hiyamizu's blog

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前野隆司『幸せのメカニズム』を読む

2014年03月01日 | 読書2

前野隆司著『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』(講談社現代新書2238、2013年12月発行)を読んだ。

ロボット学者が理系のアプローチで、幸せとは何か、どうすれば得られるかという難問に挑む。
著者は実践的に応用できる幸福学を目指しており、良く工学で用いられるように、単純化したモデルで幸せの仕組みを考えた。さらに、1500人へアンケートを行い、結果を多変量解析の因子分析で解析し、幸せに最も深く関係する四つの要素を見つけ出した。

幸せの四つの因子
「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)

自分がこうなれば幸福だろうと思っていたことは、意外と違っている(フォーカシング・イリュージョン)。
人生に満足している人は(長期スパンの主観的幸福)、年収に比例するが、楽しいという人は(短期スパンの主観的幸福)、年収1千万を超えると年収には無関係。年収1千万円を超えてもなお、感情的幸福を求めてさらにお金が欲しいと思ってしまう。

目の前に確実に100万円儲かる方法と、50%の確率で200万円儲かる方法がある場合、前者を選ぶ人が多い。逆に、今売ると100万円損するが、少し待つと50%の確率で損失が200万円になる(残り50%は損失ゼロに)場合は、後者を選ぶ人が多い。利益は、待てずに早めに売って確定してしまうし、損はついつい売れなくて結局大きな損になりがち。
幸せについても同じで、いいことが二つあっても人はひとつで満足しがちだ。逆に、悪いことが起きたとき、その後解消されるか、あるいは2倍になるとき、人はギャンブルの方を選んでしまいがちだ。
この結果、期待値はおなじで平均の差はでないが、分布パターンは異なる。不幸の側は散らばりが大きくなり、運の悪い人はとても不幸に陥る。幸福の側は小さくまとまり、大きな幸福を得る人は少なくなる。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

前半はさすが理工系、合理的で私には解りやすかった。どうみてもモデルを簡単化しすぎているが、基本的には納得できる。しかし、幸せにロマンや、より複雑なわかりにくさを求める人は、すれ違いに終わるだろう。

後半は、幸せになるためのノウハウが並び、多くは納得できるが、どこにでもあるノウハウ本と変わらない内容だ。

著者は、これからの日本はGDP増加を求めずに、小さくても良いから創造の幸せを求めるべきと語る。海外旅行より道端の花に幸せを感じるようにという趣旨だ。
しかし、その著者が、憂鬱となりがちな月曜日を迎えないためには、土日も働くべきというのはどうだろうか。著者は働くことに趣味も含めているのだが、一生懸命の時代は終わりにして、のんびりする幸せを味わいたいと年寄りの私は思う。



前野 隆司(まえの・たかし)
1962年山口県生まれ、広島県育ち。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授。ロボットと人間の心に関する著作が多く、心の哲学への関心が強い。
1984年 東京工業大学工学部機械工学科卒業、1986年 同修士課程修了、1986年 キヤノン(株)入社
1990年 7月 カリフォルニア大学バークレー校機械工学科訪問研究員
2006年 慶應義塾大学理工学部機械工学科教授
著書は、『脳はなぜ「心」を作ったのか―「私」の謎を解く受動意識仮説』、『「死ぬのが怖い」とはどういうことか』、『脳は記憶を消したがる』



以下、私のメモ

「自分を変える」ためには「メタ認知」が必要。自分が笑ったり怒ったりしている。これが「認知」。笑ったり怒ったりしている自分を客観的に見ている心の働きが「メタ認知」。

アメリカのある小学校では、「好きでない人とは仲良くしなくてもいい。ただし、好きでない人の意見も、好きな人と同様に尊重し、たとえ嫌いな人とグループになっても、その人と協力して質の高い成果をあげる知性を身につけるべき」と教える。(野口桂子『あなたの子どもを救えますか』)

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