「200万円!」思わず口に出てしまった。
ふらりと入ったアンティークショップ。見入っている彼女は、1個のランプをそんな大金出して本当に買う気なのだろうか。
「まずこの値段では手に入らない」とますます話に力がこもる店主。憧れのガレ制作のバラのランプに囚われてしまった奥さんは、すっかり買う気になっている。確かに淡い朱色のバラがほんのり輝くランプは上品で手元に置きたくなる品だ。良く行くガラス工芸美術館のショップにある鮮やかすぎる商品とは違う。
大変なことになってしまった。定期を解約して、そしてさらに……。「う~ん」何とかなると言えば言えるのだが、それにしても。
「ねえ、買いたいんだけど」と言われて、弱みを握られた私が拒否できるわけがない。「え? 弱みといっても何かいけない事したわけではありませんよ。惚れた弱みということです」
「そこのデパートで今、ランプ展をやっているから、それを見てから決めようよ」と言うのが精一杯だった。
そして今、ベッドの脇には、いかにも品の良いガレの「ばら文(もん)ランプ」がある。
写真になってしまったのだが。