ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

痛みは、本人にしか分からない

2011-08-06 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
継「ツレない奴だな」
池田「源氏と平家がツルんで、どうするんです?」
継「…なぁ。お前さぁ、与一の兄貴たちが平家方だって、知ってたか?」
池田「それは…」不意に、彼の事情を知って…、正直に「知りませんでした」と答えた。
継「アイツ、上の兄貴たちと戦ってた…だから、能ちゃんの気持ち、分かんだよ」
池田「分かる…?」じゃ…なぜ、彼女は自分を拒む…?「分かりませんね」
継「あん?」
池田「その、背中の矢傷…この時期、特に痛むはずです
継「あ…ん」
池田「傷痕は、本人にしか分からない痛みが残る…そうでしょ?」と、風呂から出た。
その拍子に、ピシャ…ン、水滴が顔に冷たく撥ねた。
それを布で拭って、継「確かに…」塞がったはずの傷なのに「痛ぇ…んだな」
春の風が身に沁みて、傷に触るんだと、風のせいにしていたが…違う。
心に沁みて…痛ぇんだ。戦での、見える傷は消せても、見えない傷は消えてはくれない。
アイツらには俺たち源氏には分からない、消えない傷と痛みが残ってる。敗北者が味わう屈辱を、じくじく…、時を重ねるに従い、えぐられ…。
そりゃ、分かってる。分かってはいるが、決して、分かつ事が出来ない痛みで、
ぶくぶく……
湯船に頭を沈めて、しばらく、息を止めて潜った。苦しくなるまで、潜って、能ちゃんの苦しみを実感しようと試みた。だが…、
「ぷはぁ…あ」と顔を出して、あっけなく、苦しみから解放された。簡単に解放される苦しみに「情けねぇ…」と眠る能ちゃんに詫びた。
源氏と平家の間の溝は彼女の心の傷と同じくらい深いんだと、俺を拒んだ池田を見て、分かった。そして、池田の、主君を失った悲しみは、どこまでも、深いんだ…と思った。
浴衣に着替えて、部屋に戻ったら、
志津「なんだ?もっとゆっくり入ってればいいのに…」
池田「いえ、長湯が…苦手なんです」ウソをついた。
志津「そうかい。しばらく、彼女、診てたいから、どっかで休んでな」
池田「はい」こういうウソは、バレない。肝心なウソはすぐバレて、余計なウソや誤魔化しは見過ごされる。本当に隠したモノは…心と共に、明るみに出てしまう。


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