hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

鶴川健吉『すなまわり』を読む

2013年11月28日 | 読書2

鶴川健吉著『すなまわり』(2013年8月文藝春秋発行)を読んだ。

相撲記事はすべて切り抜き、相撲中継に熱中する少年は、体格が貧弱で行司になる道を選ぶ。角界の裏方にも厳しい稽古、生活があり、入門前の強いあこがれとのギャップの中で送る青春。珍しい題材とリアルな描写が評価された芥川賞候補作「すなまわり」。
不快なアパート暮らし、ブラック状態の会社との往復、つつましく惨めな若者の生活を丹念に、おかしみを匂わせて描く、文学界新人賞受賞作「乾燥腕」。

初出:「文學界」すなまわり2013年6月号、乾燥腕2012年6月号



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

相撲部屋の厳しい稽古の様子が細かく描写され、相撲好きとしては興味深く読んだ。どうしても太れずに負け続け、風呂場で一人泣く序二段の若者が悲しい。多くの者がボロボロとこぼれるようにやめていく世界。

芥川賞選考会で、山田詠美とともに二重丸を付けた小川洋子さんの選評は、「主人公は、挫折も成長も拒否する。傷ついた自分を哀れんだり、希望を見出そうとしてもがいたり、理不尽な他者を攻撃したりしない。自分の居場所をただありのままに描写するだけだ。にもかかわらず、彼の抱える空虚さがひっそりと浮かび上がって見えてくる。」。
他の選考委員は、「行司という特殊な経験」「適格な描写」は評価するが、もっと深味が欲しいと語った。




鶴川健吉(つるかわ・けんきち)
1981年東京生まれ。都立高校中退後、相撲部屋に行司として入門。2002年引退し、入学。
2007年大阪芸術大学芸術計画学科卒後、
2010年、『乾燥腕」で第110回文學界新人賞を受賞。
2013年7月、『すなまわり』で第149回芥川賞候補。



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