ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~その娘次第でしょ~

2014-08-01 | 散華の如く~天下出世の蝶~
“どちらも呑めぬ条件”だとして、
代わりに今川討伐を兄に提案した。
「父はあの世で勝ち誇っておったであろう」
帰蝶、ほれ見たことか、
父の目に狂い無し、と。
帰蝶「…て、聞いておるのか?」
古新「えぇ…、聞こえてますよ」
ぼんやり、
貧困で寂れた京の街を、
淋しそうに眺めていた。
がっかり、
京の都とはこんなものか…、
そう言いたげな表情だった。
帰蝶「その娘を逆賊とするか、妻とするかは、夫の、そなた次第である」
古新「もっと、華やかなものだと思っておりました」
帰蝶「都が…、か?」
古新「京も、婚儀も」
帰蝶「ならば、そうすれば良かろう?」
古新「…」
帰蝶「その逆賊の娘を盛大に持て成し、華やかに宴、美しく飾れば良い」
知らぬ土地のしきたり新たな家に嫁ぎ、
肩身の狭い思いをするのは、逆賊の娘。
この裏切りの世で裏切らぬための契り、
政略結婚のために生まれたのではない、
そう言いたけれども、
父の意向に逆らえず。
「嫁ぐ娘子の気持ちも、汲んでやってくれぬか?」
古新「それは、」
廃れた寺をじっと見つめて、こう言った。
「その娘次第でしょ」