hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

柴田元幸「バレンタイン」を読む

2010年04月13日 | 読書2

柴田元幸著「バレンタイン」2006年6月、新書館発行を読んだ。

版元の新書館のHPにはこうある。

話題の『翻訳教室』の著者として、また、オースター、ミルハウザー、ダイベック、パワーズ、ブラウンそのほか、アメリカ現代小説の紹介者、翻訳者として、さらには講談社エッセイ賞を受賞した名エッセイストとして知られる柴田元幸が、ついに小説家になってしまった! 本人は、エッセイがいつのまにか小説になってしまったなどと言っているけれど、そしてそんな流儀は、内田百間、吉田健一など、例がないわけではないけれど、ふうむ、これは、日本の小説にはちょいと例がないのではないかな、という短篇がぎっしり!


小説はこう始まる。
路地へ入っていくと、小学生の男の子が目の前を歩いているのが見えて、参ったな、と君は思う。参ったな、あれは僕じゃないか、と君は思う。・・・


昔の自分に会って、昔の街を歩く。そんなふうになにげなく過去の世界に入って行くという小説でありながら、エッセイ的な短篇集。

バレンタイン」:生まれた街を歩いていた彼が少年の頃の自分に出くわす。
期限切れ景品点数再生センター」:家を整理したら40年前のグリコの点数が出てきた。
妻を直す」:奥さんがついに壊れ、組み立て直す。
ケンブリッジ・サーカス」:現在の自分が、イギリス留学時代の自分を眺めながら、安食堂に入っていたら変っていた人生を夢想する。
その他、10編。

初出は、「大航海」の2001年から2005年にかけて掲載された8編、その他2編で、初活字化が4編。



私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)

懐かしくて奇妙なくせに、やけに自然にも感じられる何か不思議な味のする小説だ。私は柴田さんのファンだから最後まで読んだが、多くの人は、少年の頃の自分など幻に出逢うという同じような話にあきるかもしれない。

父母や、奥さんについて同じ話が何回か出てくるが、いかにも事実らしく思える。どうも、エッセイの中に空想を持ち込んで小説にしたように見える。そのことで、柴田ファンにとっては興味半分でも楽しめるとは思う。

柴田元幸(しばた もとゆき)は、1954年東京生まれ。東京大学大学院教授、専攻現代アメリカ文学。翻訳者。訳書は、ポール・オースターの主要作品、レベッカ・ブラウン『体の贈り物』など多数。著書に『アメリカン・ナルシス』『それは私です』など。『生半可な学者』は講談社エッセイ賞を受賞。村上春樹さんと翻訳を通してお友達でもある。




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