hiyamizu's blog

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円城塔『道化師の蝶』を読む

2013年04月25日 | 読書2

円城塔著『道化師の蝶』(2012年1月講談社発行)を読んだ。

芥川賞受賞した「道化師の蝶」と、同じ群像初出の中編「松ノ枝の記」を加えて単行本化。

講談社の宣伝はこうだ。
正体不明&行方不明の作家、友幸友幸。作家を捜す富豪、エイブラムス氏。氏のエージェントで友幸友幸の翻訳者「わたし」。小説内をすりぬける架空の蝶、通称「道化師」。
東京-シアトル-モロッコ-サンフランシスコと、 世界各地で繰り広げられる“追いかけっこ”と“物語”はやがて、“小説と言語”の謎を浮かび上がらせてゆく――。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

私にはこの本の良さが、ほとんど理解できなかったが、言語とは何かについて考えさせられる部分もあり、部分的には面白いところもあった。
しかし、筋がなんとなくしか読み取れなかったので、小説の構造が理解できなかった。ストーリーをとらえられないと面白いと感じない癖がついてしまっているのだろう。小説には、もっと違う楽しみ方があるのだろうが。
『寝床で読むに限る』小説、「睡眠導入剤」という評判は哀しい。



円城 塔(えんじょう・とう)
1972年北海道生まれ。
東北大学理学部物理学科卒業。
東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。
北大や京大などの研究員を経て、2007年「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞、2010年『烏有此譚』で野間文芸新人賞、2011年に早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞を受賞。他の作品に『Self-Reference ENGINE』『Boy's Surface』『後藤さんのこと』『これはペンです』などがある。



第1章で、語り手の「わたし」は、銀色の虫取り網で着想を捕まえてはビジネスにしているエイブラムス氏に飛行機の中で会う。彼は「旅の間にしか読めない本があるとよい」という「わたし」の着想を捉え、『飛行機の中で読むに限る』など、一連の『~で読むに限る』シリーズをヒットさせる。

第2章では、この第1章は、希代の多言語作家の友幸友幸の『猫の下で読むに限る』という小説であることが明らかになる。この作家の無活用ラテン語で書いた作品の、1章とは別の「わたし」の日本語訳だ。友幸友幸は、行く先々の国の言語を約1年で習得し、その国の言葉で小説を書き、別の国に移動する。

第3章は、モロッコの古都フェズで、お婆さんからフェズ刺繍と土地の言葉を習っている女性が語り手。
この女性が飛行機の中で隣同士の席にすわった女性二人のおしゃべりをそばで聞いている過去の場面に移る。そして、女性は自分がいつかその小さな捕虫網を編み、骨董屋で売られ、機内の女性の片方(A・A・エイブラムス)がそれを買うことになると直感する。第1章の二人は女性だったらしく、この章の"わたし"こそ、友幸友幸らしい。

第4章の語り手は第2章の翻訳者と同じ(多分)で、「手芸を読めます」といってA・A・エイブラムス私設記念館に採用され、友幸友幸の捜索をして定期報告をする。ここでも言語そのものについて、ややこしい話が展開される。

第5章の語り手は、3章の語り手と同じ(多分、友幸友幸)。エイブラムス氏が捕まえた蝶を見せた学者らしき老人が訪ねてきて、ある特殊な蝶を捕まえる網を編んでほしいという。わたしが編みはじめると、物語は第1章に戻り、全体が円環構造になる。







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