英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

今後の世界の方向は、11月の米大統領選挙に左右させる

2024年01月21日 21時08分49秒 | 国際政治と世界の動き
 2024年が明けて3週間がたった。ことしは辰年。特にことしは「甲辰(きのえ・たつ)です。どんどん勢いが増し成功していく、という意味合いがある。読者の皆さんにとっては良い年になると思う。しかし国際政治に限って言えば、「時代が動く年」、「激動の年」と言えるのではないでしょうか。国際政治学者の中には、将来が見づらい、リスクを抱えた「激動の年」と話している人がいます。
 アメリカの調査会社「ユーラシア・グループ」と、このグループの社長を務める著名な国際政治学者イアン・ブレマーさんはことしの「10大リスク」を1月8日に発表した。
 「10大リスク」の1位は「米国の敵は米国」。大統領選挙を控えて米国の政治的分断が一層深まるとしている。2位には「瀬戸際に立つ中東」、イスラエルとハマスの衝突継続のほかに、イランが後ろ盾になっているイスラム組織「ヒズボラ」とイスラエルの衝突拡大だ。中東は「バルカンの火薬庫」かもしれない。
 3位は「ウクライナの事実上の分割」だ。米国や欧州連合の支援疲れから、軍事・経済支援が滞り、ロシアのプーチン大統領が勢いづく。ロシア軍が盛り返し、ロシアが占領しているクリミア半島などが固定される可能性がある。
 5位は「ならず者国家の枢軸」、つまりロシア、イラン、北朝鮮です。そして6位は「経済回復できない中国」です。ブレマー氏は「10大リスク」のほかに、この報告書の最後に「台湾問題」も扱っている。
 ブレマー報告書から理解できることは、国際政治という意味で、11月の米大統領選挙の結果が、世界の親露の分岐点になる可能性が強いということだ。トランプが勝てば、世界の権威主義独裁国家が勢いづく。日本もこの嵐を避けることができない。日本は安全保障上のリスクにさらされる。ブレマーさんが挙げた最大のリスク「「米国の敵は米国」が世界の課題全てを決める可能性が強い。
 ことしは台湾、ロシア、韓国、インドなど世界中で選挙が実施される。台湾の総統選挙は与党・民進党の賴清徳が勝利した。民主主義が勝利した。だが1月8日のビデオ会見でブレマー氏は「ほとんどの国の選挙はリスクとは言えない。米国こそがリスクだ」と強調する。報告書で「アメリカはどの先進民主主義国よりも機能不全。24年にはさらなる弱体化に直面する」と厳しく指摘している。
 1月17日付朝日新聞の社説は、トランプ前大統領のアイオワ州の勝利を受け、「内向き論戦から脱却を」と訴える。同じ日の下野新聞の社説はズバリこう論じている。「ことしは民主主義の真価が問われている」
 トランプの唱えている考えを一言で言えば何か?「反グローバル主義」と「米国第一主義」だ。物事を自らの損得という物差しでしか計算しない。政治哲学や歴史観がない。政治を商売の損得からの観点からしか判断できない。
 トランプは「連邦議会襲撃を教唆したなどの容疑」で起訴した検察官をののしり、大統領に復帰すれば捜査機関を動員して政敵を放逐する姿勢を示している。報復に固執する独裁者だとあえて言って過言ではない。
 私は憂慮するのは、こうした姿勢が共和党内で問題視されていないことだ。米メディアによると、有罪になっても大統領として適任だと大半のトランプ支持者は考えている。それはアメリカ社会の貧富の格差の拡大や移民問題の深刻化から来ている。とりわけ生活水準が下降している白人労働者は社会に疎外感を感じている。貧しい白人はいまや人種的な少数派に属している国に住んでいると感じている。
 「信頼に値しないトランプ前大統領のような人物を、白人労働者や貧しい黒人はトランプがエリートに対して立ち向かう人物と受け止めている」。そんなことを1月17日付朝日新聞に米ボストン・カレッジのピーター・スケアリー教授が書いているのを読みました。トランプ支持者はエリートが自らを不幸にしていると考えている。
 トランプ大統領時代を振り返れば、憲法や法律を最も守るべき立場にあるトランプが絶対権力者として振る舞った。もしこれを有権者が是認するなら、法とルールに基づく「民主主義体制」「三権分立」「議会と行政府のチェック・バランス機能」は崩壊しかねない。
 アメリカ社会で、法の支配と民主主義制度が揺らいでいる。ブレマーさんは世界の最強国家アメリカは「自由で公平な政治制度」において重大な挑戦を受けていると語る。世界の安全保障と安定、世界経済の展望に大統領選挙は重大な結果を及ぼす」と論じている。
 私も不安を感じている。世界はどうなるのか。われわれは平和をこれからも享受できるのか? 今から90年前の1933年1月30日、ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーは、ドイツ国民の熱狂的な支持を得て権力を掌握しました。当時のドイツ国民の心理、社会に対する不満は、現在のトランプ支持者の心理であり、不満である。
 当時、ドイツ社会の貧富の差や大量失業など社会に疎外感を感じたドイツ国民はヒトラーがドイツ社会を救ってくれると信じて一票を入れた。その結果は読者の皆さんが歴史で学んだ通り、第2次世界大戦の勃発という悲惨な結末になった。
 われわれはアメリカの選挙をどうすることもできない。有権者ではないからだ。ただ、じっと注視する必要がある。世界が大きく危機の方向へ変化するかどうかは、今年11月の米大統領選挙に依拠すると思う。

 ウクライナのクリミア橋爆破とロシアの報復   戦争の終わりの始まりか

2022年10月11日 16時20分25秒 | 国際政治と世界の動き
 最後にこのブログを書いてから半年がたった。「光陰矢の如し」。まるで歳月はロケットのように早く、われわれを過去から現在、未来へと運ぶ。
 2月24日にロシア軍がウクライナに侵攻してから7ヵ月以上たつ。時の流れほど冷厳な現実を見せつけるものはない。ロシアのプーチン大統領ほど、このことを噛みしめている人物は世界中でいないだろう。
 この”特別軍事作戦”でロシアは苦戦しているのか?。否、敗北の道を進んでいる。私にはそう見える。プーチンが呼ぶ”特別軍事作戦”はそもそも何だったのか。権威主義者プーチンがウクライナの首都キーウを数週間で陥落させられると信じた。彼が言うところの、ウクライナのゼレンスキー大統領ら”ネオナチ”勢力を一掃できると盲信した。しかしキーウ陥落も”ネオナチ勢力”の一掃もできなかった。それどころか泥沼にはまった。
 1931年から1945年の中国戦線で、日本軍が泥沼にはまったように、ロシア軍もはまった。両者に共通するのは傲慢と現実無視だった。ウクライナも中国も国土は広大だ。何よりも当時の中国の指導者、蒋介石も現在のウクライナの指導者、ゼレンスキー大統領も徹底抗戦の意思が硬い。そして何よりもウクライナ軍の士気は高い。それに対してロシア軍の将兵は、なぜ戦っているのをまったく理解できない。
 そうだろう。理解できるはずがない。この戦争はプーチンの戦争だからだ。プーチンの歴史観から出てきた戦争なのだ。歴史的にウクライナはロシア領土だという彼の歪曲した歴史観。それはドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーがドイツ人の「レーベン・シュトラウム(生存権)」は東ヨーロッパにあるとした主観的で一歩的に考えた歴史観と同じだ。プーチンこそヒトラー思想の後継者でありネオナチだ。
 欧米から最新兵器を供給されたウクライナ軍は、9月攻勢をかけた。練度の低いロシア兵は次々と敗走している。ロシアは戦争の初期に占拠したウクライナ東部と南部4州の一部を、ウクライナ軍は奪還した。プーチンは苦し紛れに「部分動員令」を出したが、ロシアの若者の多くは「部分」とは見なさず、「総動員」と見なし、そのうちの数十万はロシア国境から国外に脱出した。
 10月8日、2014年にロシアに併合されたクリミア半島とロシアを繋ぐ19㌔の橋の一部が爆破された。爆破はウクライナの仕業だとプーチンは判断し、ロシア軍にウクライナ全土にミサイル攻撃をするよう命令した。このため、ウクライナの首都キーウやリビウなど複数の都市が、ミサイル攻撃を受け、建物などが損壊し民間人の死傷者が出た。
 軍事的に見て、ロシアの劣勢を挽回する助けにはまったくならない。それどころかウクライナ民間人を殺傷したと世界中から非難を受けている。またこの橋を使えず、軍事物資や兵器の貴重な補給路は断たれ、ますますロシア軍は苦境に立たされるだろう。この戦争の終わりの始めかもしれない。
 プーチンが持っている残りのカードはほとんどない。あとは戦術核兵器だろう。もしプーチンが、この悪魔の兵器を使っても、ロシアは勝てない。米国やNATO諸国は核兵器で報復するのではなく、最新通常兵器を大量に供給し、ウクライナとロシアとの戦争に決着をつけるだろう。ロシアの通常兵器がほんとうにお粗末なことを、この戦争後に、世界は知ったのだ。
 プーチンが夢想した「一流国家ロシア」はこれから長い間、出現しない。この戦争でロシアはますます科学技術や経済力などの点で三流国家に転落していくだろう。それでもプーチンはこの戦争をやめない。
 フィンランドのニーニスト大統領は10月10日にこう話した。「プーチン大統領が何らかの敗北を認めることができるとは、とうてい思えないと伝えた。彼にその能力があるのか。それが問題だ。わたしは、彼には敗北を受け入れる能力はないと思う」
 ニーニスト大統領の発言が事実なら、プーチン大統領の末路は悲惨となろう。ドイツの独裁者ヒトラーが、第二次世界大戦でのドイツの敗北とほぼ同時に総統官邸で自殺したのと同じ運命をたどるにちがいない。
 私は思う。歴史はわれわれに「独裁者は必ず転落する」と明白に示しているのに、後世の独裁者は同じ轍を踏む。ルーマニアの独裁者ニコラエ・チャウシェスクやイタリアの独裁者ベニート・ムッソリーニが、怒り狂った国民の前に引きずり出されて、悲惨な最後を遂げたのに、独裁は繰り返され、独裁者は悲惨な最期を遂げる。
 はたして、3期目のトップを目指し独裁を強める習近平・国家主席や北朝鮮の金正恩・総書記は、現在繰り広げられている歴史から学んでいるのだろうか。もし学んでいなければ、彼らの将来もまた暗い。
 

ウクライナ和平は市民を救えるのか? 無慈悲なロシア史を知らない橋下氏の訴え

2022年03月20日 12時12分49秒 | 国際政治と世界の動き
 元大阪市長の橋下徹氏が今朝の「フジテレビ・日曜報道」で相変わらず持論を展開していた。彼の論旨は「ウクライナ市民の犠牲が目を覆うほど大きくなれば、ウクライナ政府は妥協をしてでも和平を実現すべきだ」ということだ。
 和平だけで事は済むのだろうか?プーチンを満足させる和平で、ウクライナ人は平和に暮らせるのだろうか?橋下氏を含む日本人の多くはそう考えるかもしれない。
 ロシアのプーチン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に和平の条件を突きつけている。その条件は①ウクライナの非武装中立化②クリミア半島の割譲を認める③ウクライナ東部の親ロシア派の自称「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」の独立承認ーである。
 多くの日本人はゼレンスキー大統領がプーチンの条件を飲めば、これ以上のウクライナ市民の犠牲はなくなり、ウクライナは主権国家として独立を維持できると考えるかもしれない。プーチンのロシアが口を出すこともないと考えるかもしれない。
 日本人の考えは「坊ちゃん」の考えだ。日本は四方を海に囲まれている。20世紀初頭、飛行機が発明されるまで、日本人ほど安全に守られた国はなかった。
 13世紀、100万以上のモングル軍は中央アジアや東ヨーロッパを蹂躙した。それに対し、われわれが「神風が吹いた」と称する元寇では、モンゴル軍はせいぜい3万だった。海があるからだ。
 安全が保障された歴史を持つ国の人々から橋下氏のような主張が生まれる、とロシア史を若い頃かじった私が抱く率直な見解だ。
 海により安全が保障されたところから日本人の思考が生まれた。「自らの考えは相手も同じだ」「我々が誠意を見せれば、相手も理解してくれて誠意で返してくる」と。そうだろうか?
 ウクライナ人はロシアがどんな国か知っている。ロシア人の思考を理解する。ロシアは中央集権の国だ。ロシア帝国であろうが、ソ連であろうが、現在のロシアであろうが、強権力のトップが国民を支配する。
 中央集権への反抗の芽はことごとくつぶすこと。これは今も昔も変らない。そのための手段として他民族を有無を言わせず支配する。反抗すれば現在の住んでいる土地から追放する。ロシア史は我々にそれを教えている。
 この政治手法は、ロシアでは古くから再三用いられてきた。たとえば、1510年にモスクワ大公ワシリー3世は、プスコフを併合したとき、地元で影響力のある一族はすべてプスコフから追い出した。これは、プスコフのエリートたちが民衆の支持を背景に、モスクワ大公国に反抗できぬようにするためだ。プーチンもゼレンスキー大統領を追い出す決意だ。
  こうした強制移住の慣行は、後の帝政ロシアの時代でも、地方の反抗、反乱を鎮圧するために使われた。たとえば、ポーランドでの1830年と1863年の反乱の後、叛徒とその支持者である数千人のポーランド人が、ロシア奥地、主にシベリアへと追放、定住させられた。
  旧ソ連の時代、我々の時代とそれほど遠くない時代。独裁者スターリンはロシアの伝統的な政策「追放」により他民族を弾圧した。
  ソ連の秘密警察「内務人民委員部」(NKVD)のアーカイブによると、1930年代から1950年代にかけて、約350万人が故郷を捨てねばならなかった。民族の数にして40以上が、別の場所に移住させられた。
 最初に強制移住させられたのはポーランド人だ。1936年、旧ポーランド領のウクライナ西部から、約3万5千人の「信頼できない分子」が、カザフスタンに移住させられた。
 ソ連政府は、第2次世界大戦中にも盛んに諸民族を強制移住させた。ドイツ軍による占領から解放された地域から、膨大な数の人々が追い出した。スパイ活動と対独協力という名目だ。何万、何十万ものカラチャイ、チェチェン、イングーシ、バルカル、カバルダの各民族が、シベリアと中央アジアに追放された。
 現在、ウクライナからロシアにより奪われているクリミア半島にはウクライナ人に混じって約30万人のタタール人が平和な生活を送っていた。しかしソ連の独裁者スターリンは対ナチス・ドイツ協力の汚名を着せ、シベリアに追放した。タタール民族はシベリアで散り散りばらばらになり民族の一体性を失った。
 やはり対独協力のかどで、カルムイク人、メスヘティア・トルコ人、クルド人、ギリシャ人などの、少人数の民族もシベリアに移住させられた。
 日本人は第2次世界大戦で敗北した。1945年8月15日、ポツダム宣言を受け入れ、米英露中など連合国に無条件降伏した。しかしソ連ロシアは日本人が手をか挙げたにもかかわらず、北方領土を占領した。そしてスターリンは米国に北海道の半分をよこせ、と要求した。日本を占領していた連合軍最高司令官ダグラス・マッカーサーは拒絶した。
 日本人は幸運だったと私は思う。もしマッカーサーが承諾してれば北海道民はタタール人と同じ運命を辿り、シベリアに追放されただろう。なぜ?ロシアは暖かい土地を求めているのだ。今も昔も。
 日本で活躍している国際政治学者のグレンコ・アンドリーさんは先日、激しく橋下氏と口論した。ロシア史を何も知らない善良な橋下氏。一方的にまくし立てる橋下氏に嫌悪感を感じたが、それはそれでよい。感情を横に置いて言えば、橋下氏は良心からの発言だが、ロシア史をほとんど知らないのではないか?
 ロシア史を理解しているウクライナ人のアンドリーさんはこう話す。「なぜロシアは平気で都市の無差別空爆や砲撃をやっているのか。ロシアにとってこれから征服する土地に、元の住民が残る必要はありません。土地自体が欲しいです。寧ろ、元の住民はいなくなった方が都合がいいです。後で投獄や処刑の手間が省けるから。人がいなくなった土地に、ロシア人を住まわせるのです」
 若い頃、英国の大学院でソ連(ロシア)軍事史やロシア史をかじった私にとってアンドリー氏の発言は説得力がある。善良な日本人は島国の民族なので、橋下氏をふくめて、どうも自らの尺度で持論を展開する傾向がある。相手が存在するのだ。その相手は日本人とは全く違う思考方法で物事を考えていることに気づくべきだ。それは中国の漢民族にも当てはまる。

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米中、西ヨーロッパの仲介を願う    ロシアとウクライナは長期消耗戦へ

2022年03月19日 23時03分14秒 | 国際政治と世界の動き
 兵担保が脆弱なロシア軍は、祖国を守る決意と士気が高いウクライナ軍に苦戦している。この事実は明らかだ。しかし、ロシア軍が苦戦すればするほど、時がたてばたつほど、ロシアのプーチン大統領は市民への無差別爆撃を強め、化学兵器を使用する可能性が高くなる。
 ただロシア軍がいかに士気が低く兵站が弱くても、戦力は明らかにロシア軍が高い。ロシア参謀本部はきょう、超音速ミサイルを発射してウクライナ軍の火薬庫を攻撃したと発表した。ウクライナ軍に脅しをかけた側面が強いが、それでも前線が不利なら非人道的な武器を使用することをいとわないとの決意を示唆している。
 ウクライナのゼレンスキー大統領は「ロシアのプーチン大統領と首脳会談する時が来た」とプーチンに会談を呼びかけている。それはウクライナ市民の死傷者が急増している証拠だ。そしてウクライナ軍の消耗もひどくなりつつあるのかもしれない。ただプーチンは「ウクライナの非武装中立、ロシアによるクリミアの領有」など当初の無条件降伏とも言える条件をウクライナが飲まなければ、首脳会談に応じないだろう。
 プーチン大統領はKGB(諜報部門)出身からして、妥協することは敗北だと見なしている節がある。スパイは生死があるだけで、中間はない。そしてゼレンスキー大統領が今のところ、プーチンの無条件降伏を受け入れる用意はないだろう。
 世界最大の政治リスク専門コンサルティング会社として知られる「ユーラシア・グループ」のイアン・ブレマー会長は①ケレンスキー大統領が妥協して停戦交渉に持ち込む②ケレンスキー大統領は徹底抗戦するーという二つのオープション・シナリオを提示している。
 ケレンスキー大統領は「国を裏切る停戦はしない」と断言している。このためロシアのプーチン大統領の停戦条件とは余りにもかけ離れている。私はウクライナが徹底抗戦し続けると思う。そしてロシア軍が広大なウクライナ全土を占領し、それを統治する戦力は持ち合わせていないことも明々白々の事実だ。
 第2次世界大戦前のスペイン内戦のように3年も4年も続く悲惨な戦争になるかもしれない。それはウクライナ国民の流血と世界経済の大打撃を意味する。
 世界経済の破綻を決して望んでいない中国の習近平が自国の国益(世界経済の繁栄に基づく中国の発展)を自覚して仲介者に乗り出してほしいと願う。その際、中国一国だけでは、ウクライナは和平のテーブルに着かないだろう。米国、中国、西ヨーロッパ諸国、トルコ、願わくば日本がロシアとウクライナ双方の妥協を引き出し、両国に公平な裁定を下すことだ。それが平和への復活の道だと思う。

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ロシアのプーチンの戦争は上手くいくのか 賭けの先行きは誰も分からない

2022年02月27日 20時05分11秒 | 国際政治と世界の動き
 ウクライナ侵攻の引き金を引いたロシアのプーチン大統領は賭けに成功するのか。未来は誰も分からない。彼の想像を超えた展開を見せるかもしれない。
 20世紀の偉大なイギリス宰相ウィンストン・チャーチルは断言する。「戦争を始めるとき、確実に自分の描いた結末になる保証はどこにもない」
 ロシア軍は2月24日、ウクライナに侵攻し、宣戦布告なき戦争を始めた。2日でウクライナの首都キエフが陥落する、との専門家の読みは外れた。
 プーチンの目的はウクライナのゼレンスキー政権をロシアの武力で打倒し、親露政権を樹立することにあるのは明白だ。そしてウクライナを緩衝地帯にして、プーチンが恐れる北大西洋条約機構(NATO)加盟国の増大を食い止める。
 果たして上手くいくのか。そうは思わない。
 予想に反して、ウクライナ軍は頑強な抵抗をしている。ただロシア軍はロシア・ウクライナ国境に集結させた兵力の3分の1しか投入していない。これからはなり振り構わず、残りの兵力を投入し、クラスター爆弾を落とし、もしかすれば戦術核をも使う可能性がある。
 ロシア軍は最終的にはウクライナ軍を打倒し、ウクライナ軍はロシア軍に降伏する可能性が高い。だとしても、これでプーチンは戦争に勝ったと言えるのか。プーチンは4,400万のウクライナ国民に支持される傀儡政権を打ち立てることができるのか。現在の状況を見ていると、ウクライナ国民の抵抗、レジスタンスは必至だ。言い換えれば、プーチンはウクライナ国民の支持と合法性を有した政権を樹立できるのか。答えはNOだ。
 さらにプーチンの侵略はプーチンにとって悪夢のシナリオを作り出している。ロシアによるウクライナ侵攻を受け、北大西洋条約機構(NATO)は25日、オンライン形式で緊急の首脳会議を開催した。その会合に、よりによってEUとともに中立国のスウェーデンとフィンランドが参加したのだ。
 フィンランドのサウリ・ニーニステ大統領は今年1月、ウクライナ状勢を目の当たりにしてNATOに加盟する用意があると声明を発表。ロシアのウクライナ侵攻後、「ヨーロッパの安全保障の秩序全体に対する攻撃でもあります。私たちはウクライナに深い同情を感じる」と述べた。
 ロシア帝国の時代、フィンランドはロシアの一部だった。そして第1次世界大戦終了後、フィンランドは独立した。1939年、旧ソ連のスターリンは「安全保障上の問題だ」としてフィンランドに侵入し冬の戦争をした。半年でこの戦争は終わったが、その後フィンランドはナチス・ドイツ側につき、敗北した。
 旧ソ連は1948年、フィンランドと条約を締結し「フィンランドの中立化、フィンランドゼーション」に成功した。旧ソ連とロシアにとってフィンランドは決してロシアの敵側に味方してはならない国だ。
 西ヨーロッパからウクライナの廊下を通ってロシアに入ることを許さないと同様に、スカンジナビア半島からロシアに攻め込まれることをロシアは許さない。しかしロシアのウクライナ侵略は、フィンランドやスウェーデンの不安と恐怖を倍加させ、中立を捨ててNATO加盟に傾いている。
 プーチンは数日前、フィンランドに警告した。「もしフィンランドがNATOに加盟したら、ウクライナと同じ運命をたどる」
 19世紀的な帝国主義者、冒険主義者のプーチンと米国の国力衰退は現在の平和と安定を揺るがしている。さらに中国の習近平指導部の台湾統一の野望。さらには「プーチンのウクライナ侵攻」を「天才のなせる技」と絶賛したアメリカのトランプ前大統領の荒唐無稽な発言だ。
 この3人の愚か者によって世界はまさに動乱の時代を迎えている。日本史では、ロシアのウクライナ侵攻は、応仁の乱なのか。戦国時代に入るのか。ただ、16世紀の戦国時代は核兵器がなかった。今はある。プーチンは米国に向けて核の脅しをした。私は不安でいっぱいだ。

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