hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

「孫の力」を読む

2010年04月25日 | 読書2

島泰三著「孫の力-誰もしたことのない観察の記録」中公新書2039、2010年1月、中央公論新社発行を読んだ。

アイアイというマダガスカルにしかいないサルの研究者が書いた自分の孫娘、近くに住む娘の子、が生まれてから一年生になるまでの観察記録だ。ジジバカの心で、サル研究者の目で、観察した孫の記録は「誰もしたことのない」かどうかは別にして、貴重なものだ。生後まもない頃の赤ん坊のサルとの比較もあるが、言葉をしゃべるようになってからの孫との駆け引きが面白い。厳しい環境のなかで野生のサルを観察する鋭い目と、メロメロのジジバカの心での孫の観察は辛抱強く、その心の成長に深く食い入る。



以下、目についた点をいくつか。

孫バカは人間だけらしい。サルの祖母は孫と同時に自分の子供もいるので、孫を特別に扱わない。

赤ん坊を見れば見るほど、可愛さが増してくる(かわいいシナプスができる)。そして、孫から同じくらいの赤ん坊に目がいき、可愛く思う。
参照:「女性は母として生まれるが、男性は親になって始めて幼児の可愛さを知る


4歳過ぎると、克明に記録された孫娘とジイジのやりとりが面白い。
「ジイジきらい」「ジイジないちゃうぞ、そんなこと言うと。泣いてもいいの」「いい」。・・・「ジイジだけ嫌い」とやりとりがある。しかし、大好きなイチゴはジイジしか洗わない。そこで、「ジイジい、イ・チ・ゴ、おねがーい」 孫娘はすでの若い女性という声を出し、しなさえ作って言う。巷にあるという媚びをわが家の茶の間で聞いたジイジは驚く。

保育園に通う孫娘は「お店屋さんごっこ」が大好きだ。ジイジはなんと3時間半も付き合った。10ページ以上も詳細にやりとりが続く。劣悪な環境でのサル観察が専門のジイジにはなんということもない。わがままな孫娘になんとか抵抗するジイジの苦しくも、実際は楽しくてしかたない様子が浮かび上がる。両親や祖母とはおとなしく従順に遊んでいるようだから、孫娘にとって、抵抗し、しかもときどきからかうようなことをいうジイジは生意気な弟のようなものなのだろうか。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

子育てがこれからの人、孫のめんどうを見ることになりそうな人にはお勧めだ。とくに、初孫誕生2週間の私にとっては。そして、子どもの育児に参加しなかったジイジには必見だ。いや、私は違いますよ。私はジイジではなく、グランパーですから。

それにしても、1、2歳はしつこく同じ遊びをせがむから楽しいのは10分だし、3歳過ぎて反抗期になったらこちらがキレそうだ。いずれにしても、たまにくる孫は可愛くてたまらないだろう。



島 泰三
1946年、山口県下関市生まれ。下関西高等学校、東京大学理学部人類学科卒業。東京大学理学部大学院を経て、78年に(財)日本野生生物研究センターを設立し、ニホンザルをはじめ野生動物の研究をおこなう。その後、房総自然博物館館長、雑誌『にほんざる』編集長、天然記念物ニホンザルの生息地保護管理調査団(高宕山、臥牛山)主任調査員、国際協力事業団マダガスカル国派遣専門家(霊長類学指導)等を経て、現在、NGO日本アイアイファンド代表
日本アイアイ・ファンド」の「ごあいさつ」に島さんの髭面の写真がある。



以下、育児無知の私自身のための個人的記録なので、無視してけっこうだ。

生後3ヶ月
「生まれてすぐの時期に必要なのは、なにより皮膚接触だといわれている」 皮膚は神経系と同じ起源(外胚葉 がいはいよう)で、単に覆いではなく脳につながる神経系の末端だ。

「私が笑いかけると、はじめてはっきり笑った。それは衝撃だった」 その笑いは、大脳生理学によると、人の顔に特異的に向けられた「社会的な笑い」だというが、そんなこととは別に、心に刻まれる人生の灯りだ。

生後4ヶ月
声を長く出すようになった。

半年後
両親がわかり、親が出ていこうとすると泣きそうになり、祖父母を見ると両手をバタバタさせて喜ぶ。

7ヶ月
寝返りをうつことができるようになり、抱き上げると膝の上でピョンピョンと跳ね、支えると立ち始め、歯が生え始める。

10ヶ月
名前を呼ぶと手を挙げる。「バイバイ」も「あたまブンブン」もできる。ほめられて成長する。

11ヶ月
ジイジが空振りの拍手をする。孫は不思議な顔をする。何回かの後で、両手をぶつけて音を出す。孫は大笑し、笑いっぱなしになる。

1歳過ぎ
自分の表情をコントロールできるようになり、笑うだけの心から、人を笑わせるまでに進む。

1歳半
言葉が始まり、道具を使い、鏡を理解する。親しい人に序列がつく。母親、父親、保育士、祖母で、ずっと下がってジイジ。
言葉が始まったら、まもなく止まった。子どもの中で何か再編成されているようだ。思っているのに言葉がでなくてイライラして乱暴になる時期があるという。
両親は必死の言葉を教え込む。祖父母の孫教育は遅れをとる。なにしろ「かわいい」が先にたつ。

2歳
2歳を過ぎると簡単な文章を話すようになる。

2歳半
反抗が始まる。人は、反抗することで人格を形成するやっかいな動物なのだ。

3歳
3歳位の子に、「さあ、オモチャを片付けなさい」と言うと、こどもはとてもいやな気持ちになる。子どもにとって遊びは生きていることと同じことだ。
同じ遊びを繰り返すのでなく、新しい、何か複雑な遊びをしたい。役に立つほんとうのことをしたい。これまでの自分を超える行動をしたくなる。

4歳
お化け屋敷、天狗の面、地震など怖いものに負けたままにならず、なんとか克服しようとする。その現場で孫娘の心の動きの詳細を把握した。自分の心の内側を見る目を持つようになったのだ。子どもがくじけてもなんとか巻き返す様子は雄々しく感動的だ。




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