美濃と尾張を繋いだ義父と恩師の死。それに続く、私の流産は年若い我ら、信長一八、私一七には厳しい試練だったが、美濃と尾張の繋がりを一層強くした。
流れたややが、繋がりを強くし、殿を強くした。そう私は感じた。
殿は御変わり遊ばした。まず、知恵者に耳を傾けるようになり、さらに、出来る、使えると感じた者を身分出世に係わらず小姓や旗持ちに採用、また実力に応じ昇格させた。
しかし、それに異を唱える家臣腹心も多かった。
信長「不満か?」
異議申し立てする家臣の首を斬り、不審な言動を繰り返す家臣を徹底的に排除した。
威厳ある殿の御働きに逆らう家臣がいなくなり、殿に従う家臣が増えた…が、ややが流れた代償に殿の心には“猜疑心”が生まれてしまったのだ。
ややが流れたのは、家臣の不手際と疑うようになった。
帰蝶「いいえ。殿、立派な御働きにございます。誰も、不満など申しておりませぬ」
だから、私はなるべく、ややが流れた事…気に留めない様に努めた。
前向きに、世継ぎを考えるように努めた。
信長「…のう?」
帰蝶「は?」
信長「そろそろ、どうかのう?」
帰蝶「そろそろ…?で、ございますか?」
殿は語尾を、のうと伸ばす癖があった。
この言い廻しは、家臣たちに“殿は美濃方様に助言を求めている”と思わせた。
信長の威厳で私の地位も向上し、私を蝮、蝮と陰で罵る家臣はいなくなった。
丁度この頃からか、私は尾張に在って“濃姫”と呼ばれるようになっていた。
尾張に嫁いだ身で美濃を冠する名は珍しい…いや、有り得ない事だった。
政略結婚が功を奏した、そう言っても過言ではなかった。この和睦が、いつまでも続きますよう、私は切に祈った。
だが、突如として平定は破られた。美濃の内乱を告げる、一人の使者が訪れたのだ。
信長「森…?」
帰蝶「森 可成(よしなり)様…」
父と同じく先代美濃 土岐様の腹心で、美濃衆と呼ばれる忍。
その彼が長井の伯父様の使者となって尾張を訪れた。
流れたややが、繋がりを強くし、殿を強くした。そう私は感じた。
殿は御変わり遊ばした。まず、知恵者に耳を傾けるようになり、さらに、出来る、使えると感じた者を身分出世に係わらず小姓や旗持ちに採用、また実力に応じ昇格させた。
しかし、それに異を唱える家臣腹心も多かった。
信長「不満か?」
異議申し立てする家臣の首を斬り、不審な言動を繰り返す家臣を徹底的に排除した。
威厳ある殿の御働きに逆らう家臣がいなくなり、殿に従う家臣が増えた…が、ややが流れた代償に殿の心には“猜疑心”が生まれてしまったのだ。
ややが流れたのは、家臣の不手際と疑うようになった。
帰蝶「いいえ。殿、立派な御働きにございます。誰も、不満など申しておりませぬ」
だから、私はなるべく、ややが流れた事…気に留めない様に努めた。
前向きに、世継ぎを考えるように努めた。
信長「…のう?」
帰蝶「は?」
信長「そろそろ、どうかのう?」
帰蝶「そろそろ…?で、ございますか?」
殿は語尾を、のうと伸ばす癖があった。
この言い廻しは、家臣たちに“殿は美濃方様に助言を求めている”と思わせた。
信長の威厳で私の地位も向上し、私を蝮、蝮と陰で罵る家臣はいなくなった。
丁度この頃からか、私は尾張に在って“濃姫”と呼ばれるようになっていた。
尾張に嫁いだ身で美濃を冠する名は珍しい…いや、有り得ない事だった。
政略結婚が功を奏した、そう言っても過言ではなかった。この和睦が、いつまでも続きますよう、私は切に祈った。
だが、突如として平定は破られた。美濃の内乱を告げる、一人の使者が訪れたのだ。
信長「森…?」
帰蝶「森 可成(よしなり)様…」
父と同じく先代美濃 土岐様の腹心で、美濃衆と呼ばれる忍。
その彼が長井の伯父様の使者となって尾張を訪れた。