hiyamizu's blog

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吉田修一『静かな爆弾』を読む

2019年05月07日 | 読書2

 

吉田修一著『静かな爆弾』(中公文庫よ43-1、2011年3月25日中央公論新社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

テレビ局に勤める早川俊平はある日公園で耳の不自由な女性と出会う。音のない世界で暮らす彼女に恋をする俊平だが。「君を守りたいなんて、傲慢なことを思っているわけでもない」「君の苦しみを理解できるとも思えない」「でも」「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。静けさと恋しさとが心をゆさぶる傑作長編。

 

早川俊平はTV局で報道局からバラエティに異動させられたが、同僚の諏訪とタリバンによる大仏爆破の取材にチャレンジしている。

ほどんど寝ないような日常を過ごすなかで、耳の聞こえない響子と知り合い、週の何日かは一緒に、静かな日常を過ごす。一緒に暮らそうと誘う俊平に響子は「ずっといると、ここに来れなくなるじゃない」と紙に書いた。

アフガニスタンでNPOの代表している保科から情報を得て、音声の立木とパキスタンに取材に出掛ける。忙しさを理由に一本の電話もいないうちに響子とは連絡ができなくなってしまう。そして、……。

 麻生:俊平とTV局の同期の女性。俊平と関係があったが、5年前に結婚し、一昨年離婚。

 本書は2008年2月に中央公論新社より単行本として刊行。

  

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

TV取材の非人間的な忙しさの一方で、音の無い世界に住む響子との静かな恋愛、生活がより透明感をもって迫る。私には、響子は「ノルウエイの森」の大人しく切ない直子を思わせた。

 

タイトルの「静かな爆弾」の意味がわからない。

「静かな」は響子の音のない世界を意味し、「爆弾」はタリバンによるバーミヤン大仏の破壊を意味するのだろうか? 神宮球場の観客席の無数の顔の「無関心」をドキュメント番組で「爆破」させるという意味なのか?

 俊平が響子と初めて出会い、その後も神宮外苑で逢うことが多く、懐かしい地名が出てくるたびに、私の多感な時を思い出し、顔を上げて遠くを見てしまった。

 

 

吉田修一の略歴と既読本リスト

 


「子供って、誰かに伝えたいと思って、木に登るわけじゃないんだよ。木に登ったらどんな景色が見えるのか、ただ、それが知りたくて登るだけなんだよ。でもさ、年取ってくると、木に登らなくなる。万が一登ったとしても、それを誰かに伝えたいって気持ちが先に立つ。」P.169

 

 

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