「言い値」ドル箱防衛費 過去最大5兆2551億円
2017/9/1 中日新聞
防衛省は三十一日、総額五兆二千五百五十一億円となる二〇一八年度予算の概算要求を決定した。過去最大の要求額で、北朝鮮の弾道ミサイル対応などに多額の費用を盛り込んだ。要求通り認められれば、一四年度から五年間の防衛費の総額を定めた中期防衛力整備計画(中期防)の枠を四千億円程度上回る計算になる。
概算要求で、弾道ミサイル防衛の関連費は千七百九十一億円に上る。海上自衛隊のイージス艦に搭載する迎撃ミサイルを改良した「SM3ブロック2A」取得費などに六百五十七億円、弾道ミサイルを地上で迎撃する航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を改良した「PAC3MSE」取得費二百五億円などを盛り込んだ。
SM3を地上配備する新装備「イージス・アショア」は金額を示さない「事項要求」とした。ミサイル防衛以外では、レーダーに探知されにくい最新鋭ステルス戦闘機F35A六機の取得費八百八十一億円などを盛り込んだ。
安倍政権は中期防で、防衛予算を増やし続ける方針を決めている。防衛予算は一二年に第二次政権が発足して以降、概算要求が毎年増えている。一方で中期防には、日本の防衛力整備とは直接関係ない米軍再編関連経費などを除いた額を対象に、五年間で「二十三兆九千七百億円程度の枠内」と記してある。
現中期防の最終年度となる一八年度は、概算要求での中期防対象額が約五兆円。過去四年間(一四~一七年度)の合計は約十九兆三千六百億円に上る。枠に収めるには、一八年度の約五兆円を四千億円程度圧縮する必要がある。財務省の防衛予算担当者は、厳しく査定する考えを示す。
◆米国製高騰し膨張の一因 日本に不利な契約条件
二〇一八年度予算で防衛費の概算要求額が過去最大となり、安倍政権の下で防衛費が肥大化している実態が鮮明になった。防衛費を押し上げる一因となっているのが、米国から購入する武器の高騰。米国に有利な取引条件で値上げを迫られている構図があり、与党の自民党内からも批判が出ている。
◆在庫切れ
今回の概算要求に盛り込まれた米国製武器の中で、購入費の急騰が顕著だったのが無人偵察機グローバルホーク。三機分の購入費が、一六年夏に見積もった約五百十億円から23%増の約六百三十億円に膨らんだ。配備前なのに部品の在庫がなくなり、代替品の再開発費などの追加費用が生じたという。二〇年三月に予定されていた配備開始も二一年七月にずれ込んだ。
防衛装備庁の規則は、費用が予定より15%上回る場合は計画を見直し、25%上回る場合は事業中止を検討するよう義務付けている。防衛省は概算要求前、グローバルホークの導入中止も検討したが、導入後の維持管理費を削減することにして要求に盛り込んだ。
こうした対応に対し、自民党が八月二十九日に開いた会合で、中谷元・元防衛相は「買い方が非常に不透明で不当だ。もう一度しっかり交渉し直すべきだ」と厳しく批判した。
◆製造コスト
北朝鮮の弾道ミサイルに対応するため、日本政府が導入を急ぐ弾道ミサイル防衛関連の武器も同様。イージス艦に搭載する改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」は、ミサイル量産期間と想定する一七~二四年度の購入価格が、一六年夏の見積もりより16%値上がりする見通しになった。
防衛省は、量産段階に入って製造コストが下がる前提で弾の単価を見積もったが、米軍側の導入が遅れたため量産段階に至らず、想定より高い単価で購入することになった。
防衛省の担当者は「最終的な見積もりの段階で、価格が上がっていることはよくある」と認める。
◆足元みられ
米側の都合に振り回される背景として、自衛隊の武器を米政府から調達する際によく適用される「有償軍事援助(FMS)」という購入方式がある。米国の武器輸出管理法に基づき、米政府が定めた条件を購入国が受け入れるよう義務付けた制度だ。
具体的には(1)契約価格や納入期限は見積もりで、米政府は拘束されない(2)代金は前払い(3)米政府は契約を解除する権利がある-など、米国に有利な内容。グローバルホークとSM3ブロック2AもFMSで取得する装備。日本は不利な契約条件の下、米国の「言い値」をのまされている形だ。
FMSでの取得費は、第二次安倍政権以降に急増している。一五、一六年度は四千億円台、一七年度は三千億円台。一八年度の概算要求も約四千八百億円が盛り込まれた。
二十九日の自民党会合では、出席議員が「手付金を払ったから逃げられないだろうと、足元を見られている」と不満を募らせた。
(新開浩)
2017/9/1 中日新聞
防衛省は三十一日、総額五兆二千五百五十一億円となる二〇一八年度予算の概算要求を決定した。過去最大の要求額で、北朝鮮の弾道ミサイル対応などに多額の費用を盛り込んだ。要求通り認められれば、一四年度から五年間の防衛費の総額を定めた中期防衛力整備計画(中期防)の枠を四千億円程度上回る計算になる。
概算要求で、弾道ミサイル防衛の関連費は千七百九十一億円に上る。海上自衛隊のイージス艦に搭載する迎撃ミサイルを改良した「SM3ブロック2A」取得費などに六百五十七億円、弾道ミサイルを地上で迎撃する航空自衛隊の地対空誘導弾パトリオット(PAC3)を改良した「PAC3MSE」取得費二百五億円などを盛り込んだ。
SM3を地上配備する新装備「イージス・アショア」は金額を示さない「事項要求」とした。ミサイル防衛以外では、レーダーに探知されにくい最新鋭ステルス戦闘機F35A六機の取得費八百八十一億円などを盛り込んだ。
安倍政権は中期防で、防衛予算を増やし続ける方針を決めている。防衛予算は一二年に第二次政権が発足して以降、概算要求が毎年増えている。一方で中期防には、日本の防衛力整備とは直接関係ない米軍再編関連経費などを除いた額を対象に、五年間で「二十三兆九千七百億円程度の枠内」と記してある。
現中期防の最終年度となる一八年度は、概算要求での中期防対象額が約五兆円。過去四年間(一四~一七年度)の合計は約十九兆三千六百億円に上る。枠に収めるには、一八年度の約五兆円を四千億円程度圧縮する必要がある。財務省の防衛予算担当者は、厳しく査定する考えを示す。
◆米国製高騰し膨張の一因 日本に不利な契約条件
二〇一八年度予算で防衛費の概算要求額が過去最大となり、安倍政権の下で防衛費が肥大化している実態が鮮明になった。防衛費を押し上げる一因となっているのが、米国から購入する武器の高騰。米国に有利な取引条件で値上げを迫られている構図があり、与党の自民党内からも批判が出ている。
◆在庫切れ
今回の概算要求に盛り込まれた米国製武器の中で、購入費の急騰が顕著だったのが無人偵察機グローバルホーク。三機分の購入費が、一六年夏に見積もった約五百十億円から23%増の約六百三十億円に膨らんだ。配備前なのに部品の在庫がなくなり、代替品の再開発費などの追加費用が生じたという。二〇年三月に予定されていた配備開始も二一年七月にずれ込んだ。
防衛装備庁の規則は、費用が予定より15%上回る場合は計画を見直し、25%上回る場合は事業中止を検討するよう義務付けている。防衛省は概算要求前、グローバルホークの導入中止も検討したが、導入後の維持管理費を削減することにして要求に盛り込んだ。
こうした対応に対し、自民党が八月二十九日に開いた会合で、中谷元・元防衛相は「買い方が非常に不透明で不当だ。もう一度しっかり交渉し直すべきだ」と厳しく批判した。
◆製造コスト
北朝鮮の弾道ミサイルに対応するため、日本政府が導入を急ぐ弾道ミサイル防衛関連の武器も同様。イージス艦に搭載する改良型迎撃ミサイル「SM3ブロック2A」は、ミサイル量産期間と想定する一七~二四年度の購入価格が、一六年夏の見積もりより16%値上がりする見通しになった。
防衛省は、量産段階に入って製造コストが下がる前提で弾の単価を見積もったが、米軍側の導入が遅れたため量産段階に至らず、想定より高い単価で購入することになった。
防衛省の担当者は「最終的な見積もりの段階で、価格が上がっていることはよくある」と認める。
◆足元みられ
米側の都合に振り回される背景として、自衛隊の武器を米政府から調達する際によく適用される「有償軍事援助(FMS)」という購入方式がある。米国の武器輸出管理法に基づき、米政府が定めた条件を購入国が受け入れるよう義務付けた制度だ。
具体的には(1)契約価格や納入期限は見積もりで、米政府は拘束されない(2)代金は前払い(3)米政府は契約を解除する権利がある-など、米国に有利な内容。グローバルホークとSM3ブロック2AもFMSで取得する装備。日本は不利な契約条件の下、米国の「言い値」をのまされている形だ。
FMSでの取得費は、第二次安倍政権以降に急増している。一五、一六年度は四千億円台、一七年度は三千億円台。一八年度の概算要求も約四千八百億円が盛り込まれた。
二十九日の自民党会合では、出席議員が「手付金を払ったから逃げられないだろうと、足元を見られている」と不満を募らせた。
(新開浩)
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