ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~絶対は、断じて無い~

2012-10-11 | 散華の如く~天下出世の蝶~
ズキッ…、痛。突き出た腹が悲鳴を上げた。
“あれが蝮の娘 帰蝶だ”
ややが私の噂を聞いて、嘆いたか。
「そんな噂話に花を咲かせに、わざわざ来た訳ではあるまい」
生駒「はい…」目を細めて、私を見た。
女同士、私的な話を女中らに聞かせるわけにゆくまいと、私も気を配り、
帰蝶「皆、下がれ」と、二人きりに。
しーん、沈黙が続く。
早よ、なんとか申せ。
生駒「あの…姫様が、心配していらっしゃるご様子…」
帰蝶「何の、」しまった。声の調子が、二、三も上がってしまった…「心配もしておらぬ」
昔馴染みだろうが、結婚前の話であろう?
そんな昔の事…、
生駒「しかし、濃姫様も昔の恋仲が現れたら、困りましょう?」
帰蝶「こ…」恋仲?
ちっ。情報不足だった。そこまで、知らぬぞ。
「困るも何も、私に…今も、昔も、恋仲など、おらぬ」
恋も知らぬ間に結婚したわッ。
生駒「姫様は、信長様を、好いてはおられないのですか?」
帰蝶「す…好いて?」ちゃんちゃら可笑しい。ただの政略結婚だ。
義父上様と平手様が、何度も何度も頭を下げて下げて、ようやく、
“うつけに嫁げ”
「父に命じられるまま、嫁いだまで。そなたも、であろう?」
生駒「えぇ、父の申し付けで結婚致しました」
この時代、身分家柄政策で不本意な結婚が当たり前。
殿方を好いて、別れて泣き見るのは、女だ。
“うつけの許に等、絶対に、嫁ぎません”
断固拒絶したが、私の信念“絶対”は簡単に覆り、殿の許に嫁いでしまった。
私の意向など軽くあしらわれ、丸め込まれ、ほいと一人敵地に送り込まれる。
好きだの嫌いだの、そんな感情に溺れている暇も無く、戦は否応なく起きる。