ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

義隆、その後

2011-07-02 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
木曾御岳の夏祭り…お盆の頃には賑やかな祭りの裏で、一人、三つの笹舟を浮ばせる。恒例行事にしている行事だった。その小舟に両親の魂が乗ってるのか、乗ってないのか、定かではないが、それをぼんやり眺めて、魂を見送る…はずだった。しかし、今年は、違っていた。
義隆「ン?」木陰からひょっこり、ほそっこい体つき、高そうな男性装束…しかも、祭りの面を被った野郎が覗いていて、俺の流した三つの笹舟をお面の奥から眺めていた。
面で自分を隠す、見た目にひ弱そうな野郎が気に食わない。だから「なンか用か?」と凄んで聞いてやった。この凄みを利かせる所は、どうやら斯波さんのが移ってしまったようだ。
一瞬たじろいだそいつは、おず…として、何も答えない。
義隆「チッ」いっぱしお返事もロクに出来ない野郎か、イッチョ、ツラの皮拝んでやる、とお面を引き剥がしたら、一瞬「え…」と、心臓と一緒に、時間が止まった。
ただ、止まったのは俺だけで、
バッ、チーンッ
義隆「テェッ」時間はしっかり流れていた。
多分、左頬を思いっきり、引っぱたかれた。
さらに間髪入れず「何すんのよッ!」と、怒鳴られた。
義隆「…」まさか、お面の下からこんな顔が出てくるとは思っていなかった。
「返してよ!」すらりとした右手が伸びてきた。キッと俺を睨んだ顔は、美しかった。
義隆「…」打たれた左頬には痛みはほとんどなく…というより、感じず。ドキッとした心臓だけが痛かった。「へぇ…」と、まじまじとそのツラを拝んでいたら、
「早くッ」と左袖で「返してよッ!」と顔を半分以上、隠してしまった。
勿体ないな、と彼女の隠れていない部分の顔を、今度は俺が覗いていた。すると、みるみる紅くなってきた。そのツラを可愛いと短い言葉で片付けるか、その表現は不躾なのではないかと考えてしまうような、そんな若く、美しい面だった。
もう少しだけ、その面を拝ませてもらおうと、彼女の左手をグイッと引っぺがし、
義隆「その面、いらネェだろ?」と言ったら、
「アンタみたいなのが、いるからよッ!」と毒付いてきた。
義隆「はぁ…ん」ピンと来た。野郎どもからお声が掛かるんだなって「面隠す奴は嫌いだな」
「放してよッ!このバカッ」いきなり、バカかよ、失礼な奴だ、しかし、その反応が面白く、
義隆「なぁ」ここで手を放したら、この面白いモンがどっかに行っちまいそうだったから「名前は?」と聞いた。