週のはじめに考える 真の民意の在りかとは (2022年9月4日 中日新聞)

2022-09-04 15:46:47 | 桜ヶ丘9条の会

週のはじめに考える 真の民意の在りかとは

2022年9月4日 
 NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」は、神奈川県鎌倉市が舞台です。衆院選の小選挙区では「神奈川4区」。昨年十月末の衆院選を振り返ってみます。
 最多の約六万七千票を得て当選したのは、早稲田夕季氏(立憲民主党)でした。二位は約六万四千票の浅尾慶一郎氏(当時は無所属、現自民党参院議員)で落選。三位が約四万八千票の山本朋広氏(自民党)でした。
 でも、得票率が約23%にすぎない山本氏は比例南関東ブロックで「復活当選」したのです。山本氏は旧統一教会問題の渦中にいますが、小選挙区で二番目の人が落選で、三番目が当選するとは…。マジックを見るようです。
 同じ現象は他にも…。名古屋市中村区などを選挙区とする「愛知5区」では、一位の神田憲次氏(自民)が当選。二位の西川厚志氏(立民)は落選で、三位の岬麻紀氏(日本維新の会)は比例東海ブロックで当選なのです。

多数派への変換装置

 小選挙区比例代表並立制という現行の選挙制度は、こんな奇妙な現象を生みます。次点に泣いても惜敗率により比例代表で復活当選なら、まだ分かります。でも、三番目の人が議員バッジを着けるのですから、有権者は不思議な感じを受けることでしょう。
 現行制度のマジックは、まだあります。得票率と議席数があまりにも乖離(かいり)しているのです。
 上智大学の中野晃一教授(政治学)によれば、小選挙区だけに着目すると、昨年の衆院選では自民党は48%の得票率なのに、65%の議席を得ているそうです。
 「二〇一七年の総選挙では自民党は得票率48%で、74%の議席を得ました。得票上の少数派を議席配分上の圧倒的な多数派に変換するマジック装置が小選挙区制です」と中野教授は指摘します。
 現行制度の歪(ゆが)みが明確に表れているのは間違いありません。
 参院選にも歪みはあります。衆院選と異なるので単純比較はできませんが、中野教授は衆院選の小選挙区に該当する三十二の地方一人区に着目します。人口が少なく高齢化が進み、いずれも自民党が強いところです。
 「一九年の参院選で自民党は得票率51%で、69%の議席。今夏の参院選では得票率51%で、実に88%の議席を得ました。今回は野党共闘で十程度の選挙区しか一本化できなかったことも結果に反映しています」(中野教授)
 得票率とかけ離れた議席数を与えてしまう選挙制度に疑問を持ちませんか? これは公正な選挙といえるでしょうか。中野教授は「選挙が民主主義の理念から遠ざかり、議席獲得のゲームと化しているようです」と語ります。
 議会制民主主義で「数」は確かに力です。法案は過半数で可決です。改憲発議は「三分の二」で、現在は改憲勢力がこのハードルを越えています。しかし、「圧倒的な多数派に変換するマジック装置」の実態を知れば、疑問を覚えることでしょう。これが本当に「民意」の姿なのかと。
 有権者が投じた票に正比例する議席数=これが真の「民意」の在りかなのではありませんか? 
 現行制度による当選者には正統性にも疑問符が付きます。違憲の疑いがある「一票の不平等」の問題があるからです。
 衆院選では選挙区によって二倍超の格差があります。有権者一人で一票の地域もあれば、〇・五票しかない地域もある。不平等な状態です。「憲法違反だ」と選挙のやり直しを求めた訴訟では、九つの高裁・支部が「合憲」、七つが「違憲状態」の判決を出し、最高裁の統一判断を待つ状況です。
 三倍超の格差があった今夏の参院選でも選挙やり直しの訴訟が起きました。衆院選で三倍もの不平等があれば「違憲」判断が出ることでしょう。参院が衆院より大きな不平等が許容されていい憲法上の理由はありません。過去の最高裁判例もそう述べています。
 そもそも国民は正当に選挙された国会の代表者を通じて行動せねばなりません。憲法前文はそう記しています。ならば憲法はできる限り一対一に近い状態で選挙することを求めているはずです。

平等は民主主義の基本

 「鎌倉殿の13人」は将軍や御家人たち為政者のドラマです。でも、現代は国民主権。民主主義の時代です。国民が主役です。
 性差別をせず、金持ちか貧乏人かを問わず、若者か高齢者かを区別せず、平等に扱うのが民主主義の基本です。とくに選挙では…。住む地域で票の価値に差異があっていいはずはありません。
 国政選挙を都道府県や小選挙区単位からブロック制にするなど、一票を限りなく平等にする手法はあります。真の民意を映す制度改革が求められます。
 
 

 


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