hiyamizu's blog

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河崎秋子『ともぐい』を読む

2024年07月25日 | 読書2

 

河崎秋子著『ともぐい』(2023年11月20日新潮社発行)を読んだ。

 

新潮社の内容紹介

明治後期の北海道の山で、猟師というより獣そのものの嗅覚で獲物と対峙する男、熊爪。図らずも我が領分を侵した穴持たずの熊、蠱惑的な盲目の少女、ロシアとの戦争に向かってきな臭さを漂わせる時代の変化……すべてが運命を狂わせてゆく。人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河崎流動物文学の最高到達点!!    第170回直木賞受賞作

 

舞台は明治期、日露戦争前夜の北海道東部、白糠の山中。世間と距離を置き、一頭の猟犬と山奥の粗末な小屋に住む猟師・熊爪(くまづめ)は、必要がなければ白糠の町には下りず、山中で自給自足の暮らしを送っている。

 

熊爪が村田銃で鹿を撃ち、腹を裂いて内臓を引きずり出し、新鮮な肝臓を味わう場面から物語は始まる。
仕留めた鹿を担いで白糠の町に向かう。熊爪にとって唯一の社会との接点である門矢商店の井之上良輔が、獲物を高額で買い取ってくれるのだ。良輔の屋敷には妻・ふじ乃、目の見えない少女・陽子がいた。

 

熊爪は山の中で負傷した阿寒の猟師・太一と出会う。冬眠せず狂暴化した、穴持たずの熊を追いかけてきたのだが、逆襲されて目を潰されていた。山中に男を残して行けば、熊が食い、人の味を知る。やむをえず、熊爪は彼を助け、穴持たずの熊を狩る決意を固める。その対決が彼の運命を変えることになる。

 

熊との闘いで大きな傷を負った熊爪は、山で生き続けるか、炭鉱で働くか、決断を迫られる。そこに、陽子の存在がからんでくる。

 

 

初出:小説新潮2022年8月号~2023年7月号

 

 

河崎秋子(かわさき・あきこ)

1979年北海道別海町生まれ。

2012年「東陬遺事」で第46回北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞
2014年『颶風の王』で三浦綾子文学賞、同作で2015年度JRA賞馬事文化賞
2019年『肉弾』で第21回大藪春彦賞
2020年『土に贖う』で第39回新田次郎文学賞を受賞

2023年 本書『ともぐい』で第170回直木賞受賞。

他書に『鳩護』『絞め殺しの樹』(直木賞候補作)『鯨の岬』『清浄島』など

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

熊爪は獣に近い生活をしていて、獣たちの中で生きるために人里で暮らす人間とは違う割り切った考え方をする。この山男の考え方を、それも面白いと感じる私は、四つ星にしたが?

 

鹿を捌く場面など、皮膚を切り開いて、その下の臓物を掴みだし、滴る血は流れ、微かな腐敗の臭いが始まるなど生々しい描写がえぐく、読む気にならない人も多いのではと思う。私は平気で冷静に読める質なので四つ星にした。

 

まさに文明社会が固定されようとする直前の時代の話で、山と里の他にも、新時代に移ろうとする時代にはいろいろ面白そうな話がありそうだと思った。

 

 

コメント
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