藻谷浩介著『デフレの正体 ?経済は「人口の波」で動く』角川oneテーマ21、2010年6月角川書店発行、を読んだ。
経済成長の低迷は、景気変動とは関係なく、現役世代が減少し、その需要が縮小しているので内需が縮小することが原因だ。
経済弱体化の理由は、国際競争力の減退ではない。実際、日本の輸出額はバブル期に比べて倍増している。経済弱体化の理由は、内需の縮小である。
たとえば、バブル崩壊後の就職氷河期とされる1990~95年に、実際は日本の就業者数は増えていた。その逆に、「戦後最長の好景気」と重なる2000~05年には就業者数が減っている。
内需と景気が連動しなくなっている。
いま起きているのは、クルマや家電、住宅など、主として現役世代にしか消費されない商品の、生産年齢人口=消費者の頭数の減少に伴う値崩れだ。
若い女性がフルタイムで働いている率が高い都道府県ほど、出生率も高いという相関がある。
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
著者の主張するように、経済の低迷の一因は、現役世代の減少・需要の縮小による需要の縮小だろうと思う。しかし、それが主因なのかは疑問が残る。ゆっくりとした全体の流れは、当然若い世代の人口減少による経済の低下だろう。しかし、世界経済のうねりの中で日本としてやれる中短期の対策はいろいろあり、そのための経済分析も大切だと思う。
著者は地域経済の現場から日本経済全体を見て、考察を加えている。各種政府統計を上げていわゆる経済学者の論を否定しているが、考え方自体が限られたデータから推測する帰納法であり、全体を見ていない。そして、マクロ経済を否定する事が多い。
指摘しているいくつかの事実にはなるほどと思うが、論の進め方が強引で、飛躍が多い。
例えば、どうすれば良いかについて、著者の案の一つは、「高齢者が貯蓄ばかりして、若い世代が消費しないから、景気は悪化した。だから高齢者から若い世代へ所得を移せば良い」
というものがあるが、ネットで見ると、「高齢者は年金の全額を使い、さらに、貯蓄を取り崩し、消費性向は 1 を上回る。現役世代は必死に貯金し消費性向が低い。」というものがあった。高齢者の私は、個人的には著者に賛成であるが、統計的、経済学的結論は不明だ。
また、今後の対策として、観光収入の増大策、ブランド向上による輸出増大を挙げているが、直感的には量的効果は大きくないという気がする。
著者の極端な意見に対して、ネットなどで激しい論争があるようだが、論争でなく冷静な議論が必要なのだが。
藻谷浩介(もたに・こうすけ)
1964年山口県生れ。1988年東京大学法学部卒。現、日本政策投資銀行参事役
地域振興のコンサルティングが専門で、過去10年間に全国で4,000回近く講演を行う。
経済成長の低迷は、景気変動とは関係なく、現役世代が減少し、その需要が縮小しているので内需が縮小することが原因だ。
経済弱体化の理由は、国際競争力の減退ではない。実際、日本の輸出額はバブル期に比べて倍増している。経済弱体化の理由は、内需の縮小である。
たとえば、バブル崩壊後の就職氷河期とされる1990~95年に、実際は日本の就業者数は増えていた。その逆に、「戦後最長の好景気」と重なる2000~05年には就業者数が減っている。
内需と景気が連動しなくなっている。
いま起きているのは、クルマや家電、住宅など、主として現役世代にしか消費されない商品の、生産年齢人口=消費者の頭数の減少に伴う値崩れだ。
若い女性がフルタイムで働いている率が高い都道府県ほど、出生率も高いという相関がある。
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
著者の主張するように、経済の低迷の一因は、現役世代の減少・需要の縮小による需要の縮小だろうと思う。しかし、それが主因なのかは疑問が残る。ゆっくりとした全体の流れは、当然若い世代の人口減少による経済の低下だろう。しかし、世界経済のうねりの中で日本としてやれる中短期の対策はいろいろあり、そのための経済分析も大切だと思う。
著者は地域経済の現場から日本経済全体を見て、考察を加えている。各種政府統計を上げていわゆる経済学者の論を否定しているが、考え方自体が限られたデータから推測する帰納法であり、全体を見ていない。そして、マクロ経済を否定する事が多い。
指摘しているいくつかの事実にはなるほどと思うが、論の進め方が強引で、飛躍が多い。
例えば、どうすれば良いかについて、著者の案の一つは、「高齢者が貯蓄ばかりして、若い世代が消費しないから、景気は悪化した。だから高齢者から若い世代へ所得を移せば良い」
というものがあるが、ネットで見ると、「高齢者は年金の全額を使い、さらに、貯蓄を取り崩し、消費性向は 1 を上回る。現役世代は必死に貯金し消費性向が低い。」というものがあった。高齢者の私は、個人的には著者に賛成であるが、統計的、経済学的結論は不明だ。
また、今後の対策として、観光収入の増大策、ブランド向上による輸出増大を挙げているが、直感的には量的効果は大きくないという気がする。
著者の極端な意見に対して、ネットなどで激しい論争があるようだが、論争でなく冷静な議論が必要なのだが。
藻谷浩介(もたに・こうすけ)
1964年山口県生れ。1988年東京大学法学部卒。現、日本政策投資銀行参事役
地域振興のコンサルティングが専門で、過去10年間に全国で4,000回近く講演を行う。