英宰相ウィンストン・チャーチルからのメッセージ   

チャーチルの政治哲学や人生観を土台にし、幅広い分野の話を取り上げる。そして自説を述べる。

錦織は日々高みに向かっている。  フェレール戦を観戦して    

2014年11月15日 10時57分26秒 | スポーツ
  ロンドンで開幕したATPツアー・ファイナルで、錦織圭が準決勝に進んだ。男子テニスの年間成績上位8人による今季最終戦。1次リーグB組で世界ランキング6位のアンディ・マリー(英国)と対戦し、6-4、6-4で勝利したが、ロジャー・フェデラー(スイス)に3-6、2-6で完敗。彼にとりB組最後の試合で、ダビド・フェレール(スペイン)に4―6、6―4、6―1で逆転勝ちした。世界ランキング2位のフェデラーに敗れた。現実を見れば納得する。
 わたしは、太もも負傷のため直前に棄権を発表したミロシュ・ラオニッチ(カナダ)に代わって出場したフェレールとの戦いを第2セットまでテレビ観戦した。
 筆者は中学生時代、当時人気がなかったテニスクラブに1年間在籍した経験がある。「経験がある」と発言することがはばかられるかもしれない。ただ、ルールは覚えた。そして現在も理解している。
 テレビニュースのスポーツ番組で何度か見たが、錦織の試合を生中継で見るのは初めて。恥ずかしいが、あえていえば、これほどの選手が日本にいたのかと強く感じた。サーブの正確さは抜群。最初のサーブで決めてしまうのを見て、日本にもこんな選手がいたのかと感じた。長いラリーに根負けしなかった。すばらしいラリーだった。フェレールのレシーブがベースラインを割るのをしばしば見た。球に力強さがある証拠だ。
 フルセットにもつれ込み、逆転勝利。フルセットにもつれた試合の勝率は、ことしは9割以上。驚異的な記録だ。
 フェレールは小柄ながらも粘り強いストロークが持ち味だという。これをはねのけ勝利した。第2セットは攻撃的だった。各紙によれば、「ミスを恐れず打ち抜けた」という。フォアの決定打はフェレールの4倍近い19本。バックハンドの決定打も6倍の12本と圧倒した。
 第1セットを取られ、即座に2セットの攻撃方法を変えたのには驚いた。実力がなければできない。素人の筆者でもトスの位置を修正したと分かった。このため第1サーブの成功率が上がっていた。回り込むフォアの強打も目立っていた。
 明朝、仕事があったので後ろ髪を引かれながら最終セットは見なかった。目が覚めて朝のテレビニュースを見た。最終セットは6-1の完勝。見ていたら圧巻だっただろう。
 試合中、解説者の松岡修造氏は サーブの正確さを絶賛していた。また「いい時のサーブに戻り、本来のプレーができていた。本当に強かった」と新聞で褒めている。松岡氏は「今季はフェレールに3連勝していることもあり、相手は雪辱に燃えていた。しかし圭はそれをはね返し、最後はフェレールが(ラケットを折って)かないませんという態度を示した」と話し、心技体すべてで上回った勝利と分析した。
 フェレールも「今季の圭はサーブと体力が向上した。一枚上だった」と話し、宿敵をほめたたえている。
 世界の実力者だけが立てる大会に初出場し、初出場選手は誰でも苦戦する中で2勝1敗。錦織は記者に「誰にとってもタフな大きな舞台で大変だと思う。たまたま自分はいいテニスができて自信がついてきている。(フルセットの勝負強さは)自分でもわからないが、大切なのは精神力。体力的にも成長した」と話した。
 「自信がついてきている」の言葉からわれわれが推察できることは、歴史が変化している。時が変化しているということだろう。「昨日の真実は今日の真実ではない」と筆者は言ったが、この言葉は錦織に当てはまる。現実主義に照らせば、彼は日々変化している。この意味で彼への評価や姿勢を変える必要がある。
 フェレール戦を観戦するかぎり、錦織は変化している。変化の途上だ。今晩、世界の覇者(ランキング1位)、ジョコビッチと対戦する。テニスはほかのスポーツに比べて、運が極めて少ない競技だという。実力が直接反映されるスポーツだと聞く。今晩の準決勝では、順当ならジョコビッチが錦織に勝つだろう。ただ、錦織は日々進化している。日々向上している昇り竜だと強く感じた。
ジョコビッチに勝つチャンスはある。たとえ勝ったとしてもそのことに歓喜する必要はない。錦織が世界の覇者になる一里塚と思えばよいと思う。負けてもそのことに落胆する必要はない。錦織は日々向上している。進撃をつづけているのだ。そのことを確認すれば十分だ。
 フェレール戦で強く感じたことは、彼の時代がいつか来るかもしれないということだ。その確率は高いと思った。今晩は錦織―ジョコビッチ戦を、錦織の世界ランキング1位への過程のひとつの戦いとして観戦したい。