hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

フランツ・カフカ『絶望名人カフカの人生論』を読む

2016年11月14日 | 読書2

 

 

フランツ・カフカ著、頭木弘樹編訳『絶望名人カフカの人生論』(2011年11月3日飛鳥新社発行)を読んだ。

(新潮文庫からも出版されている)

 

読む前にこのブログで検索・チェックし忘れ、2度読みしてしまった。まったく思い出さず、この感想文を書き出して4年前の文章を見つけた。ショック!

 

 

 

著者より(出所がわからなくなってしまった)

どういう本なのか、少しご説明させてください。
絶望をすすめる本ではありません。
絶望からの立ち直り方について書いた本でもありません。
立ち直りの段階の前の「絶望の期間」の過ごし方について書いた本です。

(著者の頭木さんは、筑波大3年のとき、難病の潰瘍性大腸炎となり、入退院を繰り返す生活が10年以上続いた。そんな日々に、信じていれば治る、といった明るい励ましの言葉は全く耳に入らなかった。支えてくれたのが、おそろしくネガティブな嘆きで満ちたカフカの日記や手紙だった。頭木さんは1998年に手術を受け、かなり健康を取り戻した。)

 

 

バルザックの散歩用ステッキの握りには、

「私はあらゆる困難を打ち砕く」と刻まれていたという。

ぼくの杖には、「あらゆる困難がぼくを打ち砕く」とある。

共通しているのは、「あらゆる」というところだけだ。

 

ずいぶん遠くまで歩きました。五時間ほど、ひとりで。

それでも孤独さが足りない。

まったく人通りのない谷間なのですが、それでもさびしさが足りない。

 

ぼくの人生は、自殺したいという願望を払いのけることだけに、費やされてしまった。

 

『変身』に対するひどい嫌悪。

とても読めたものじゃない結末。

ほとんど底の底まで不完全だ。

当時、出張旅行で邪魔されなかったら、

もっとずっとよくなっていただろうに……

 

いつだったか足を骨折したことがある。

生涯でもっとも美しい体験であった。

 

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

 

ともかく、この言葉にやられた。「私だって、ここまでひどくない」と思えてしまう。

将来にむかって歩くことは僕にはできません。

将来にむかってつまずくこと、これはできます。

いちばんうまくできるのは、倒れたままでいることです。

 

驚異的なネガティブぶりに思わず笑ってしまい、読み進めると、あまりにつらそうな様子にしんみりし、小説の世界をひっくり返したあのカフカが・・・と、少し元気になっている自分に気がついた。

 

「第5章 親に絶望した!」は19ページに渡って、「お父さんがいけない!お父さんがいけない!」と駄々こねていて、この章はおもろない。

 

 

フランツ・カフカ Kafka,Franz(1883-1924)

オーストリア=ハンガリー帝国領当時のプラハで、ユダヤ人の商家に生る。

プラハ大学で法学を修めた後務めた保険会社を1年もたたずに辞め、労働災害保険協会で実直に勤めた。非常に有能で、本人の意に反し昇進を続けたが、結核で41歳で死去。

『変身』のみ生前発表。死後、『アメリカ』、『城』、『審判』の長編、短編、厖大なメモなどが残されていた。

カフカ・コレクション ノート1 万里の長城』、『絶望名人カフカの人生論

 

 

頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)

筑波大学卒。カフカの翻訳と評論を行っている。

著書『希望名人ゲーテと絶望名人カフカの対話』、訳書フランツ・カフカ『「逮捕+終わり」-『訴訟』より』

 

 

著者は書いている。

彼は何事にも成功しません。・・・

彼は生きている間、作家としては認められず、普通のサラリーマンでした。

そのサラリーマンとしての仕事がイヤで仕方ありませんでした。でも生活のために辞められませんでした。結婚したいと強く願いながら、生涯、独身でした。・・・

彼の書いた長編小説はすべて途中で行き詰まり、未完です。

死ぬまで、ついに満足できる作品を書くことができず、すべて焼却するようにという遺言を残しました。

 

初めて会った後で、カフカはフェリーツェの印象を日記に書いています。

「女中かと思った」「間延びして、骨ばった、しまりのない顔」「所帯じみた服装」「つぶれたような鼻」「ごわごわした魅力のない髪」「がっしりした顎」

まるっきり悪口のようです。ところが、そのすぐ後に続けて、カフカはこう書いているのです。「もうぼくは揺るぎない決断をくだしていた」。

つまり、カフカのほうの一目惚れなのです。

カフカの方からの二度の婚約破棄のあと、二人は別れます。

フェリーツェのほうは、カフカと別れた後、お金持ちの実業家と結婚し、子供も二人できました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする