hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

西加奈子『サラバ!』を読む

2015年10月14日 | 読書2

 

西加奈子著『サラバ!(上下)』(2014年11月3日小学館発行)を読んだ。

 

直木賞受賞作、本屋大賞2位

 

1977年5月、イラン郊外の病院で、圷歩(あくつ・あゆむ)は左足から登場した。逆子で生まれのだ。父・健太郎はカメラ会社に勤め、身長が183cmで痩せていて、イランに家族とともに海外赴任していたのだ。母・奈緒子は8歳年下で、小作りな顔に背が高く美人に見られた。変わり者の4歳上の姉・貴子も一緒だった。イラン革命のあと、しばらく大阪に住んだ彼は小学生になり、今度一家はエジプトへ赴任した。 

 

姉は常にマイノリティ側にいないと怒り、注目されていないと癇癪をおこす。母にとって姉は得体の知れない、手に負えない子供で、ひたすら優しい父は姉を溺愛していた。圷家では、「母vs姉、そして、その間をオロオロと揺れ動く父」という図式があり、歩は家の中で、なるべくおとなしく、目立たないように努めた。

 

エジプトで、一家はカイロのナイル川に浮かぶゲジラ島のザマレク地区という海外赴任組が多く住む。みすぼらしい服装だが気品ある地元のエジプシャンの少年ヤコブと親友になる。ヤコブは少数派のキリスト教に近いコプト教の信者だった。2人は互いの言葉が解らないのに、ちゃんと意志疎通ができていた。アラビア語の「さよなら」である「マッサラーマ」と「サラバ」を組み合わせて「サラバ」と言っていたが、「サラバ」はいつしか「俺たちはひとつだ」など二人を繋ぐ、魔術的言葉になった。

 

下巻では、東京の私大に入った歩はモテテ、晶、紗智子など入れ替わり立ち代わり彼女を代えていく。しかし、ビッチの鴻上なずなとは友達のままだった。紗智子に裏切られてからは、転落が始まる。ライターの仕事にも熱が入らないようになり、薄毛が気になり、こんなレベルではと思う澄江とだらだらと交際するようになる。

やがて、・・・。

 

初出:「きらら」2013年12月号~2014年10月号を大幅加筆改稿

 

表紙カバーデザインは、著者直筆の16枚のイラストを各4枚に分割してコラージュしたもの。(『サラバ!』特集より)

 

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

なにしろ村上春樹も長いのでほとんど読まない私だ(春樹さんがノーベル文学賞を受賞したらどうしようか?)。この小説も年寄りが読むには長すぎたが、「良く頑張りました!」。と言っても、読みやすいことは読みやすい。さすが直木賞。

 

歩と貴子の成長物語と言えるが、貴子のエキセントリックな性格は面白いが、極端に振れ過ぎる軌跡には付いて行けずシラケ気味になってしまう。歩のチャラオぶりからの転落の道は、非モテオの私には小気味良かったので、再生への過程には素直に感動できなかった。

 

珍しいイランやエジプトでの日本人の生活が出てくるのには興味深深だった。

 

 

西加奈子の略歴と既読本リスト

 

 

 

第1章       猟奇的な姉と、僕の幼少時代

第2章       エジプト、カイロ、ザマレク

第3章       サトラコヲモンサマ誕生

第4章       圷家の、あるいは今橋家の、完全なる崩壊

第5章       残酷な未来

第6章       「あなたが信じるものを、誰かに決めさせてはいけないわ。」

コメント
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