hiyamizu's blog

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亀泉きょう『へんぶつ侍、江戸を走る』を読む

2021年02月21日 | 読書2

 

亀泉きょう著『へんぶつ侍、江戸を走る』(2020年8月12日小学館発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

将軍家の駕籠担ぎ・御駕籠之者組に席を置く明楽久兵衛は、剣の腕は一級品。だが、深川の唄い手・愛乃の大首絵を蒐集し、江戸の下水を隅まで熟知する「へんぶつ」ぶりを発揮して、周囲からは「大供」呼ばわりされて侮られていた。
そんなある日、愛乃の急死を知ったことから、物語は動き出す。気づけば、郡上一揆の箱訴を巡り、幕閣、果ては暗愚と呼ばれる九代将軍・家重まで巻き込んだ巨大な渦の中に、久兵衛は巻き込まれていた。

 

「へんぶつ(変物)」とは「変わり者」という意味。


御駕籠之者の明楽久兵衛は剣道の腕は頭抜けているが、趣味は江戸の下水調査というへんぶつ(変わり者)で通っている。愛乃の唄に夢中で追っかけをしていて、子供のような大人の大供(おおども)と呼ばれている。
水茶屋で愛乃がついさっき死んだと知らされた久兵衛は、御駕籠之者の頭・範太郎と共に棺桶がわりの油樽を担いで愛乃の叔父・茂吉の「かし前屋」まで運ぶ。樽の中で愛乃の両目は落ちくぼみ、舌先が唇から出ていた。範太郎が銀のかんざしを愛乃の唇に差し込むと黒く変色した。一服盛られたらしい。


久兵衛は、愛乃に贈ろうと愛乃の大首絵を描いてもらい、漢詩を添えたすだれを弔い合戦とばかり将軍の駕籠の中に貼ってしまった。それを見て驚いた将軍家重は何も言わなかったが、老中伯耆守は息をのんだ。

 

 

亀泉きょう(かめいずみ・きょう)

1984年京都市生れ。

本作品『へんぶつ侍、江戸を走る』がデビュー作。

[アンフィニ]にこうある。

「以前、雑誌N∞「アンフィニ」で、沖縄での生活や子育て事情を描いたエッセイ「いちゃりばちょうでー」を連載してくださった葱里菜於子さんが「亀泉きょう」というペンネームで、時代小説で作家デビューを果たしました!」

 

新人作家なのに、江戸の生活に関する小さな知識がいろいろなところに散りばめられている。巻末には28冊の江戸に関する参考文献が並ぶ。よく勉強している。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

直参旗本なのに駕籠かきというユニークな存在を取り上げて、唯一一揆側が勝利した郡上一揆を関連付け、趣味で詳しい下水道を利用するなど、よく練られた話に仕上げている。
新人なのに、時代考証が求められる時代物を扱い、江戸のトリビア情報も豊富に提供している点にも感心する。

 

 

登場人物

明楽(あけら)久兵衛:御家人。将軍の御駕籠を担ぐ御駕籠之者。25歳。剣道道場では首席格。「お愛乃連」

嘉助(かすけ)久兵衛の老下男

津ね:すだれ屋邦左衛門の娘。久兵衛の幼馴染。17歳。器量よしで丈夫ではねっかえり。

愛乃(えの)富貴屋の芸者。唄が人気で追っ駆け「お愛乃連」がいる。郡上の庄屋の娘るい。妹分はたえ。

今下誠助:御駕籠之者。久兵衛の先輩。

井原範太郎:御駕籠之者の頭。60代

明楽源之助:久兵衛の従兄。御庭之者(通称御庭番)

竹之進:金森家の徒士(かち)。久兵衛の友人。「お愛乃連」

茂吉:愛之の叔父。質屋「かし前屋」を経営。

吉右衛門:茂吉の同郷者。詩歌好きの風雅者

 

徳川家重:江戸九代将軍。吉宗の長男

大岡出雲守忠光:家重の側用人

田沼主殿頭(とのものかみ)意次(おきつぐ)家重の小姓頭

千瀬:家重の側室。元の名は逸(いつ)で遊女屋の娘。

 

金森兵部少輔頼錦(よりかね)美濃郡上藩主

本田伯耆守正珍(まさよし)幕府老中

本田長門守忠央(ただなか)幕府寺社奉行

大橋近江守親義:幕府勘定奉行

 

藤次郎:郡上の農民

 

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