ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~昔の私、今の私の、接点~

2014-01-29 | 散華の如く~天下出世の蝶~
明智「鉛も通じぬ信長様にて、驚きましてございます」
どうやら、大事に至らず。
帰蝶「そう、それは良かった」ほぉ…と、胸を撫で下ろした。
明智「…私、これにて…」
帰蝶「お待ち下さいませ」
さっさと立ち去ろうとする従兄殿を呼び止め、
木箱に仕舞っておいた例の密書を取り出した。
“琵琶の風を、お聞かせ致しましょう”
「この文…最初から、分かっておいでだったのございますか?」
明智「何の事に、ございましょう?」
帰蝶「お市と長政様の事、分かっておいでだったのでしょう?」
明智「信長様がご所望された事を、遂行したまでにございます」
帰蝶「では、あの石山本願寺も、延暦寺も、そうなのですか?」
明智「私に、信長様に背け、と仰せで?」
帰蝶「いえ、ただ…殿があらぬ方向に行かれてしまうのでは…と、不安で」
明智「その時は、私に止めよ、と?」
やはり、微かに笑った。
帰蝶「妻の言う事に耳を傾ける主ではございませぬ、故…」
明智「幼き貴女は、御父上にも、よう意見されておられた」
今度は、はっきり、私に笑ってみせた。
帰蝶「父に意見する娘であれば、殿の許に嫁いではおりませぬ」
明智「如何でしょう?昔のように、狩りに、ご同行されては?」
帰蝶「狩り…そういえば、久しく行っていないわ」
父の猪狩りと殿の鷹狩り、同行した時の昔の記憶が、重なった。
明智「良き狩場がございます。ご案内致しましょう」
帰蝶「御心遣い、有難く存じます」
明智「では…」
礼して、すぅ…と、
静かに、音も無く、
下がってしまった。


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