hiyamizu's blog

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石田夏穂『我が友、スミス』を読む

2023年01月23日 | 読書2

 

石田夏穂著『我が友、スミス』(2022年1月25日集英社発行)を読んだ。

 

題名を見て、スミスってカッコいい奴なんだろうな、と思った。主人公が女性だろうとわかって、一体どんな物語なんだろうと、同志もの? 恋愛もの?……、いろいろなケースを想像してしまった。

ところが「ギッチョン、パイのパイのパイ」。「火曜は脚の日だ」と始まる??
スミスとは、スミス・マシンのことで、筋トレのトレーニング・マシンのことだった。若き女性が筋トレを始め、はまって、ボディビルの大会に疑問を抱えながら挑戦するという話だった。以下、様々な筋トレマシンと、筋肉の話が延々と続く。昔、相方とフィットネスに週2、1年少し通っただけの私でも、これが面白い。ついつい引き込まれてしまうという、実に変な話なのだ。変な話、だ~い好き!

 

 

集英社の内容紹介

「別の生き物になりたい」。
筋トレに励む会社員・U野は、Gジムで自己流のトレーニングをしていたところ、
O島からボディ・ビル大会への出場を勧められ、
本格的な筋トレと食事管理を始める。
しかし、大会で結果を残すためには筋肉のみならず「女らしさ」も鍛えなければならなかった――。

鍛錬の甲斐あって身体は仕上がっていくが、
職場では彼氏ができてダイエットをしていると思われ、
母からは「ムキムキにならないでよ」と心無い言葉をかけられる。
モヤモヤした思いを解消できないまま迎えた大会当日。
彼女が決勝の舞台で取った行動とは?
世の常識に疑問を投げかける圧巻のデビュー作。

 

以下、いずれも女性

U野:主人公で語り手。強くなりたくてマジに、ストイックに筋トレ、食事制限に励む。大会に向けては、女らしさを身に付ける必要に悩む。会社では恋人ができたから自分磨きを始めたと誤解した男性同僚から「女性は大変ですね」と言われる。 155㎝。29歳。

O島:歴史のあるボディビル大会で七連覇した大御所でパーソナル・ジム・Nジムの代表。U野に、自分のジムでトレーニングすると「別の生き物になるよ」、「大会に出てみない?」とスカウトする。

T井:U野のパーソナルトレーナー。毎年ファイナリストに残る選手でもある。176㎝。

E藤:トレーニング以外の、減量、脱毛やピアスの穴あけ、ビキニ選びやハイヒールで歩く特訓などルックスが大会仕様になるよう指導するスペシャルコーチ。元日本ユニバース日本代表。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

本邦初の筋肉小説の評もあり、ニッチ分野だ。しかし、ほとんどの詳しくない人が読んでも面白いだろう。ただただひたむき、ストイックに強く美しい筋肉を求める女性に呆れて読み進めると、いつのまにか自分が未知の筋肉世界に入り込んでいて、主人公に共感している。淡々とした主人公の呟き、語り口に誘い込まれる。
トレーニング・マシンや、筋肉のための食生活も丁寧で、押しつけがましくない説明は読みやすい。

 

ジェンダーフリーの当てが外れた話以前に、私には未知のボディビルダーの世界が面白かった。

 

 

石田夏穂 (いしだ・かほ)

1991年埼玉県出身。東京工業大学工学部卒。2021年「我が友、スミス」で第45回すばる文学賞佳作、第166回芥川賞候補作。

東工大出身の小説家って、知らないのだが?

 

 

トレーニー:筋トレする人

スミス・マシン:バーベルの左右にレールがついているので、レールに固定されていて、動作の軌道が決まっているトレーニング・マシン。

ブルガリアン・スクワット: 頭の後ろ側で手を組み、胸を張って背筋を伸ばし、後方の台座に(右)足の甲を下にして乗せた状態でスクワットを行う。 お尻を後ろに引くイメージで左膝が90度になるまでゆっくりと腰を下ろす。このとき、左膝がつま先よりも前に出ないようにする。

 

 

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