ロシアのプーチン大統領の命令でロシア軍が2月24日、ウクライナに侵攻して1カ月がたった。この戦争はプーチン自身が持つロシアの歴史観や世界観が引き金になったことは明白だ。一方、この1カ月、日本の評論家はテレビやラジオでこの戦争について持論を述べている。その多くは日本人観や戦後の教育をベースにして話している。そしてウクライナ出身のアンドリー・グレンコさんの国会での主張もまた多分にウクライナの歴史から由来していると思う。
ロシアは大陸国家(Continental Power)」だ。これに対して日本は海洋国家(sea power)である。20世紀初めに飛行機という革命的な兵器が出現するまで、外敵は船でしか日本に侵攻できなかった。我々が知っている元寇ではモンゴル軍は文永(1274年)と弘安(1281年)の役でそれぞれ約3万、約50万であったという。海がモンゴルの兵力数を削った。元(モンゴル)の皇帝フビライが船をしゃかりきに建造してもこの兵力しか日本に派遣できなかった。
一方、モンゴルは中央アジアからロシアの平原を通って中欧ヨーロッパのウィーン(現在のオーストリアの首都)まで侵攻した。地続きに疾駆した騎馬兵団は120万人以上。モンゴル軍の通過した後には、略奪の限りを尽くしたため、草一片もはえていなかったという。
ウクライナのキエフ公国を紀元とするロシア帝国、その帝国を倒して社会主義革命を樹立した旧ソビエト連邦、、1991年に崩壊したソ連を引き継いだ現在のロシア連邦と、この1千年にわたって、ロシアは、地続きであるがために侵略されてきた。近年では、1812年にはフランスのナポレオン皇帝のモスクワ侵攻、第2次世界大戦のヒトラー・ドイツによるロシア侵攻だ。
その侵略された歴史があることは、裏を返せば、ロシアが近隣諸国を侵略してきた歴史でもある。ロシア帝国はプロイセン(現在のドイツ)やオーストリア・ハンガリー帝国と結託し、ポーランドを1772年、1793年、1795年の3回にわたって分割、世界地図から消滅させた。ロシアによりバルト3国 ーリトアニア、エストニア、ラトビアーもロシアにより滅亡と復興の歴史を繰り返した。フィンランドしかりだ。
ロシアにとって侵略は自国を防衛する一番の方法だと考えてきた。ロシアの歴史がロシア人をして強いリーダーなくして祖国は防衛できないと考えさせてきた。それが正しかろうが正しくなかろうが、そう考えてきた。プーチン大統領も同じメンタリティーなのは明らかだ。北大西洋条約機構(NATO)と米国をナポレオンだと見なしている。そのためには近隣諸国をロシアの言いなりにする。これが祖国防衛にとって避けて通れないと考える。
一方、侵略された近隣の国々、つまりウクライナ、ポーランド、バルト3国、フィンランド、ルーマニアなどはロシアのクマの餌食になることは自らの土地を失い、国が消えることなのだ。国民が国を持たない流浪の民になることなのだ。それは日本人が経験していない言葉に絶する悲惨なことなのだ。
日本は明治維新まで海に守られてきた。そして明治に入り、ロシアのクマが沿海州や中国東北部から朝鮮半島に目をつけたとき、日本人は元寇以来初めて、日露戦争という防衛戦争に立ち上がった。そして何とか引き分けに持ち込んだ。それから増長し、中国を侵略し、最後には太平洋戦争に突入、連合国に無条件降伏した。
日本人は幸運だった。同じ海洋国家の米国の統治を約6年間、受けた。統治は過酷ではなかった。もしソ連(ロシア)が統治していたら、当時のスターリンは多くの日本人を強制的にシベリアに移住させ、そのかわりこの温暖な日本列島にロシア人を移住させただろう。
今日、プーチンのロシアはウクライナ東部の人々をロシアに拉致(移住)させているとのニュース報道を聞く。この報道を聞くと、日本人と異次元の考えを抱く(ロシア人の防衛本能)ロシア人を理解できない人々もいるだろう。ウクライナ人のロシアへの強制移住は今に始まったことではない。それはロシア史にちょくちょう出てくる事実なのだ。ロシアの指導者は長い歴史の中で、タタール民族を始め、ロシア帝国(ソビエト連邦)内の異民族を強制移住させてきた。
日本人は日本人の眼でロシア人を見ているように思う。「自らが誠意を示せば、相手も誠意でかえしてくる」というのが日本人の考え方ではないだろうか。ロシア人はそう考えない。「誠意は相手の弱さだと判断し、さらに攻勢の出てくる」のだ。それは歴史上、海に囲まれて安全を保障された日本人と、地続きで、絶えず侵略の恐怖に怯えるロシア人との違いである。それはポーランド人やウクライナ人らにも言えることだ。
自民党の松川るい参院議員はウクライナのグレンコさんの国会発言を聞いてこう話す。「被害を拡大させたくないというのは(ウクライナの)ゼレンスキー大統領こそが一番願っていることだろう。その上で、属国化される場合の被害の度合いを考えてどこまで頑張るかということはいつも彼の心の中で考え続けている当然のことであって、外国人が知ったかぶりで踏み込んでいという態度に違和感というのはあったと思う」
松川さんは評論家で元大阪市長の橋下徹氏や日本維新の会の鈴木宗男氏を念頭に置いての発言だろう。橋下氏はテレビ番組の討論でしばしば「多くの人々の犠牲を防ぐために早く白旗をかかげて降伏すべきだ」と話す。鈴木氏は「ロシアもウクライナも悪い」という日本の伝統的な「喧嘩両成敗」を口にする。彼らの発言はロシアの歴史やウクライナの歴史を知らない、日本人の窓からしか見ていない発言だと思う。日本人の国民性から発露した”誠意”の発言だが、それはそれとして、ロシア史からくるプーチンの内面心理とロシア史を勉強していないことを白日の下にさらしたとも言えるだろう。
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ロシアは大陸国家(Continental Power)」だ。これに対して日本は海洋国家(sea power)である。20世紀初めに飛行機という革命的な兵器が出現するまで、外敵は船でしか日本に侵攻できなかった。我々が知っている元寇ではモンゴル軍は文永(1274年)と弘安(1281年)の役でそれぞれ約3万、約50万であったという。海がモンゴルの兵力数を削った。元(モンゴル)の皇帝フビライが船をしゃかりきに建造してもこの兵力しか日本に派遣できなかった。
一方、モンゴルは中央アジアからロシアの平原を通って中欧ヨーロッパのウィーン(現在のオーストリアの首都)まで侵攻した。地続きに疾駆した騎馬兵団は120万人以上。モンゴル軍の通過した後には、略奪の限りを尽くしたため、草一片もはえていなかったという。
ウクライナのキエフ公国を紀元とするロシア帝国、その帝国を倒して社会主義革命を樹立した旧ソビエト連邦、、1991年に崩壊したソ連を引き継いだ現在のロシア連邦と、この1千年にわたって、ロシアは、地続きであるがために侵略されてきた。近年では、1812年にはフランスのナポレオン皇帝のモスクワ侵攻、第2次世界大戦のヒトラー・ドイツによるロシア侵攻だ。
その侵略された歴史があることは、裏を返せば、ロシアが近隣諸国を侵略してきた歴史でもある。ロシア帝国はプロイセン(現在のドイツ)やオーストリア・ハンガリー帝国と結託し、ポーランドを1772年、1793年、1795年の3回にわたって分割、世界地図から消滅させた。ロシアによりバルト3国 ーリトアニア、エストニア、ラトビアーもロシアにより滅亡と復興の歴史を繰り返した。フィンランドしかりだ。
ロシアにとって侵略は自国を防衛する一番の方法だと考えてきた。ロシアの歴史がロシア人をして強いリーダーなくして祖国は防衛できないと考えさせてきた。それが正しかろうが正しくなかろうが、そう考えてきた。プーチン大統領も同じメンタリティーなのは明らかだ。北大西洋条約機構(NATO)と米国をナポレオンだと見なしている。そのためには近隣諸国をロシアの言いなりにする。これが祖国防衛にとって避けて通れないと考える。
一方、侵略された近隣の国々、つまりウクライナ、ポーランド、バルト3国、フィンランド、ルーマニアなどはロシアのクマの餌食になることは自らの土地を失い、国が消えることなのだ。国民が国を持たない流浪の民になることなのだ。それは日本人が経験していない言葉に絶する悲惨なことなのだ。
日本は明治維新まで海に守られてきた。そして明治に入り、ロシアのクマが沿海州や中国東北部から朝鮮半島に目をつけたとき、日本人は元寇以来初めて、日露戦争という防衛戦争に立ち上がった。そして何とか引き分けに持ち込んだ。それから増長し、中国を侵略し、最後には太平洋戦争に突入、連合国に無条件降伏した。
日本人は幸運だった。同じ海洋国家の米国の統治を約6年間、受けた。統治は過酷ではなかった。もしソ連(ロシア)が統治していたら、当時のスターリンは多くの日本人を強制的にシベリアに移住させ、そのかわりこの温暖な日本列島にロシア人を移住させただろう。
今日、プーチンのロシアはウクライナ東部の人々をロシアに拉致(移住)させているとのニュース報道を聞く。この報道を聞くと、日本人と異次元の考えを抱く(ロシア人の防衛本能)ロシア人を理解できない人々もいるだろう。ウクライナ人のロシアへの強制移住は今に始まったことではない。それはロシア史にちょくちょう出てくる事実なのだ。ロシアの指導者は長い歴史の中で、タタール民族を始め、ロシア帝国(ソビエト連邦)内の異民族を強制移住させてきた。
日本人は日本人の眼でロシア人を見ているように思う。「自らが誠意を示せば、相手も誠意でかえしてくる」というのが日本人の考え方ではないだろうか。ロシア人はそう考えない。「誠意は相手の弱さだと判断し、さらに攻勢の出てくる」のだ。それは歴史上、海に囲まれて安全を保障された日本人と、地続きで、絶えず侵略の恐怖に怯えるロシア人との違いである。それはポーランド人やウクライナ人らにも言えることだ。
自民党の松川るい参院議員はウクライナのグレンコさんの国会発言を聞いてこう話す。「被害を拡大させたくないというのは(ウクライナの)ゼレンスキー大統領こそが一番願っていることだろう。その上で、属国化される場合の被害の度合いを考えてどこまで頑張るかということはいつも彼の心の中で考え続けている当然のことであって、外国人が知ったかぶりで踏み込んでいという態度に違和感というのはあったと思う」
松川さんは評論家で元大阪市長の橋下徹氏や日本維新の会の鈴木宗男氏を念頭に置いての発言だろう。橋下氏はテレビ番組の討論でしばしば「多くの人々の犠牲を防ぐために早く白旗をかかげて降伏すべきだ」と話す。鈴木氏は「ロシアもウクライナも悪い」という日本の伝統的な「喧嘩両成敗」を口にする。彼らの発言はロシアの歴史やウクライナの歴史を知らない、日本人の窓からしか見ていない発言だと思う。日本人の国民性から発露した”誠意”の発言だが、それはそれとして、ロシア史からくるプーチンの内面心理とロシア史を勉強していないことを白日の下にさらしたとも言えるだろう。
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