ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

そう切に祈る

2011-06-16 | 義経絵巻-芭蕉夢の跡-
大地の守り神 春日の神に、神事舞を始める合図を送り、そして、何事もなく神事が執り行われるよう祈る。無事、何事も無きよう、そう切に祈る…。
子供たちの大地踏を見ながら、遠い昔の記憶を思い起こしていた。
フッと見ると…、
池田「…」舞台裏 楽屋の方で、人が出たり、入ったり…慌ただしくなり、
能子「(なんだろ…?)」と席を立った。
池田「(御方様?)」の後ろに付いて、楽屋をこっそり覗いた。
すると、主役 シテの能装束を身にまとった男性 能楽師が足を抱えて、倒れていた。
能子「足、挫(くじ)いているの?」
池田「の、ようですね」と素っ気無く、無関心に答えたら、
能子「…」スル…と紫の頭巾を解き「失礼致します」と、
池田「あ…」と、止める間もなく、楽屋に入って、しまった…。
能子「足、大丈夫ですか?」と能楽師に傍に付き、スッと座って、彼に手を差し伸べた。
そして、後ろに控える池田さんに頭巾を渡し、目で合図した。
池田「はい…」と頷き、頭巾を受け取って足の治療にあたった「…捻挫です」と軟膏を湿布し、そこに置いてあった割り箸を固定に使い、御方様の頭巾を包帯代わりにテーピングした。
能楽師「なんとか…舞台に…」
池田「無理です。二度と舞台には立てなくなります。代役を立てて下さい」
能子「…」
能楽師「代役はいない…。なんとか、舞台に…イッ」と痛そうに、足を抱えた。
ワキを演じる能楽師が、白い髭をいじりながら事の成り行きを、ただ黙って見つめていた。
池田「…」彼女の袖をクイッと引っ張り、小声で「行きますよ」と促したが、
能子「私に、舞わせて下さい」
能楽師「え?」
池田「はぁ…」と、小さく溜息を付いた。
能子「私、舞えます」
能楽師「し、しかし、しきたりで…」と助言を求めるようにワキを見た。
池田「怪我に、しきたりもありません。すぐ祈祷して下さい。それと…演目は入れ替えです」
能楽師「え?いや、しかし、それでも、ワキとイキを合わせて…」
池田「私に、白龍を舞わせて下さい」とワキを演じる初老 能楽師に申し出た。


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