hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

ヴァレリー・プレイム・ウィルソン『フェアー・ゲーム』を読む。

2012年02月18日 | 読書2
ヴァレリー・プレイム・ウィルソン著、高山祥子訳『フェアー・ゲーム アメリカ国家に裏切られた元CIA女性スパイの告白』2011年11月ブックマン社発行、を読んだ。

まず、黒く塗られたこの本をご覧あれ。これは中国の本、あるいは戦前の日本の本ではない。現在の自由の国アメリカで出版された本なのだ。全編にある墨字はCIAによるものだ。



ご存じない人のため、まず、ブックマン社のHPにある、国際ジャーナリストのローラ・ローズン氏による後書き(原著巻末付録にのみある)から「プレイム事件」の概要を説明する。
http://www.bookman.co.jp/esp.php?_page=detail&_page2=myg71

私の要約:ブッシュ政権はイラク侵攻の理由とされた大量破壊兵器がイラクになかった責任をCIAに押し付けようとし、CIA幹部もこれを支持した。
しかし、元大使のジョセフ・ウィルソンは「フセインが500トンのウランをニジェールに求めてはいなかった」ことをホワイトハウスは既に知っていたのだと明らかにした。
大統領選挙を1年後に控えたチェイニー副大統領と補佐官スクーター・リビーは、ジョセフ・ウィルソンの妻がCIAの核兵器拡散防止課で働いているからあんな事をいうのだと、記者に耳打ちし、彼の信頼性を傷つけようとした。
これにより、妻のヴァレリー・プレイムはCIAの秘密諜報員の身分を暴露され危険に陥った。これが「プレイム事件」だ。

ブッシュ再選後に、補佐官リビーは有罪となるが、ブッシュは減刑し収監されることはなかった。
なお、この後書きには、ヴァレリーのCIAでの仕事など本書の黒字部分を含む内容がかなり詳しく明らかにされている。

この本でヴァレリー・プレイム・ウィルソンは、CIAに入るまで、CIAでの訓練、夫ジョセフのニジェール行きの経緯、身分を暴露されてからの苦しみ、退職後執筆したこの本のCIA検閲への抵抗などについて書いている。

題名のフェア・ゲーム〔fair game〕とは、<公平なゲーム>の意味を持つ一方で、攻撃や批判、嘲笑などの<恰好の的>、<都合のよい標的>、<いいカモ>というような表現で用いられる



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

ちょっと記述が詳しすぎるが、権力というものがいかに強引であくどいが実感できる。なんといっても実際に起ったことなのだ。
少なくともイラク戦争に関しては、政権側がいい加減な、あるいはウソの情報を新聞記者に流し、新聞が事実として書いて世論を導くことが行われた。後程、事実でないと判明しても記者は情報源を明らかにせず、退職することになっても、政府関連機関に雇われる。

森林地帯や沼地での戦闘訓練などCIAでの訓練の様子に興味をひかれた。
CIAの面接の際、「ホテルであなたが情報提供者会っているとき、突然ドアを叩く音がして『警察だ、中に入れろ!』と声がしたらどうしますか?」と質問された。彼女の答えは「ブラウスを脱いで相手にもそうさせ、即座にベッドに飛び込みます」だった。



ウィルソン,ヴァレリー・プレイム Valerie Plame Wilson
元CIA秘密諜報員。1963年、アラスカ州アンカレッジのエルメンドルフ空軍基地にて生まれる。ペンシルバニア州立大学の学士号及びロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)とベルギーの欧州大学院大学の修士号を持つ。CIA任務中は、敵国の大量破壊兵器調査や反核拡散の作戦行動など幅広く仕事をこなしていた。元大使である夫のジョー・ウィルソンとの間には双子の子どもがいる。そして現在は、家族ともどもニューメキシコで暮らしている

高山 祥子
翻訳家。1960年東京都生まれ。成城大学文芸学部ヨーロッパ文化学科卒業

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