hiyamizu's blog

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中川恵一『がんと患者の物語』を読む

2017年03月23日 | 読書2

 

 

中川恵一著『専門書が伝えない がんと患者の物語』(新潮新書508、2013年2月発行)読んだ。

 

いざという時でなく、平常のときに、がん、病院、医者のことを冷静に学んで欲しい。お金の問題、医者とのつきあい方、放射能のリスク、検診の落とし穴を物語仕立てで語る。

 

第1話 直腸がんの佐々江さんは余命と治療費を考えた。

 

日本のGDPに対する医療費の割合は8%。米国の16%の半分で先進7ヵ国の最下位。医師の数も最下位。

 

「抗がん剤」は、細胞分裂が盛んな細胞により強く作用します。そのため、がん細胞だけでなく、骨のなかで血球を作る骨髄や、小腸の粘膜など、次々と新しい細胞を供給する組織の細胞は、抗がん剤でダメージを受けやすく、「吐き気」や「下痢」、「白血球の減少」などの副作用が起こります。

抗がん剤で減少した赤血球、血小板は輸血で増やせるが、輸血では白血球を増やせないので、薬剤G-CSFの注射で増やす。

 

第2話 小児がんの子を持った夫婦はどこに希望を見出したか?

 

小児がん全体の「約7割」は治ります。・・・「抗がん剤」や「放射線治療」が効きやすい。

 

第3話 放射能リスクを冷静に考える。

第4話 放射能リスクを再度冷静に考える。

セシウムは体内に取り込まれると全身の細胞にほぼ均等に分布する。また、尿で排泄されるので、乳児で9日、9歳児で38日、30歳で70日、50歳で90日経つと半分になる。

 

100ミリシーベルト以上被ばく(累積)すると、がんで死ぬ危険性は0.5%高くなる。200ミリシーベルトで約1%。

 

毎時1マイクロシーベルトの場所でも、100ミリシーベルトに達するには11年以上かかる。

 

食物からは年間約1ミリシーベルトの「内部被ばく」を受けている。

 

日本の自然被ばく量は年間2ミリシーベルト。

 

原爆の死者のほとんどが、爆風と熱線によるもの(爆心地の温度は3千度)。4シーベルトの放射線を浴びると、半分の人が死ぬが、皮膚の温度はほとんど上がらないので火傷はしない。

 

100ミリシーベルト以下の被ばくによる影響は不明だが、線量が増えるとともに発がんが増えると想定する「直線しきい値なしモデル」が国政的考え方。

 

ハーバード大学の調査で、がんの原因の3割がタバコ、3割が「不適切な食事」。遺伝要因は5%、食品添加物は1%未満。

 

高齢になれば、ほぼ全員が小さな甲状腺がんを持っている。問題は「がんがあるかどうか」ではなく、「がんで死ぬかどうか」。

 

 

第5話 甲状腺がんの由香さんは検査に戸惑った。

検診に不適ながんや疾患(甲状腺がん、前立腺がん、脳ドックなど)があり、検診することでかえって要らぬ不安感をいだく結果になったり、医療側の拝金主義の餌食にされたりする場合もあるということです。

 

第6話 子宮頸がんの裕美さんは原因に思い悩む。

第7話 ナースたちは医者とのつき合いかたを議論する。

 

コラムでは、大沢親分、天皇陛下、スティーブ・ジョブズ、忌野清志郎、桑田佳祐のがんなどについて語る。

 

初出:「週刊新潮」連載の「がんの練習帳」の2010年~2012年から抜粋、再構成した。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

がんについては、一般の人が誤解や、バランスを欠いた理解をしている点について、わかりやすく事実を説明していて、お勧めだ。

 

放射能の害については、私は著者の「福島原発の放射能リスクは心配いらない」という主張が合理的だと思い、賛成するが、「危険だ」という人の主張も知ってみたい。いずれにしても、原発問題は、データに基づく冷静な議論が必要だと思う。

 

以下の話には考えさせられた。

「私は17の時、こんな言葉を読みました。『毎日これが人生最後の日と思って生きるとしよう。そのうち必ずそうなるのだ』。非常に強烈な印象を受けました。それから現在に至るまで33年間、私は毎朝鏡を見て自分に問いかけてきました。『もし今日が人生最後の日だとしたら、今日やる予定のことを私は本当にやりたいだろうか?』もしも答えがNOという日が何日も続くようならば、何かを変えなくてはいけない」(スタンフォード大学でのスティーブ・ジョブズのスピーチ)

 

 

中川恵一(なかがわ・けいいち)東京大学医学部附属病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長
1960年東京生れ、1985年東京大学医学部医学科卒。放射線医学教室入局。

『がんの練習帳』、『がんのひみつ』、『がんの正体

中川恵一、養老孟司、和田秀樹著『命と向き合う - 老いと日本人とがんの壁

 

 

中川先生推薦のがんに関するサイト


がん情報サイト 
国立がんセンターの「がん情報サービス」 :各種がんのイラスト入り解説

「日本対がん協会」 :がんと、がん検診の啓発

がん研有明病院の「がん・医療サポートに関するご相談」 :がんになって最初に読む入門篇

「がん情報サイト」 :米国国立がん研究所配信の最新がん情報(日本語)など

セコンド・オピニオン外来
「がん診療連携拠点病院」 :地域の相談窓口

「日本臨床腫瘍学会」 :抗癌剤の専門医のリスト

「日本放射線腫瘍学会」の専門医名簿 :認定施設のリストもある

緩和ケア病棟のある病院の情報
国立がんセンターがん対策情報センターのHP :緩和ケア病棟のある病院の情報 

在宅ホスピス協会のHP 

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