英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

異文化、異政治制度から生まれる日中の国民性             中国漁船のサンゴ採取違反などに思う         

2014年11月08日 22時45分58秒 | 国民性
  台風20号が日本を去り、再び中国のサンゴ漁船が小笠原諸島周辺に戻っている。海上保安庁によれば、7日時点で小笠原諸島周辺に191隻を確認した。
  台風の襲来を知らせる日本側の措置は法治国家として当然だったが、それを逆手にとった中国漁船のしたたかさには恐れ入る。中国が法治の国でない明らかな証明である。ただ、そんなことを言ったところで何の効果もないのは事実だ。
 海上保安庁は中国の漁船団の対応に苦慮しているという。一方、岸田外相は中国の王毅外相との会談の中で「強い遺憾の意」を伝え、中国側に実効性のある対策を求めた。これに対して王外相はこの事態を重大だと認め、実効措置を取ると述べたという。
 法治国家の外相の発言なら信じるが、中国外相の発言を額面通りには受け取れない。権謀術数の一環ではないのか。疑心暗鬼だ。まさに法治国家が非法治国家に対処する難しさを明らかにしている。ましてや中国漁船員は「法治とは何なのか」など理解できないだろう。ただ、取り締まりが緩いと見て、押し寄せているだけだ。
 20世紀の中国の文学者、林語堂は「中国人はもっとも人間らしい民族」だと述べる。これを解釈すれば、本能の思うがままに行動するということだろう。一攫千金を夢見て、数十億円を稼げるサンゴがある日本の領海に入る。長期の懲役刑になることはない。天文学的な罰金を払うこともない。うまくやれば問題ない。日本へ行こう。こういう人間の欲望だろう。
 海保には摘発を求める電話が相次いでいる。「なぜもっと捕まえられないのか」。大多数の日本人の素朴な疑問だろう。海保から見れば、法律に照らしてしか行動できない。法治国家の苦しいところだ。
 また、警戒に充てられる大型巡視船は、中国公船が領海侵入を繰り返す沖縄・尖閣諸島周辺の警戒にも必要で数に限りがある。海保は少ない要員で漁場である領海内への侵入阻止に全力を挙げている。
 産経新聞や右派系知識人は尖閣と中国のサンゴ漁船を絡めて、中国政府の手の込んだ作戦だと指摘する。筆者は証拠がないかぎり、その意見に組みすることはできないが、中国政府がどこまでこの問題に真剣なのかは今一つ確信が持てない。
 宝石サンゴのほとんどは、周辺海域の領海内に生息しているそうだ。読売新聞のサイトによれば、限られた要員で効果を上げるため、海保は大型巡視船を巡回させて中国サンゴ漁船を領海内に入れさせない“戦術”に重点を置いており、今のところ、サンゴを積んだ漁船は見つかっていない。 「サンゴはろくに採れていないはずで、じきに漁船は燃料や食料が尽きて帰るしかない。ねばり強く対応するだけだ」と幹部は語る。
 一方、岸田外相は中国サンゴ漁船をめぐって中国政府に「強い遺憾の意」を表明したが、日中外相の相互訪問や外務次官級の戦略対話、日中安保対話の早期再開を提起した。これに対して、王外相は今後の関係改善にあたり(1)日本側の歴史認識を巡る問題(2)発展する中国をライバルと見なさないか(3)日本が平和国家の歩みを続けるか――などを注視していくとした。
 この言い方はまさに宗主国の要人が朝貢国の派遣団に「上から目線」で言っているに同じだ。対外関係をめぐる中国の長い伝統に対して怒ることもないが、どうも安倍首相は前ばかり見ているのではないか。
 安倍首相は焦って日中関係を自分の意に添うようにしたいと思うあまり、「時」を忘れているのではないのか。中国との交渉は代を継いでやる。「時」や「歴史」は民主主義制度を持つ国家に味方している。日本は焦らないこと。安倍が自分の内閣で解決を図ろうと焦れば焦るほど墓穴を掘る。時は変化する。昨日の真実は今日の真実ではない。政治、外交、軍事を観察する人々に言いたい。
 中国サンゴ漁船に対する海保の対策にしても、日本政府の対中策にしても、長期的な姿勢で臨むことだ。持久戦しかないだろう。
  中国漁船が「領海内でサンゴを採れていない」という海保の発言を信じるなら、この作戦を続けると同時に、一日も早く法律を改正して、中国漁船に厳しく対処することだ。領海に入れば拿捕する。どこの国でもしていることを実行することが、中国漁船員への効果的な抑止力だと信じる。

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