hiyamizu's blog

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キャサリン・ライアン・ハワード『ナッシング・マン』を読む

2024年04月03日 | 読書2

 

キャサリン・ライアン・ハワード著、高山祥子訳『ナッシング・マン』(新潮文庫ハ-59-2、2024年1月1日発行)

 

裏表紙にはこうある。

12歳のとき、連続殺人鬼〈ナッシング・マン〉に家族を惨殺されたイヴ。唯一の生存者である彼女は成人し、一連の事件を取材した犯罪実録『ナッシング・マン』を上梓する。一方、偶然この本を読んだ警備員ジムは、自分の犯行であることが暴かれそうだと知り焦燥にかられていた――。犯人逮捕への執念で綴られた一冊の本が凶悪犯をあぶり出す! 作中作を駆使し巧緻を極めた、圧巻の報復サスペンス。

 

連続殺人犯であるジムが、実録本『ナッシング・マン』を初めて手にして驚く様子が、明朝体で表される。

ついで、イブが書いた実録本『ナッシング・マン』が、表紙からなにからそのまま(ゴシック体で)作中作として書かれる。

 

以下、ほぼ交互に両者の視点での話が続く。
読者は犯人ジムの視点の部分を読み、恐怖に駆られながらイヴがどこまで知っているか、など追い詰められる気持ちになってしまう。さらに、イヴの視点の著書を読み進めることにより、事件の実際を徐々に深く知って、犯人に迫っていく通常のミステリーとしての進展を味わう。

このジム視点の物語と、イヴの視点の作中作「ナッシング・マン」が切り替わりながら進んで行くが、途中、予想もできない変化が加わる。

 

 

登場人物

イヴ・ブラック:イヴリン。「ナッシング・マン」の作者。12歳の時、父・ロス、母・ディアドリ、妹・アンナが殺された。事件後、イヴの父方の祖母ナニー(コレット)と二人で暮らす。

なお、作中作の「ナッシング・マン」の「謝辞」の前の「著者紹介」でイヴのその後の幸福が明らかにれている。

 

ジョナサン・エグリン:作家、大学教授。 バーナデッド・オブライエン:編集者

エド・ヒーリー:刑事。イヴと共に約20年前の事件を捜査する。

 

ジム・ドイル:警備員。現在63歳。2000~2001年にかけて強姦、殺人を犯したが、その後18年逮捕されていない。妻はノリーン、娘はケイティ。上司はスティーブ・オライリー

ナッシング・マン:警察が何もわかっていない犯人のことをマスコミが命名。イヴの書いた本の題名でもある。

 

被害者

アリス・オサリヴァン(42歳、暴行)

クリスティン・キアナン(23歳、性的暴行)

リンダ・オニール(34歳、身体的性的暴行)

マリー・ミーラ(28歳、殺害)とマーティン・コナリー(30歳、殺害)

ロス・ブラック(42歳、殺害)とディアドリ・ブラック(39歳、殺害)とアンナ・ブラック(7歳、殺害)

 

本書は本邦初訳

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

作中作で犯人を捜す話と、追い詰められていく犯人の語りが並行して進んでいく構成が独特だし、混乱せずに巧みに描かれているので、楽しめる。

 

サイコ・キラーの犯人に家族を殺されたイヴが犯人を追い詰めるために実録本を出して、人気となる。20年近く普通に暮らしていた犯人がこの本を読んで、逃げ切る為にイヴを・・・。面白くない訳がない。

 

キャサリン・ライアン・ハワード(Ryan Howard, Catherine)

2016年、初のミステリー作品にしてデビュー作でもある『遭難信号』は、英国推理作家協会新人賞(ジョン・クリーシー・ダガー賞)を受賞し、アイリッシュ・ブック・アワードの最優秀クライム・フィクション部門で最終候補となった。
2018年『The Liar's Girl』は、MWA最優秀長篇賞の最終候補に選ばれる。
2020年、『ナッシング・マン』は、CWA賞イアン・フレミング・スティール・ダガーの最終候補となった。

2021年『56日間』

 

高山祥子(たかやま・しょうこ)

1960年、東京生れ。成城大学文芸学部卒業。バロン『世界一高価な切手の物語』、ドーソン『アメリカのシャーロック・ホームズ』、チャールズ『あの図書館の彼女たち』、ソログッド『マーロー殺人クラブ』、ハワード『56日間』『ナッシング・マン』など訳書多数。

 

キャサリン・ライアン・ハワードは、アイデアを、Excelシートを用いてストーリーを作り、プロットの要所を埋めていく。そのExcelシートは時間と共に密度が増していき、また、カラフルになっていく。そんなExcelシートとテキストを行ったり来たりしながら、作品を完成させる。

(https://www.youtube.com/watch?v=z201F3FVLU4 by村上貴史による解説)

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