ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~塩撒いておくれッ~

2012-08-10 | 散華の如く~天下出世の蝶~
帰蝶「焼香は握るものではないッ。次は、塩を投げなされッ」
彼の腕を引っ掴んで、火傷を治療した。
信長「イ…ツッ、もっと優しくせぬかッ」
帰蝶「ならば、もっと優しい妻を娶るが良いッ」
パシッ
火傷の反対側、手の甲を打って、
「もっと、ご自分を大事にしなされ」
信長「…よく分かったな」
帰蝶「分かりませぬ。殿のお考えなど、家臣たちは伝わっておりませぬッ」
殿は、言葉よりも行動や態度で示す方だった。
深い哀しみを、素直な心で表現する方だった。
ただ、家臣には伝わり難く、
「あのような言われよう、悔しくないのですか?」
うつけ、うつけと…どうしてうつけのフリをするか分かっていない。それが悔しい。
信長「分からんヤツは、生涯気付けぬヤツよ」
帰蝶「同じような事を申しますね」
信長「義父上か…」
帰蝶「はい」
信長は、自分を認めてくれた父を尊敬していた。
その父を、息子は超えたかった。
「父上様と相撲…執りたかったのでございますね?」
三五縄の廻しに、茶せん頭…
どう見ても、
お相撲さん。
信長「…勝ち逃げして逝きおったわ」
父を超せぬまま、勝負はあの世に持越し。
死んだ人間と、どうやって同じ土俵に立てる?と細い目をさらに細くした。
父の死に、涙以外の方法で哀しみの深さを表す、そんなお優しい殿だった。
帰蝶「それだから、逃げられてしまうのですッ」
ドンッ


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