮の指導者を選ぶことだ。
中国がこの提案に乗ってくるのかどうかは疑問符がつく。共同管理下に置いたとしても、いずれ韓国主導の半島統一が交渉のテーブルにのってくる。そのとき、中国は拒絶するのは火を見るより明らかだ。
筆者は思う。唯一の恒久的な解決策は朝鮮半島の永世中立化だ。日米中ロが保証し、韓国が同意する。朝鮮半島を東アジアの「スイス」にしてこそ、非核化が実現され、日本が長年かかえている「拉致問題」も解決する。そしてなによりも、中国の国益が保証される。それは半島を永続的に緩衝地域にすることができるからだ。また、半島の中立化は平和を維持する観点から、日米の国益にも適う。韓国民にとっても平和を保証する道である。北朝鮮国民は独裁の頸木から解放される。
半島を恒久的な緩衝地帯にする保証をして初めて、習近平指導部が朝鮮半島問題の解決に真剣に取り組むようになると思う。それが半島を戦火に巻き込むことなく、北朝鮮の金一族の3代支配を平和裏に終わらせる唯一の道ではないだろうか。
シリアのアサド政権が化学兵器を反政府地域に打ち込み、子どもや赤ちゃんまで殺害したのを受け、米国が59発の巡航ミサイルをシリア空軍基地に撃ち込んだことが、朝鮮半島状勢を悪化さ北朝鮮を疑心暗鬼にさせている。
朝鮮半島が緊迫しているのにもかかわらず、日本国民はその緊張を肌で感じていない。70年以上も戦争を経験していない日本国民がそう感じるのも無理はない。第1次世界大戦から約20年間の平和を享受した英国人もそうだった。
1939年9月1日に第2次世界大戦が始まった後でさえ、英国民は戦争を自分らの問題とは考えなかった。戦争が始まって9カ月後、ナチス・ドイツ軍がフランスを蹂躙し、英仏連合軍がダンケルクから英本土に退却、チャーチル首相が6月4日に議会で「英国は決して降伏しない。ひとりになっても戦い続ける」と述べて初めて、戦争は英国民とって最大の関心事になったのだ。筆者は日本人が「朝鮮半島問題を最大の関心事」にならずに済むことを祈るばかりだ。
時は日々変化している。朝鮮半島問題の直接のプレーヤーは日本でも、北朝鮮の脅威を最も身近に受けている韓国でもない。直接のプレーヤーは米国と中国であり、もちろん北朝鮮である。
米国のトランプ大統領は商売人だとつくづく思う。昨日、ロシアと仲が良いように見せれば、今日は100年の仇敵のように振る舞う。中国に対しても、為替操作国だと非難していたが、北朝鮮に効果的な圧力を加えれば「為替操作国とは思わない」という。長期的戦略に基づいて振る舞ってはいない。
一方、北朝鮮の若い指導者、金正恩は太平洋戦争当時の日本の軍部指導者と同じだ。日本の軍部指導者が太平洋戦争前夜、日々強まる米国の経済制裁から米国が攻めてくると信じ込み、ハワイ・真珠湾を奇襲して13倍(軍部は日米国力差を1対20とみていたが、戦後、正確には1対13だとわかった)も国力が違う米国に敗北した。東条英機首相は当時、米国民の孤立主義やルーズベルト大統領の「ヒトラー・ドイツ政権打倒を最優先」する政策を理解でになかった。
金正恩・国防委員長も「ミサイルと核開発が米国との交渉を開く唯一の道だ」と信じ込んでいる。国力のすべてが軍事力だと思い込んでいる。
米国と北朝鮮の指導者に比べて、中国の最高指導者、習近平は現実主義者だ。ある意味、中国人の伝統である「権謀術数」に長けた人物であり、冷静に中国の国力を計算し、一歩一歩慎重に漸進している。「戦わずして勝利するは最上の策」は古代中国の兵法家、孫武の兵法書「孫子」の一説だ。
米国に協調することをいとわない。だからといってすり寄らない。12日の国連での「化学兵器使用を巡るシリアのアサド政権の調査」決議に棄権した。シリア問題に関する7~8回の決議に対してロシアに同調していたが、今回は棄権した。今まで協調していたロシアを一瞬で見捨て、米国に味方した。それは中国が米国の真剣度を理解し、米国に楯を突いても勝ち目はないと踏んだからだ。まさに戦略的な接近である。
長期戦略を胸に秘めた中国が現在、米国をなだめ、トランプ大統領に「協力」のシグナルを送っている。朝鮮半島をめぐるトランプ大統領の「独断」を押しとどめようとしているようだ。習近平や中国指導部にとって、朝鮮半島の安定は最も重視する国益だろう。北朝鮮が崩壊して韓国が朝鮮半島を統一し、韓国駐留米軍が中朝国境の鴨緑江まで来ることを恐れている。
中国は米国が長期的で潜在的な敵だと思っている。「偉大な中華民族の復興」にとって、米国が大きな障害だと知っている。しかし、米国の国力の足下にも及ばないことを理解する。軍事力では以前よりはその格差は縮まったが、半導体などの最先端技術では、ひじょうな遅れをとっている。国力が軍事力だけでなく、外交力、経済力、技術力、国民の民度・士気、地勢的な位置などすべての要素から構成されていることを理解している。
中国は朝鮮半島の安定化と米国との協力を目指す外交政策を当面追求するだろう。このような米中の思惑の中で、将来の朝鮮半島をどうするのか?
トランプ政権誕生を控えた昨年12月17日、アメリカ国務省でアジア地域を担当するダニエル・ラッセル東アジア太平洋担当国務次官補が、ひっそりと来日した。同氏はオバマ前大統領の幹部の中で、唯ひとりトランプ政権で引き続き仕事をしてきた。
ラッセル氏は日本政府首脳に「朴槿恵大統領の長年の友人で、権力を乱用したとして逮捕された崔順実は、北朝鮮出身者の娘だ。彼女は密かに北朝鮮と通じていた。このままでは、韓国が国家的な危機に陥るところだった……」と述べ、「金正恩は暴発するだろう。北朝鮮が暴発する前に、こちらから行動する。そして朝鮮半島を信託統治下に置く」と語ったという。要するに、米中ロの共同管理下に置き、三国が容認する北朝鮮の指導者を選ぶことだ。
中国がこの提案に乗ってくるのかどうかは疑問符がつく。共同管理下に置いたとしても、いずれ韓国主導の半島統一が交渉のテーブルにのってくる。そのとき、中国は拒絶するのは火を見るより明らかだ。
筆者は思う。唯一の恒久的な解決策は朝鮮半島の永世中立化だ。日米中ロが保証し、韓国が同意する。朝鮮半島を東アジアの「スイス」にしてこそ、非核化が実現され、日本が長年かかえている「拉致問題」も解決する。そしてなによりも、中国の国益が保証される。それは半島を永続的に緩衝地域にすることができるからだ。また、半島の中立化は平和を維持する観点から、日米の国益にも適う。韓国民にとっても平和を保証する道である。北朝鮮国民は独裁の頸木から解放される。
半島を恒久的な緩衝地帯にする保証をして初めて、習近平指導部が朝鮮半島問題の解決に真剣に取り組むようになると思う。それが半島を戦火に巻き込むことなく、北朝鮮の金一族の3代支配を平和裏に終わらせる唯一の道ではないだろうか。