ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

人も人なれ

2011-07-17 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
蕎麦湯の白濁と、土岐の桔梗と、店内のざわつきで心の混濁して、
また、気持ちが悪くなった。
夫と子を亡くし…私は、なぜ、生きる?私だけ、なぜ、生き残った?
誰も答えてくれない問いが延々続き、自分に尋問した。けれど、自分が黙秘を続けている。
堂々巡りだわ。
最近、頻繁に押し寄せる吐き気を、ゴクッ、
喉元で押さえ込み、飲み込んだ。
すみか「…!」何かを堪える彼女の姿に…「巴さん?」
土岐「散りぬべき時しりてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ」
(訳・散り際を知ってこそ、花であり、人である。それが命というもの…)
巴「ッ…」ガッと勢いよく椅子を引き「行くわッ」堪えきれず、席を立った。
土岐「え!?まだ…」蕎麦湯が残って…いるんですけど。
店を出て行く巴御前の背中を、
すみか「斯波さんと、同じ…」カタッと椅子を引き、いそいそと「巴さん!」を追っていった。
円仁「孤独な背…」と席を立ち「だな」と、土岐に伝票を渡した。
土岐「はい…」と、蕎麦4人前…なけなしの金を、ちゃりんと、はたいた。今月も苦しいな。それでも「御ッ馳走さんッ」と明るく店を出た「ん…?」
気のせいか、巴御前の顔色が蒼く、くすんで見えた。
天気のせいか、と空を見たら、手で遮らねばならないほどの、春の強い日差しだった。
酒田の港町を案内して、巴御前の歩調に合わせて、ゆっくり歩いた。
その背中は、すみかが言うように、斯波さんと重なって見える。
あれ以来…萎えた花のような斯波さんの背を思い出し、ふぅ…と溜息を混じらせた。
その溜息がすみかに届いて、
すみか「花は時が来れば、また、咲きます」ニコッと自信満々の、花のような笑顔を咲かせ、巴御前の許に駆け寄った。
すみかには、聞こえなかっただろうが、
土岐「あぁ」説得力がある笑顔に「そうだな」と頷いた。
すみかが実証している。大丈夫、苦しみや悲しみを乗り越えて、彼女のように笑える…。
それでも、親に売られ、遊郭で働き…、あなたと出会わなければ、どうなっていたんでしょうね、あの笑顔…と、すみかの背中を目で追った。