ひつじ草の挑戦状

色んな思いを綴ってます。

散華の如く~空即是色、虚無の中の真実~

2012-10-17 | 散華の如く~天下出世の蝶~
私は妻としての役目を果たしさえすれば、それで良い…と、
帰蝶「と、殿?…あの、」
即刻、この場から下がりたい。殿のお顔を見たくない。
なのに、殿が肩から手を放さず、私をじっと見てくる。
信長「濃…」
帰蝶「な、何にございましょう?」
信長「そなた、いつぞや、こんな事を申しておったな」
“殿と、私…相まみえたら、どちらが勝ちましょう?”
帰蝶「それが、何か?」
信長「それが、そなた正室の理由じゃ」
帰蝶「へ?」
時に、殿のお話は飛躍し過ぎ、言葉が簡略化され、意味不明。
私の理解を遥かに超越して、話の筋が見えず、ちんぷんかん。
信長「そなたは大概、呑み込みが悪いのう」
そう言って、私を抱き寄せた。
帰蝶「濃には…」
不意に、抱き寄せられて、
ポロ…、手から、落ちた。
コロコ…コッ。
「殿のお心が、分かりませぬ…」
抱き寄せる相手が違う。
なぜ、今ここで、私を?
信長「人の心など、言うて知るものではない」
帰蝶「…はい…、左様にございますね」
多くの言葉を以てしても、心は空即是色(虚無という真実)。
語り尽くせぬ思いがある。私は殿の思いを知ろうともせず、
「すみませんでした」一つ、小さく侘びを入れた。
自然、侘びが小さくなったのは、生駒の存在が大きかったからかも知れない。
信長「そなた、呑み込みは悪いが、大概よう働く」
そう言って、殿は私の頭をその胸に押し当て、褒めて下さった。