hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

夏川章介『神様のカルテ2』を読む

2011年04月13日 | 読書2

ベストセラーとなった『神様のカルテ』の続編。

舞台は同じく信州にある「24時間・365日対応」の本庄病院。 漱石かぶれで古めかしい言葉遣いの内科医栗原が主人公。激務が続く、医療の最前線に前回も登場の大学同期の豪傑外科医に、今回さらにこれも大学同期の血液内科医が加わる。これに部長の大狸先生、副部長の古狐先生、しっかりものの東海看護師などお馴染みのメンバーと、山岳写真家で心優し栗原の妻のハルなどがからみ、助け合い、励まし合い厳しい医療現場の現実に立ち向かう。

患者の家族からは主治医なら当然と無限の貢献を求められる。しかし、「いつでも病院にいるということはいつでお家族のそばにいないということです」

ケネディ大統領のスピーチ原稿を多く手掛けた特別補佐官セオドア・ソレンソンの言葉「良心に恥じぬということだけが、我々の確かな報酬である」が困難な状況でつぶやかれる。

「内科医には武器がない。外科医や婦人科医のように、いざとなったらメスが出てきて滞った現状を打破してくれることはない。あるのは、ただ病室を訪れる二本の足だけである。」

「医師の話ではない。人間の話をしているのだ。」

大狸先生が言う。「世の中には常識というものがある。その常識を突き崩して理想にばかり走ろうとする青臭い人間が、私は嫌いだ」「しかし、理想すら持たない若者はもっと嫌いだよ」

現実の著者自身も、「あらたにす」の「著者に聞く」でのインタビューを読むと、「TVも新聞も読まないし、最近の小説は読まないので一番 style="margin-left: 40px;">さらに、「午前7時には病院に行き、帰宅は午後11時頃になる。それから食事をしながら酒を飲むのが楽しみ。本を読むのは午前1時頃からですね」
めちゃくちゃな激務のようだ。

神様のカルテ』で小学館文庫小説賞を受賞しデビュー。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

作者の初めての小説の前作は、困難な状況のもので、自分を犠牲にして戦う医師の姿をストレートに描いた感動物だった。今回はさらに信州の落ち着いた情景描写、登場する人々の心情なども静かに描かれていて、進歩が見られる。
しかし、出てくる人は皆考えられないほど良い人ばかりで、寝るまもなく、家族を犠牲にして働くあまりにも完全な医師の姿が、私にはちょっとばかり空々しく感じられる。


夏川草介(なつかわ・そうすけ)の略歴と既読本リスト




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