英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

時を超えて思う  中国と帝政ドイツ

2013年11月30日 14時05分19秒 | 時事問題と歴史
 中国が設定した防空識別圏(ADIZ)はアジア各国に波紋を広げている。筆者の友人が「中国はトラブルメーカー。困った奴だなあ。これでは旧日本軍と変わらないではないか。旧日本軍を批判する資格はないね」と話していた。
 中国はこれから黄海や南シナ海に同様のADIZを設定するという。中国指導部、特に軍部指導者は米国と肩を並べたいようだ。
 中国に一定の配慮を見せている韓国も中国がこれからどんな行動に出るのか不安だと思う。中国が黄海の公海上に独自に設定している中国海軍の「作戦地域」をめぐり、韓国に対し海軍艦艇を入れないよう7月に要求し、韓国側が拒否したという。韓国紙、中央日報が30日、韓国高官の話として報じた。
 安全保障面では日本と緊密な連携をしたいと韓国政府は考えていても、日本にたいして「ニコニコ顔」はできまい。一方、日本人の韓国嫌いもよく聞く。かつて韓流ブームで韓国を旅行した人々の中には、「韓国嫌い」「朴大統領ぎらい」が多くなっているという。米国は日韓が団結して自国と協力し、中国をけん制してほしいと願っているが、そうもいくまい。
 日米各紙が報じたところによれば、米国務省は29日、米航空会社に中国が東シナ海上空に設定した防空識別圏(ADIZ)を飛行する際、中国側への飛行計画の提出を助言した。中国の防空識別圏を容認しないものの、民間航空機については安全に配慮する現実的な対応を取る必要があると判断したのだろう。
 国務省は声明で、中国の防空識別圏を批判し、米軍機は従来通り事前通告なしに飛行させる方針を強調したが、「米政府は国際運航する米航空会社は一般的に外国政府の航空情報に従うべきだと期待している」と指摘、航空会社に安全を最優先する姿勢を求めた。
 これに対して、中国政府は、防空識別圏を通過する航空機に対して飛行計画書の提出などを求めている。指示に従わない場合、武力による緊急措置を取る可能性に言及している。
 中国政府や中国人も、日本人に対して「歴史に学べ」と南京虐殺事件などで声高に叫ぶわりには歴史に学んでいない。
  第1次世界大戦の原因の一つは海軍軍拡だった。当時の帝政ドイツ皇帝ウィリヘルム2世は、海上帝国である大英帝国の海上支配を打ち砕きたかった。そのためしゃにむに海軍力を増強、そのはては第1次世界大戦の敗北と天文学的な賠償金を強いたベルサイユ条約の受諾だった。ドイツ皇帝の発想自体が19世紀的な発想だった。
  いまや21世紀。中国軍部指導者が19世紀的な発想をすれば、必ず将来つまずくのは必至。中国人や共産党、軍部はよく旧日本軍を非難するが、非難する前に、「日本軍国主義者」がなぜ滅んだのかを検証し、それを自らの未来に活かしてほしいものだ。そうしなければ、歴史の流れに逆行し、中国共産党や軍部も「日本軍国主義者」と同じ道をたどるのではないだろうか。
 


中国の防空識別圏と日本

2013年11月27日 17時23分59秒 | 時事問題
 新聞・テレビは中国の「防空識別圏(ADIZ)」問題を連日報道している。日米だけでなくオーストラリアや英国など欧州諸国も中国のADIZ設定を、国際常識に反する行動だと批判している。
 中国は尖閣諸島(沖縄県)の上空を含むADIZの空域を飛ぶ飛行機に対し事前に飛行計画の提出を求めている。しかし米軍機が26日朝、中国が求める飛行計画の事前提出なしでこの空域を飛行した。米国防総省が同日、明らかにした。
 中国国防省は、防空識別圏に関する指示に従わない航空機に対しては、中国軍などが緊急措置を取る方針を発表していたが、米軍機の飛行に対する中国側の反応はなかったという。
 米国防総省高官によると、米軍はグアムのアンダーセン空軍基地から2機の軍用機を飛ばした。米メディアによると、2機ともB52爆撃機。中国が主張している防空識別圏内を通過したのは1時間ほどで、数時間後に帰還した。
 一方日本経済新聞のインターネットサイトによれば、中国国防省は27日、米軍のB52爆撃機が中国の防空識別圏を飛行したことについて「中国軍は全航程を監視し、直ちに識別した」との談話を発表した。防空識別圏ですでに監視体制を敷いていることを強調したものだ。今後も中国の識別圏内を飛行するあらゆる航空機について監視していく方針も示した。
 中国はアドバルーンを上げて”敵”の出方を観察しているのだろう。一時的な行動ではなく、今までの外交・国防・軍事政策の一環としての行動だと思われる。米国や日本から批判されるのは計算づくでの行動だろう。何よりも中国はこのような「リスク」行動に耐えうる軍事力を備えてつつあるという自信を深めている。そう読んでまず間違いないと思う。中国軍部は、依然として米陸海空軍や米国の総合国力に対して中国が劣っていることを熟知している。ADIZを設定し、その既成事実を構築し、最終目的である自国の制空権をADIZに確立することにあると読める。もちろん領空とADIZの国際的な意味の違いを、中国軍部は理解しているが、最終的にはADIZを事実上領空化する狙いを持っていると踏んで間違いない。
 中国の夢は強大な海軍を建設し、アジアの覇権国になることにある。少なくともそう考えるのが妥当かもしれない。このためには中国沿岸港から自由に太平洋や南シナ海に出入りする必要がある。日本列島と台湾は太平洋に出入りするための妨害杭にほかならない。
 中国国営新華社通信などによると、中国初の空母「遼寧」号が26日午前、山東省・青島の基地を出航し、訓練のため南シナ海に向かった。昨年9月の就役以来、渤海や黄海を越えて南シナ海まで遠洋航行するのは初めて。
 26日付読売新聞は「東シナ海と南シナ海で、制海権・制空権を確保しようという習政権の動きは、日本だけでなく、南シナ海の領有権を争うベトナムやフィリピンとの関係も緊迫化させるのは必至だ」と述べている。
 米国と旧ソ連は「核兵器は人類を滅ぼす」という前提にって対立(米ソ冷戦)していた。米国と旧ソ連には共通の認識があった。ロシア人はヨーロッパ国際政治とのかかわりが少なくとも400年ある。長い外交上の交わりから、米ソは互いを理解していた。「これ以上は駄目」だという共通認識があった。米国と中国にはそれがあるのだろうか。文化やものの見方も違う。日本人と中国人のものの見方は同じアジア人でも違うところが多い。
 中国人に法を守れと言っても、「馬の耳に念仏」だ。筆者のブログを読んでくださっている読者ならその理由を理解していただけるはずだ。このような状況下で不測の事態が起こらないとはいえない。ただ、中国人は利にさとい。現実主義者だ。「相手より自分が弱い」と思うかぎりは無謀な行動に出ることはないだろう。この意味で日米の緊密な連携と、豪州や東南アジア諸国のとの協力が不可欠になる。
 このためにも政府の外交・安全保障政策の司令塔となる国家安全保障会議(日本版NSC)設置法の成立は必要だろう。また特定秘密保護法案も必要だろう。ただ、あいかわらず自民党は目の前のことにばかり気を取られて、拙速な形で特定秘密保護法案を成立させようとしている。国民の支持が不可欠だが、その支持も得られず、ずさんな特定秘密法案を成立させようとしている。長期的な視点に立てば、この法案を廃案にして、一から出直すほうが、結果として良い結果が得られるだろうに。どうもここでも日本人の欠点である忍耐力の欠如と視野の狭さが自民党と安倍首相に露見された。
 この中国の軍事優先の動きは、中国共産党が倒れないかぎり、続くだろう。この視点に立って安倍政権は国民の支持を得られる特定秘密法案をつくるため、現在の法案を廃案にして出直すべきである。それこそこれからの対中国政策にとって大きなプラスにあると思うのだが。
  
  

  

特定秘密保護法を感情で成立させるな  自民党案に反対 

2013年11月16日 11時19分35秒 | 時事問題
 特定秘密保護法案と教科書検定基準の見直しをめぐる新聞記事に注目している。もちろん特定秘密法案を必要としない世界が一番望ましい。だが、世界はいまだそこまで成熟していない。人間が世界を支配しているかぎり、特定秘密保護法案を必要としない世界はおとずれないだろう。この意味で外交や軍事で一定程度の国家秘密が必要だろう。
 かといって、今回、政府と与党自民党が出してきたこの法案に賛成はしない。反対だ。1年ぐらい前に『安倍自民党新総裁は「実りある犠牲」を引き受けることができるか』という題で「国民の安全と安倍氏の政治姿勢がどこまで現実的なのか、一抹の不安を感じる。観念的な政治家と情緒的な国民のハーモニーから生み出される外交的な雰囲気は危うい」と書いた記憶がある。
 特定秘密保護法案の内容を垣間見ると、どうも自民党の目からしか景色を眺めていないようだ。念頭に米国があるのだろう。筆者は米国との同盟が必要で重要だと思うが、この保護法案から安倍首相と自民党の姿勢がうかがわれる。一言でいえば、対中との絡みで米国を頼みとしているために、日本の機密はすべてそちらに渡します、と読める。受け身の国民丸出しではないかと思わざるを得ない。自国民は二の次なのかと言いたくもなる。安倍氏の最大の欠点は「情調」「感傷」「観念」的な思考だということだ。このため、客観的に観察できないようだ。何を機密にするか、いつまで機密にするか、政府や官僚の個人や団体に対する侵害を監視する公平で客観的な第三者機関を創設するなどの配慮が欠けている。この法案はあまりにも恣意的でずさんだ。
 安倍首相は「悪用されないようにする」と言っている。100歩譲って、安倍首相を信じたとしても、これから生まれてくる人間が悪用する可能性だってある。この可能性を秘めた法案を誰が保障するか。どうも首相は「歴史、歴史」と発言しているが、歴史の本質を理解していない。

極貧な生活から抜け出せない人々は世界に12億人

2013年11月14日 16時33分58秒 | 生活
 歳月はたつのが早い。もう1カ月が過ぎた。相変わらず、わたしのくだらない持論を読んでくださっている読者の皆様に感謝します。このひと月はプライベートでいろいろなことがあり、忙しかった。母が92歳になり、11月9日には母の住む街、浜松で誕生日を祝った。祝ったのはわたしだけ。当然と言えば当然な話ですが・・・。フランスレストランで母と食事をした。そこで見知らぬ親子から一輪の花を母が頂いた。最初驚いたが、92歳の母は心温まる気持ちになったようで、わたしもうれしくなった。日本人の優しさと心の温かさを感じた。われわれは失ってはならない心の宝だろう。
 こんな気持ちになれるのも、日本人が勤勉で、正直、努力の民族だからだと思う。そして豊かな生活をしている。日本社会を基準にすれば、生活が苦しくたいへんな毎日を過ごしている人々が何百万人もいることを理解しているが、世界にはわれわれが想像を絶する困窮の中で暮らしている人々がいることも忘れてはならない。
 フィリッピン国民は、100年に一度か二度来襲するかどうかわからない強烈に強い台風にやられ、何千人もの人々が亡くなったようだ。この国の経済成長はここ数年著しいものがあるが、それでも比国国民の生活水準は世界の中ではそんなに高くはないだろう。
 確かにこの30年間、極貧生活を強いられている世界の人々の人口は驚くほど減った。それでも7億2100万人の人々は1日に1.25ドルで生活している。日本円に換算して約125円。このようにAP通信は世界銀行が発表した報告書を報じている。米国で貧しいと定義される人々の生活は一日60ドルという。この数字だけ見ても、世界にはわれわれが考えることができない極貧な人々がいる。
 世銀によれば、約12億2000万人は極貧な生活から抜け出せないでいる。そのうち4億人は子ども。極貧に甘んじている3人に1人は13歳以下の子どもだ。国でいえば、バングラデシュ、ハイチ、チャド、ケニアなどだ。この国に住んでいる貧しい人々の生活を向上させなければ、世銀の目標である2030年までの「極貧撲滅運動」は成就しない。
 世銀は次のように報告している。「確かに中貧国ーパキスタン、ウクライナ、チリーの極貧な人々の数は1981年から50%減少した。また中国やインドの非常に貧しい人々も減少した。しかしそれとは対照的に35の低所得国の極貧人口の減少は大きく減らず、33%以下でしかない。最貧国の極貧人口は1億300万人も増えた。低所得国35カ国のうち26カ国はアフリカ諸国だ。開発途上国の極貧な人々の生活は30年前となんら変わっていない」
 極貧な中で生活している人々は自助努力だけではそこから抜け出せない。だからと言って自助努力もせずに「ぼんやり」と他人の援助だけを期待してもそこからぬけだすことはできないだろう。自助努力と援助がうまくかみ合えばよいのだが、そんなにうまくいくはずもない。どうして極貧から抜け出せないのか。多分、それぞれの国民の歴史の中に答えがあるのかもしれない。国民性の中に答えを見いだせるかもしれない。
 なぜ日本が豊かなのか。戦後の荒廃した社会と貧しい生活から日本人はなぜ抜け出せたのか。明治以来、欧州列強の植民地からなんとか逃れて、国力と見合わない背丈以上の地位を戦前に得て5軍事大国にまでにのし上がった。
 この解答は日本史の中にあると思う。しかし日本人ほど歴史に無頓着な国民はいない。日本人はもっと自国の歴史を紐解いて自らを見つめなおすべきだろう。そうしてこそ、地に足がついた援助を開発途上国の人々におこないことができると思う。