ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~息子の、愛の形~

2013-11-01 | 散華の如く~天下出世の蝶~
その使者は、
帰命丸「はは、母ーッ」
一週間ぶりの我が子だった。
殿の使者は、ひらりひらり、
白旗を振って、駆けて来た。
池田「どうやら、勝負あったようですね」
やれやれ、ようやく人質から解放された…と、
両手を上げて肩を竦め、私から目を逸らした。
帰蝶「ま、丸…」
久しぶりの我が子は少し重く感じた。
その頬は、蒸し上がったお饅頭より、
懐かしく、柔らかく、愛おしかった。
お腹を痛めた子ではない…のに、
こんなに胸が痛いのは、なぜか?
帰命丸「母…まんま、まんま…」
息子の空腹には、勝てなかった。
帰蝶「…お饅頭を、」
出来たて、ホカホカのお饅頭を、
丸の小さな口に合わせて千切り、
「アチチだから…」
急かす丸の手を遮り、
そ…と口に近づけた。
帰命丸「ん、んまぁ」
初めてのお饅頭が美味しかったのであろう、
丸は、私の手の中にある饅頭をひったくり、
あつつのお饅頭を不器用に掴んで千切った。
丸の手の中で形を崩したお饅頭は、
「あぁ~あ…」丸を落胆させたが、
私には形など、どうでも良く…、
帰蝶「あ~ん」口の中に入れば、丸の愛、そのものだった。


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