ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~私の名前の、由来~

2012-10-29 | 散華の如く~天下出世の蝶~
ペラペラ…ピタ、止めた場所に、大きな黒い翼の、人が立っていた。
沢彦「これが西洋。こちらが東洋…天竺に住まう神の姿にございます」
帰蝶「天竺…印度…」
沢彦「左様。迦陵頻伽と申します」
帰蝶「かりょうびんが…どこで、見た。確か…」
幼い頃の、薄れた記憶を辿ってみた。
父が連れて行ってくれた、賀茂神社。
稚児が二人、
パタパタと、
背に羽を背負って、宮廷舞楽の巫女舞を模していた。
黒い蝶の羽を付けた稚児が、夫婦番となって舞う…、
沢彦「胡蝶(こちょう)…にございます」
黒羽が光彩虹色に光り、世にも稀な美しい声で鳴き、
人々を魅了し、その御魂を癒し、天に誘う迦陵頻伽。
「よう似ておられますな、貴女の、その御名に」
帰蝶「…私」
カタ…椅子を下げ、席を立とうとした。
でも、まぁまぁと、座り直すよう促し、
沢彦「もう一服、差し上げましょう」
話が長なりまする、そう言いたげに、私の茶碗を下げた。
茶碗を洗い、カツン、抹茶を入れて、シャカシャカ…と、
茶筌が、濃い抹茶の緑を湯と攪拌し、優しい色に成った。
私の記憶も攪拌されて、濃く鮮やかに、蘇ってしまった。
…賀茂神社…
父は、胡蝶の舞を見て、私の名について、語った。
“帰蝶、そなたは多くの魂を帰依させるであろう”
「帰依?」
“蝶は、魂の送り火よ”
私が、蝶の名を冠した理由は…、
沢彦「戦乱の世に、相応しい御名を、授かりましたな」