小嶋勝利著『老人ホームリアルな暮らし』(祥伝社新書562、2019年3月10日祥伝社発行)を読んだ。
表紙裏にはこうある。
どうやって老人ホームを選んだらいいのか?
それには入居者の生(なま)の声を聞くのが一番と、国内最大の老人ホーム紹介センターを経営する著者は断言します。そこで著者は、数々の入居者のエピソードを通して、ホームでの暮らしの悲喜こもごもを紹介。暮らしの実態を明らかにします。
介護師と上手に付き合うには? 隣人とのトラブルを避けるには? 認知症の恐怖から解放されるには?
老人ホームには、自宅にはない戸惑(とまど)いや不安が数多く待ち受けています。それらを一つ一つ説明し、解決策を提示する本書は、老人ホームを深く知る絶好のガイドブックです!
第1章 老人ホームで暮らすということ
老人ホーム業界はM&A真っ盛り。1年後には価値がなくなるから売りたい経営者と、規模を大きくしないと利益が出ないので買いまくる経営者がいる。
介護保険制度のもとでは、創意工夫して自由な競争する環境下にはない。入居者の深夜帯などの挙動を監視するカメラの設置も、行政の指導でプライバシーに配慮して撤去された。
第2章 リアルに疑似体験―老人ホームの24時間
朝から深夜まで、老人ホームの一日が、主に職員側に事情をもとに語られる。
朝食が8時から9時の理由は職員の勤務体系の都合。8時からきちんと始まらないと待てない人がいて大騒ぎになる。テーブルの席も決まった場所でないと騒いで収拾がつかなくなる。10時からのお茶も部屋にこもりきりになることの防止のため。
第3章 老人ホームで働く介護職員って、どんな人?
批判を恐れずに言えば、私自身も含め、介護業界で働いている人たちは、皆、「負け組」だと思います。……リストラされたり、自らドロップアウトせざるをえない人たちが、仕事を求め、介護業界に流れ着き、結果、たくさんの人たちが働いています。
第4章 エピソード集 老人ホームで起こるさまざまな出来事
95ぺージに渡り、18のエピソードが紹介される。
小嶋勝利(こじま・かつとし)
1965年、神奈川県生まれ。長年、介護業界で介護職員や管理職として働いてきて、現在、高齢者住宅への入居相談などを手がける民間介護施設紹介センター「みんかい」の経営スタッフ((株)ASFON経営企画部長)。
著書『誰も書かなかった老人ホーム』
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)
著者の経験した内容に限られるが、語られているのは、ある老人ホームでの実情にはちがいない。このような老人ホームがあることは事実で、おそらくは典型例なのだろう。その意味で、「第4章 エピソード集」は参考になる。
老人ホームの経営側からの話が多く、それなりに参考にはなる。しかし、著者は自身も含め職員に対し「負け組」と言い、男女職員の働きぶりを酷評しており、かなり決めつけが強い人と見える。